51.踏破者、半妖の少女を鍛える(1)
朝、支度をして朝食を食べに行くとそこでは既にシルバたち3人が食事をとっていた。
俺は特に何も考えずにその席に近づいていく。
「おはよう。」
「「「おはようございます。」」」
宿のおかみさんに朝食を頼んで席に着くと、正面に座るメルと目が合う。
何というか、すごく意地悪い目をしている。
「旦那様、昨夜はお楽しみでしたか?」
口につけていた水を吹き出しかける。
表面上は平静を保てているはずだ。
「何もないぞ。」
「そうですか?抜け駆けが~とか聞こえてきましたけど?」
「盗み聞きしてんじゃねぇ。シルバからも何か言ってやってくれ。」
話を振るもシルバは申し訳なさそうに言う。
「彼女らの好奇心を抑えるのは私には不可能ですね…。」
よし、次の宿から最低1部屋は離すようにしよう。
いや、6人になったし、2人部屋を3部屋頼んで俺とシルバ、メルとリル、シファとレベッカの割り振りにすればいい。
うん、名案だ。
そんなことをしているうちに俺の前に朝食が運ばれてくる。
そしてシファとレベッカも支度を済ませて朝食を取りに来た。
「全員揃ったな。今後のスケジュールだが、明日ここを発つ。シルバたちは出立の準備と買い出しを頼む。レベッカの分の衣類も忘れずに。」
「承知しました。」
「レベッカちゃん、後で採寸させてね~。」
「シファとレベッカは俺と一緒にギルドへ行って、今日一日で処理できそうな簡単な依頼を受ける。レベッカに戦闘のイロハを教え込むぞ。」
「わかった。」「はい。頑張ります。」
その後つつがなく食事を終え、レベッカの採寸が終わった後でギルドへと移動した。
もう朝一というわけではないので人もまばらになっているようだ。
依頼掲示板に残っている依頼も割のいいものはないだろう。
だが、俺達には関係ない。
「簡単な依頼…こんなのでいいか。」
俺は掲示板から依頼書を一枚剥ぎ取る。
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【南の草原地帯の魔物の間引き】
依頼内容:コウナード南の平原に出没している低級魔物の討伐
依頼主:ハンターギルド
依頼達成条件:【小鬼】【原生生物】の討伐(上限なし)
報酬:各魔物10匹討伐につき3,000ギラ
備考:稀に【毒性原生生物】が出現するため回復薬の携帯を推奨。
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依頼書を受付へ持っていく。
今日の受付嬢はライラさんだった。
「ジークさんこんにちは。依頼受付ですか?」
「ええ、これをお願いします。」
「確認いたします。…? かなり低ランクの依頼ですがよろしいですか?」
「ええ、今日はレベッカの実戦訓練も兼ねていますので。」
ライラさんは俺の背後に視線を動かす。
「成程。受付しますので少々お待ちください。」
どうやら受付してくれるようだ。
この辺り事情を知っているライラさんが受付で良かった。
「はい、受付終了です。お気をつけて。」
「ありがとう。」
依頼書とタグを受け取り、シファとレベッカの所へ行く。
そして皆でギルドを後にした。
◇◇◇◇◇
「よし、この辺りでいいだろう。」
依頼のあった平原に来た俺たちは適当な丘の上で足を止める。
遠目にゴブリンたちが居るのも見える。
非情に見晴らしのいい場所だった。
「ここなら私の【探索】も必要なさそうだな。」
「いや、そうでもない。【蠕虫】なんかは地面下から来るからな。外で油断できるところはないぞ。」
「む。理解した。」
「さて、レベッカだが、さっそく戦えるように鍛えて行こう。」
「はい!!」
「まず君の才能だが、【弓術】と【召喚術】の二重適正だ。」
【才能】についてはシファ曰く神が与えた【呪い】らしい。
だが、その【呪い】も全員に均一に与えられたものではないことは【才能なし】の俺が証明している。
そして彼女もまたその例外の一つの形だろう。
人族の間では15歳になると鑑定が出来るという通説があるが、その実、生まれた時から才能は与えられており、シファの【解析】なら15歳未満でもそれを調べることが出来る。
レベッカについては呪いの治療の際に【解析】を使用しており、有する【才能】も分かっていたというわけだ。
「二重適正ですか…?」
「そう。そしてまず【召喚術】の才を活かしていくぞ。まずは【単眼翼幻獣】を召喚し協力を得ることを優先する。」
【召喚術】と言うのは異界から【幻獣】を召喚し、戦わせたり、戦闘や生活をサポートさせる魔法の一種である。
ただし、召喚獣の協力を得るには【召喚】に成功し、【契約】を交わす必要がある。
【単眼翼幻獣】は目に口と羽が生えた見た目は少しグロテスクな幻獣だ。
その瞳を使った幻術を得意としているが、召喚獣の中では弱い部類に入り、あまり人気はない。
だが、その能力の一つに『契約者に【遠視】の能力を与える』というものがある。
視力のないレベッカの目になる能力というわけだ。
召喚術は呼び出したい幻獣ごとに異なる魔法陣を描き、その魔法陣に魔力を通すことで発現する。
【召喚】に成功するかどうかは術者の魔力量と質によるらしい。
「【単眼翼幻獣】の召喚魔法陣はこれだ。」
そう言って俺はレベッカに一枚の紙を渡す。
昨日ギルドの書物庫で調べた魔法陣を指で触って分かるように、陣が描かれている部分を盛り上がらせたものだ。
「さあ、早速やってみよう。」
シファさんの魔法は万能です。
本人曰く、武器の扱いも達人級らしいですよ。
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