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7.無才の男、ボスに挑む。

10階層へ降りるとそこはこれまでの景色とは大きく異なっていた。

3階層からはだんだんと迷路のように入り組んできていたが、9階層までは延々坑道が続いていた。

10階層はそれらとは異なり、下りた階段の先に巨大な扉があるだけだった。

ルシフェルの言った事を思い出す。


【10階ごとにボスを設け、ボスを倒せばレアスキルを得られるようにする。】


つまり、この先はボス部屋だ。

もちろんどのような敵が出てくるかやどんな仕掛けがあるかもわからない。

入ったら最後、ボスを倒すか死ぬかしなければ出られないのかもしれないし、生きてさえいれば何度もチャレンジできるのかもしれない。

ボスだって1匹とも限らない。いきなり複数匹の相手に囲まれてしまうかもしれない。


慎重に行くのであれば、出来るだけの準備をしてから挑戦という事になるが…。


これまでの9階層の魔物の事を思い出す。

オーガ、トロール、ゴブリンジェネラル、コボルトロード、マダーベア、ゴーレム…。

パターンは違えど、どれも力押しの戦い方しかしない奴ら。

戦闘を繰り返すことで得られるものは多くはなさそうだ。


自己鍛錬はどうだろうか。

トレーニング自体は無限にできるが、ここには施設がない。

自重を利用した負荷で筋肉にダメージを与えられなければそれ以上筋力は向上しないだろう。


装備はどうだろう。

今持っている武器は右手にオーガの刀(ゴーレムに切りかかったときに刃こぼれしたのでわざわざ1階層まで取りに戻ったものだ)。

そして腰に乱雑に縛り付けた木刀。

この他に使えそうな武器を持っている敵がいたか…?

…いないな。


考えた末出した結論は【今ボスに挑戦する】だ。

俺は目の前の扉に手をかけ、それをゆっくりと押し開いた。





扉の先は円形のドームのようになっており、入口とは反対側にこれまた大きな扉が見える。

その扉の前に何かが居る。

跪いていたそれはゆっくりと立ち上がる。

筋骨隆々の人の体に牛の頭。

身長は5m程だろうか。

手には両手斧が見える。


ミノタウロスだ…。

魔物ランクはB。

圧倒的な破壊力を有する魔物。


だが、また力押しか…。


俺はミノタウロスから視線は切らずに入ってきた入口を調べる。

引いてみると扉は開き、その奥には階段が見えた。

するりとその扉の間に体を滑り込ませると、難なくボス部屋からの脱出に成功する。


どうやら逃げ出すことはできるようだな。

他のボス部屋が同じとも言い切れないので参考程度ではあるが…。


ボス部屋の使用を確認した後はもう一度ボス部屋へ。

ミノタウロスは最初と同じように出口前で跪いていた。

入口が閉まるとゆっくりと立ち上がる。


「ブォォォォォオオオオ!!!!」


雄たけびを上げると一直線に突っ込んでくる。

俺は正面から相対することを避けてセオリー通り、右へと回る。


俺が間合いに入ったと見たかミノタウロスは両手斧を振りかぶり、振り下ろす。。

それを察知した俺は即座にバックステップで距離を取って斧を躱し、突き出された右手に切りかかる。

狙いは手首内側。

魔物も構造自体は自然動物と同じだ。

人型の魔物であれば作りは人とほぼ同じ。

手首周りは60cmくらいだろうか?これを切り落とすのは難しいが、健なら!!


俺が放った一文字切りは狙い通りミノタウロスの右手首内側を捉える。

緑色の鮮血が舞う。


「ブォォォォォオオオ!?」


右手を引きながら大げさに痛がっている!?

…隙だらけだ。


一撃離脱を考えていたが、ミノタウロスがあまりにも隙だらけなのでもう一歩踏み込んで今度は左手を狙う。

ミノタウロスの左手側から攻撃しているため角度が悪く、手首の内側は狙えない。

ならばとひじの内側を狙って逆一文字に切りつける。


それだけでミノタウロスは武器である斧から手を放してしまう。


「おいおい、こんなのがBランクかよ。っと!!」


俺めがけて振り下ろされた右腕を右へステップして躱し、そのままミノタウロスの左側面から左足ひざ裏を切りつける。

本当は首を狙いたいが届かないからな。

なら下から崩していけばいい。


執拗な関節への斬撃を繰り返す。

ミノタウロスは膝をつき動けなくなる。

こうなると背後を取りながら切りつけ続けるだけだ。

ミノタウロスも腕を大きく振り回すことで反撃しようとするが背後の広い範囲を薙ぎ払うことはできない。

俺は少しの動作でそれを躱しながら延々とミノタウロスを切り続ける。


しばらくすると、ミノタウロスは地面へと倒れた。

その瞳からは光が消えていた。


『10階層ボス、ミノタウロスの討伐を確認。討伐報酬としてスキル「瞬間筋力強化」を付与します。』


頭の中に直接響くような声が聞こえてきたのはその時だった。

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