61.護衛隊長、回想する(1)
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side ランドール
私はティア王女の護衛隊長を務めている。
だが、王族の護衛隊長としては異例の平民出身だ。
貴族出身の騎士で頭角を現していた者は大体が他の王子、王女の所へ所属を決めてしまうため、ティア王女殿下が自身の傍に置けるのはうだつの上がらない貴族騎士か、少し腕の立つ平民騎士かの選択肢しかなかったことは承知している。
私は【剣術】の才能持ちであったことが評価され騎士団に採用されてはいたが、貴族上位主義の中、昇進することなく齢25となったその時も下位騎士として日々の業務にあたっていた。
そんなある日、模擬戦訓練をしている私の姿を見たティア王女殿下が声をかけて来て下さったのだ。
「私の専属騎士になっていただけませんか?」
騎士団での生活の中で貴族上位主義に飲まれていた私には青天の霹靂だった。
「宜しいのでしょうか?私は平民出身の下位騎士です。」
思わずそう答えてしまったのも、自身の出自に負い目があったからだろう。
その質問に彼女ははっきりと答えたのだ。
「私は出自に拘りません。あなたの先ほどの仕合は見事でした。能力のある人間を適所に置くことに何の問題があるでしょうか。」
王族の中でもティア王女殿下がそう言った思想を持っているといううわさは聞いていた。
初めてその話を聞いた時は、この人が王戦に勝利すれば昇進も叶うのかな位にしか思っていなかったが、今、その王女が私に自分の騎士になれと言ってきてる。
私はその申し出を受けた。
その思想を目の当たりにし、自身が仕えるべき君主を選んだのだ。
ティア王女殿下の元には私と志を共にする騎士たちが居た。
平民がほとんどではあるが、一部貴族もいる。
他の王子、王女に比べれば人数はかなり少ない。
だが、全てティア王女殿下が自身でスカウトしてきた人材という事で、人間性に問題はない。
皆で研鑽を積み、王女殿下の王戦を戦い抜く事を誓い合った。
だが、その道はやはり険しいものであった。
王都では「変わり者の姫の護衛」として白い目を向けられ、貴族とつながりの深い武器屋には武器の購入を断られる始末。
今回のように各諸侯に王戦の協力を仰ぎに出れば連戦連敗。
それでも前を向き続け、弱音を吐かないティア王女殿下を前に暗い顔など見せられない。
たとえ負け続けだろうと地道に続けていかなければならないのだ。
だが、そんな旅路の途中に転機が訪れる。
とはいっても悪い方だが。
フレンブリード領の視察を終え、オスガルド領へ入ろうかというタイミングだった。
オスガルド伯爵はティア王女の数少ない理解者の一人だ。
久々に気を休められる。という油断もあったかもしれない。
突如現れた襲撃者に後れを取ってしまった。
最初は野盗かと思った。
これまで王都を離れる旅路で野盗や魔物の襲撃は何度か経験しているが、今回は違った。
この襲撃者たちは訓練された者たちで、的確に連携しながら襲い掛かってきた。
一人、また一人護衛騎士が倒れていく中、全滅の文字が頭をよぎり、ティア王女殿下だけでも逃がすための方法を考えはじめていた。
そんな時彼らが現れた。
男性の方は目にもとまらぬ速さで襲撃者を切り伏せ、女性の方は広範囲・高火力の魔法で幾人もの襲撃者を焼き払った。
その後彼らは逃走した襲撃者を追って森へと入っていった。
我々もすぐにでもオスガルド領へ入るべきだったのだろうが、ティア王女殿下含む全員の意向で亡くなった騎士たちを葬ってから出発した。
彼らが来なければ全滅していた。
誰も口にはしなかったが、皆自分の実力が足りていないことを悔いていた。
ライラックの町に着くとティア王女殿下から皆に話があった。
先の襲撃で助けに入ってきた2人を陣営に引き入れるというのだ。
男性の方はおおよその素性が分かっていた。
フレンブリード辺境伯の息子という事だった。
辺境伯の実の息子は戦死し、養子を取ったという話を聞いたことがある。
養子の方は辺境伯家で会っているので覚えている。
なので実の息子の方で間違いないだろう。
フレンブリード辺境伯が襲撃者を送ってくるような後ろ暗いことをするような人物であれば、彼も抹殺に近い仕打ちを受けたのだろう。
だが女性の方は素性不明だ。
普通なら素性の知れない者を護衛に引き入れるなんてこと誰かが反対しただろう。
しかし、誰からも反論は出なかった。
皆自分たちの実力不足を感じており、かつ目の前で見せられた彼らの強さが焼き付いているのだ。
そして窮地にある自分たちを助けてくれたことから、敵対的な人物ではないことも分かっている。
この先王戦は激しさを増す。
今の戦力だけでは戦い抜けないことも分かっている。
確かに彼らが加わればその点大きく前進する。
「では、ランドール。彼らがこの町に来た迎えに行ってください。衛兵に入町者の報告を上げてもらうようにしましょう。」
「承知しました。」
「それと…、これは言うのが少し恥ずかしいのですが…。」
珍しくティア王女殿下が言い淀んでいる。
その顔も少し赤いように見える。
「魔術師の彼の事が気になって仕方ないのです。出来れば結婚を前提にお付き合いを申し込みたいと思っていまして…。」
「「「え?…えええぇぇぇぇぇえええ!?」」」
その場はこれまでとは全く違う内容で混乱状態に陥っていた。
かくいう私も戸惑いを隠せない。
彼女…彼女でしたよね?いや、何言ってるんだ私!!
「それでランドール。彼を前にして自制できる自信がありませんので、彼にはあらかじめ私の想いを伝えてほしいのです。」
荷が重い!!
ランドールさん、実は苦労人なんです。
だからいい人とも言えますね。
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