表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/218

6.無才の男、勝利する。

一本道の坑道で巨体のオーガと相対する。


前回やられたトラウマもある。

心は荒れ、正常な状態とは程遠い精神状態で戦うことになる。


…と思っていた。


「…やっぱり擦り切れてるのかな。怖くない。」


木刀を正眼に構えたまま一歩、また一歩と前へ進む。

今回のオーガは不用意に近づいてくることはしなかった。

こちらを見つけたところから動かずにいる。

違う個体で性格が違うのか、それともこちらが警戒してもらえるくらいになっているのか…。


「…っ!!」


オーガの間合いに片足を踏み出した瞬間、奴はそれまでの静止からは信じられない速度で刀を大きく振りかぶる。


キン


また金属音。

そこから凄い速さで振り下ろされる刀。

…だが今回は見える!!


「ふっ!!」


何度もイメージした通りのオーガの動き。

こちらも何度もイメージした動きをそれに重ねる。


一歩右へ。

半身で刀を躱す。

避けると同時に振り上げていた木刀を。

全力でオーガの手首めがけて振り下ろす!!


「ゴァ!?」


カラン


手首へのダメージで刀を落としてしまったオーガに追撃する。

逆一文字切りに首を。

返す刀で胴を薙ぐ。

無手となったオーガの攻撃も見える。

奴の殴打に木刀の斬撃を合わせてダメージを蓄積させていく。


切る。

また切る。

また切る。

徐々にオーガの動きが悪く、手数も減ってくる。

構わず切る。

また切る。


何度も斬撃を浴びたオーガは漸く倒れ、動かなくなった。

全身に青あざを浮かべているその姿は痛々しく、思わず目をそらしたくなる。


()がやったんだけどな。


初めてのオーガの討伐。

あぁ、楽しかったなぁ(・・・・・・・)

一撃もらえば死ぬという緊張感。

自分の思うとおりに体を動かせることに対する高揚感。


…もっと戦いたい。

そう感じてしまったのはやっぱり危ない精神状態なのかな。


「っと、戦利品は回収しておかないとな。」


オーガの落とした刀を拾う。

その刀身は先端20cm程が折れてしまっていた。

折れた刀の先端は倒れ伏すオーガの後ろに落ちている。


「あの金属音か。…こんな狭いとこでデカいオーガが満足に刀を振れるわけないよな。」


つまり、オーガの初撃、刀を振りかぶった時点で天井と接触した刀は折れてしまっていたのだ。

そしてそのお陰で、最初の邂逅時は腕だけの切断で済んでいたんだな。とも思い当たる。

…本当に運が良かったようだ。


「一回戻ってもいいが…このまま進むか。」


今回の戦闘で俺はダメージを受けていない。

俺は左手に木刀、右手に折れた刀を持ったまま坑道を進む。



◇◇◇◇◇



「この階段を下りれば次のフロアに行けるのか。」


ほぼほぼ1階層の攻略を終えた俺の目の前には下へと続く石作りの階段がある。

階段の前に立つ俺は全身血まみれ。

ほとんどは乾いて服や皮膚にこびり付いているが、全てオーガの返り血である。

一本道が続く1階層の行動フロアは、結局刀を持ったオーガしか出てこなかった。

武器を刀に持ち替えたことでオーガとの戦闘は非常に楽になっている。

途中で折れていない刀も手に入った。

だが、10匹を超えたあたりから、具体的には作業感が出てきてからは物足りないという気持ちも芽生えてきている。


俺は躊躇うことなく階段を下りていく。


階段を下りた先はもう見慣れた坑道がまた続いていた。

だが2階層ともなればまた別の脅威があるはず。

俺はまだ見ぬ敵を追い求め一歩を踏み出した。




2階層の敵は棍棒を持った【魔妖精(トロール)】だった。


魔物ランクはオーガと同じCランク。

動きは重鈍だが、オーガより重い一撃を放つ通称【盾職(タンク)殺し】だ。


だが、俺からすればオーガより組みしやすい相手だ。

間合いぎりぎりで構えて攻撃を誘い、空振りを誘って手首を切り飛ばす。

もう後はただ動きが遅いだけの魔物だ。

蹴りが放てそうな体格には見えなかったが、それも警戒しながら遠巻きに斬撃を浴びせる。

首を半分ほど切り飛ばすとトロールは多量の血を吐いて前のめりに倒れた。


「…大したことないな。」


倒れたトロールに目もくれず、さっさっと3階層に進むとを決めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この調子だと武器も強いやつになっていくのでしょうか? いやでもそのまま木刀のままで強くなってもかっこいいし……どっちに転んでも楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ