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62.護衛隊長、回想する(2)

しかし報告を受けて彼らが泊まっている宿に行った時は驚いた。

我々を襲った襲撃者と食事していたのだから。


襲撃者で唯一顔を晒した彼は、おそらく死ぬつもりだったはずだ。

襲撃失敗の結果、自身が主犯であると宣言し殺される。

それで辺境伯家への追及を防ぐことが出来る。


正直そのくらいのことはあの場にいる誰もが理解していることだ。

そしてジーク殿はおそらく、彼らを殺すためでなく救うために後を追ったと見ていた。


執事長の方もかなりの手練れだ。

もう後は最悪自害でも任務を完了できる執事長を救うことが出来るかどうかは正直分からなかったが、どうやらジーク殿は彼らを救う事に成功したようだ。


「失礼します。少しお話宜しいでしょうか。」


意を決して声をかけた。

執事長ですら少し驚いた表情をしていたが、ジーク殿は予定調和と言った様子だ。

恐らくは私から声をかけなくとも王女殿下側に接触するつもりだったのだろう。


その後の成り行きを話し合い、おおむね想像通りのやり取りがあったことを確認する。

シルバ殿の奴隷印を解除するために腕を切断したというのには驚いたが…。

その案を受け入れたシルバ殿の胆力にも脱帽だ。


シルバ殿から謝罪も受けたが、主から命を受けた兵士がその結果に責任を感じるのは違うだろう。

死んだ仲間の事を思うと思う所がないわけではないが、彼らも王女殿下を守るためにその命を散らしたのだ。

彼らは本分を全うした。そこに残されたものが私怨を挟むべきではない。


そしていよいよ王女殿下の所へ案内しようとした時、もう一つの大事なミッションがあったことに気付いた。

この話の流れの中でこの話出すのか?

空気読めないやつとか絶対思われるぞ!?

しかしあらかじめ話しておかなければこの後余計な混乱が…!?


諦めよう。

ここで空気を読まずにこんなな話題を振るのが私に課せられた業だったのだ。

前世の私、もうちょっと徳を積んでおいてくれ!!


「あ、もう一つ事前にお話ししておかねばならないことがあるのでした…。」



やっぱり話した後は何とも言えない空気が流れていた。


そしてその後の謁見でも混沌とした状況となってしまった。

王女殿下は聡い反面、夢中になったものに見境が無くなるという悪癖がある。

それが悪い方に出てしまったというわけだ。

まぁそれも魅力の一つと言え…る?


とにかく、ジーク殿とは対辺境伯の協力体制を取ることに合意できた。

それだけでも今回の接見は好結果に終わったと言っていいだろう。


と思っていたら、翌日には辺境伯の義息とその証言記録を入手したと言って再びジーク殿達が現れた。

どうも王女殿下を狙って凶行に走った義息から情報を引き出して捕縛したとのこと。

いくら何でも結果を出すのが早すぎる。


「アレンの独断で、たった一人で襲撃してきたということですか?」


私のこの質問にはジーク殿は答えず、ただ笑っただけだった。

背筋が凍るような感覚を持ったのは私だけではないだろう。

恐らく複数人で乗り込んできたのをアレン以外は…。

そう思わせる圧を感じていた。


彼の行動理念は正しき方向へ向ているように見えるが、決して聖人君子ではない。

人を害することに抵抗を持っていないし、禁じ手など平気で使うだろう。

どうやったらこんなアンバランスな人格が形成されるのか…。


ともかく彼が持ち込んできた証拠は、一定の証拠能力を有するものだった。

王女殿下も、これならとすぐに【伝送器】で王都へ連絡を取り、フレンブリード辺境伯捕縛の指示を出した。

追加で証拠を得るように念押しも忘れずに。


確たる証拠があれば他の王子、王女も手を出しては来ないだろう。

辺境伯の未来はこの瞬間決まったと言ってもいい。




数日後、フレンブリード辺境伯を捕縛したとの報を受けて再びジーク殿達と接見していた。

今回はフレンブリード辺境伯失脚の報告と、いよいよ彼らを陣営に引き込む話をする予定だ。

事前に王女殿下含めいくつか案を考えているのだが、どうなるか…。


と思っていたらやはり王族専属騎士(ロイヤルナイト)は断られてしまった。

王女殿下は彼らにどうしても配下の騎士になってもらいたいと思っていたようなので残念だろう。

だが、彼らがそう言ったものに興味がないだろうことも分かっていた話だ。

なので次善の案も考えてある。


そしてこの話は王女側から【指名依頼】を出すという形でしばらく行動を共にすることで決着した。

我々としては猶予期間を貰えたというだけ良かったという感じだ。

この間に次の手を考えなければ。




コウナードの街への道中は大きな問題は起こらなかった。

シファ殿の【探索(サーチ)】は非常に広範囲をカバーできるので魔物の強襲を受ける事すらない。

どこからどんな魔物がどれだけの数現れるか分かっているのであればそれはただの訓練だ。

逆にこの感覚に慣れないようにしなければならないと騎士たちの中で確認し合ったくらいだ。


コウナードの街でオスガルド伯爵、伯爵夫人と会い、漸く王女殿下に本当の笑顔が出た。

彼らは王女殿下のよき理解者だ。

そしてお互いの近況報告などを済ませるうちに、この地にも王子の手が伸びてきていることが判明する。

幸い伯爵はその誘いを断っていただいたようだが、そのせいでこの町が危険な状況に置かれているかもしれないとの事。

王女殿下の性格であればそれは自分の責任と思われたのかもしれない。

自身の護衛で雇っているジーク殿達を調査に加わるよう話を持って行ったのだ。


この時点では私はまだジーク殿達の力を見誤っていた。

そしてこの後次々と彼らの常識外っぷりを見せつけられることになる。

ランドールさんは空気が読めないわけではなく、空気が読めていても仕方なく…の発言だったわけですね。

これはより辛い!!

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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