68.踏破者、研究所に入る。
アルカディア魔道具研究所は商業区の西側に建てられていた。
外から見ると鉄だろうか?金属壁で覆われた四角い建物が複数寄り集まったように見える。
その周囲はブロック塀と有刺鉄線の返しで囲われており、いっそ犯罪者収容所という趣だ。
俺とシファはそのブロック塀に唯一付けられている出入り用の門の前に来ていた。
門脇の守衛詰め所にいる人に声をかける。
「すみません。こちらからの依頼を請け負いましたハンターの者です。魔物素材の納品に来ました。」
「ああ、いつもご苦労様です。依頼書を確認させてください。」
「これです。」
そう言って俺は依頼書を守衛に渡す。
他の依頼も同様に処理しているのだろう、守衛さんはいつものことと言った風に淡々と事務処理をしている。
「はい確かに。今本棟に連絡を入れましたので少々お待ちください。」
守衛さんはそう言って依頼書を返してくる。
少し待つと敷地内に白衣の女性が現れる。
黒髪のボブに丸メガネ、どこか緩い雰囲気は研究者のそれではないように見える。
女性が門に着くのと同時に門が開かれる。
タイミングを見て守衛さんが操作したようだ。
「お待たせしました~。客室までご案内しますのでこちらへどうぞ~。」
雰囲気だけでなく口調も緩かった。
言われるまま彼女に付いていき、建物の一つに入る。
建物に入る際には物理的な鍵と魔道錠の二重の開錠を行っていた。
魔道錠は登録した使用者の魔力を通すことで鍵を開けることが出来る仕組みの魔道具だ。
鍵を持ち歩く必要がない上に登録者以外では解除が不可能という高い信頼性を持つ鍵だが、すさまじく高価で、高位貴族の宝物庫なんかでしか見る機会のないものである。
もしかすると、ここの施設は全ての棟で同様の鍵を採用しているのかもしれない。
このセキュリティ意識の高さ、流石は研究所だ。
「こちらでお待ちいただけますでしょうか。担当の者を呼んでまいります。」
客室まで案内してくれた女性はそう言うと部屋から出て行った。
「これは、一人では客室までも来れないな…。」
外から見た建屋は武骨な印象だったが、中は完全な迷宮になっていた。
必要以上に曲がりくねり、道が分かれており、さらに小刻みに上下する階段がいくつもあるせいで何階にいるかも分からない。
健常者しか勤められない職場環境だ。
だが、もちろんシファが居れば話は別だ。
シファの【探索】は地形条件も確認できる。
彼女にはこの建物も丸裸にできているはずだ。
ただし、そんなことは勿論ここで確認したりしない。
どこで盗聴されるか分かったものじゃないからね。
また少し待つと、客室のドアをノックする音がが聞こえ、続いて開かれた。
「お待たせしました。ようこそアルカディア魔道具研究所へ。」
部屋に入ってきたのは細身で長身の白衣の男だった。
白衣は真っ白だが、対照的に表情が伺えないほどの黒髪の長髪が不気味さを醸し出す男だった。
「はじめましての方ですね。僕はこの研究所で副所長をしているジルオールと言います。以後お見知りおきを。」
容姿とは裏腹に流暢ではっきりとした言葉使いだ。
先入観もあるかもしれないが何もかもアンバランスな男だ。
その上副所長ときたか。
というかこんな依頼の対応を副所長の肩書を持つ人間がするのが普通なのか?
とりあえずは名乗られたら名乗り返すのが礼儀だろう。
「私はBランクハンターのジークです。こちらは仲間のシファ。」
「ほう、この依頼をBランクの方が受けていただけていたのですか。Cランク相当として依頼していたので満足いく報酬をお渡しできるかどうか…。」
「いえ、お気になさらず。実は我々、先日王都入りしたところで、周囲の魔物の下見も兼ねてという事で少しランクを落とした依頼を受けていたというだけなので。」
「そう言う事でしたか。Bランクともなるとそのあたり堅実ですな。」
「命あっての、ですからね。依頼品はここにお出ししても?」
「はい、お願いします。」
そう言うとジルオールは客室のテーブルの上に布を広げる。
ここの上に出せという事だろう。
俺は抱えていた布袋から依頼の品を取り出す。
【魔妖精】の舌が2枚
【鬼】の牙・爪、が2組
【鉄鋼百足】の表皮が1組
【毒性蜘蛛】の牙が2組
「これは…凄いですね。一度に全種類取ってこられるとは。うん、物の間違いもないですね。」
何やら驚かれてしまったようだ。
何に驚かれているのか分からなかったのだが、その空気が伝わったのだろう。
ジルオールは丁寧に説明を始めてくれた。
「普通のCランクハンターの方だとこのクラスの魔物はある程度準備をして狩りに行くそうで、納品は1種類ないしは2種類という事が多いんですよ。すべての魔物に対応できるように準備するとなると荷物が多くなりすぎるんだとか。」
「なるほど、そう言う事でしたか。」
まぁ聞けば納得だ。
俺はマヒしてしまっているが、普通の感覚なら【毒性蜘蛛】を狩りに行く時は毒の治療薬が必要だし、硬い表皮を持つ【鉄鋼百足】なんかと戦う時は鈍器のような武器も必要になるだろう。
「…Cランク魔物を苦にしないレベルのハンターの方々ですか…。【直接契約】に興味はありませんか?」
そう言うジルオールの口元は歪んでいるように見えた。
作者は蜘蛛も百足も苦手なので、これらの細かい描写はできそうにありません…。
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