44.踏破者、Sランク魔物と戦う。
「人数はわかるか?あと魔物の種類。」
シファの言葉を聞いて最初に反応したのはエリオだった。
「人は2人ね。魔物の方は…【牛魔】が4体。少し離れたところに【単眼悪魔】も1体いる。」
「2人か…。」
「『赤い斧』か?そうだとしたら、4人パーティだったからはぐれたか死んだかか…。どうする?」
ロウがエリオに確認する。
エリオは少し悩んだがすぐに結論を出した。
「見殺しにもできんな。助けに行こう。」
そして俺たちは人の反応のあった位置へと向かって移動を始めた。
「見えた!!」
そこではやはり『赤い斧』の2人が【牛魔】と戦闘していた。
1人は片手斧を両手に1本づつ持った戦士、もう1人は身の丈ほどの巨盾と短剣を備えた盾職の男だった。
「シファ!!彼らを守れ!!俺は【牛魔】をやる!!」
「ジーク!!俺と『神狼組』で1匹ずつ受け持つ!!2匹頼む!!」
「わかった!!」
「【神の盾】」
シファの発動した魔法により『赤い斧』の2人と【牛魔】が分断される。
そして俺たちは【牛魔】へと躍りかかる。
【牛魔】は牛の頭を持った魔物で、空を飛ぶことはできないが強靭な肉体を持ち、両手斧による強力な攻撃や頭部に生えた角を使った突進などが要注意の魔物だ。
魔物ランクとしてはBランクに分類される。
つまりは俺の敵ではないという事だ。
1匹を剛力含みの一閃で武器ごと真っ二つに切り裂くと、もう一匹は突進を片手で受け止めてから首を刎ねる。
すぐに他の2匹の状況を確認するが、特に問題はなさそうだ。
エリオは高速で【牛魔】の周囲を移動しながら斬撃を叩きこんでいる。
【瞬歩】を最大限活用した戦い方だ。
魔物のソロ討伐は自身のランク-1が適正と言われているから、Aランクのエリオなら単騎でこのまま問題ないだろう。
『神狼組』はパーティでの戦闘の為より安定しているように見える。
狼人のロウが剣士の才能、狐人のネイが盗賊の才能、猫人のアランが炎魔術師の才能持ち。
ロウは防御寄りの立ち回りで敵のヘイトを稼ぎ、ネイが敵の隙をついてダメージを蓄積させていく。
そして止めは後方からの高威力の魔法。
【牛魔】は間もなく全滅した。
エリオが『赤い斧』に話しかける。
「動けるか?他の2人はどうした?」
「ああ…。2人は死んだ。そうだ!!すぐにここを離れなければ!!あいつが来る!!」
窮地を脱した安堵から脱力していた『赤い斧』のリーダーだったが、仲間の最後の話から何かを思い出したらしく、激しく動揺しだす。
「落ち着け!!何があったんだ!!」
「【単眼悪魔】の変異種だ!!あいつが来る!!」
「グゥゥゥゥウウウウウ。」
詳しい話を『赤い斧』から聞き出す前に、周囲に唸り声が響く。
シファは魔物に囲まれている人がいて、その近くに【単眼悪魔】も居ると言っていた。
おそらくそいつが変異種なのだろう。
「ああ…あいつだ…。」
俺たちの目の前に現れた【単眼悪魔】は通常種の褐色の肌とは違い、黒紫色をしていた。
「変異種…。」
俺は再び過去読んだ文献の知識を引っ張り出す。
曰く変異種とは突然変異的に生まれる魔物の事で、見た目の変化だけでなく特殊な能力を持つものが多いとのこと。
有名どころでは【小鬼】の変異種には硬い鱗と鋭い爪を持ったものが居るらしい。
そして、変異種はもれなく通常種の1ランク上の魔物ランクになるそうだ。
つまり、【単眼悪魔】の変異種のランクはSという事だ。
さて、こいつはどんな特性を持っているのかな。
まずは通常種との違いを見せてもらおうか!!
俺は【単眼悪魔】へと向けて駆けだす。
「【空断】」
そして奴が俺の攻撃の範囲内に入るとすぐに攻撃を放つ。
【単眼悪魔】は何の抵抗もなく真っ二つになり倒れてしまった。
あれ?
「おおぉぉぉぉぉおおお!!」
後ろから歓声が聞こえる。
あれ?
「変異種まで瞬殺かよ!?お前本当何者だよ!?」
振り向くとエリオが喜色満面と言った表情でこちらへと駆けて来ている。
あれ?
手ごたえが全くないんだが…。
その後落ち着きを取り戻した『赤い斧』からエリオが何があったかを聞き出していた。
どうもダンジョン近くまでは行くことが出来たらしい。
だが、上手くいったのはそこまでで、ちょうどそのタイミングでダンジョンから出てきた【単眼悪魔】の変異種とかち合ってしまったとの事。
【単眼悪魔】の変異種は黒色の雷魔法を使用したらしく、弓使いと魔術師の後衛の二人が真っ先に殺されてしまったこと、そして勝ち目がないと残り2人で逃げ出したことを語っていた。
だが、俺はそれをぼんやりと聞きながら別の事を考えていた。
Sランクの魔物でも全く相手にならない…。
以前シファに聞いたが本当に俺の相手になるような魔物はいないのか…。
「つまらなさそうね。」
そんな俺に横からシファが声をかけてくる。
「…ああ、敵が弱くてな。」
「それは…、やはり主殿と満足に戦えるのは神族とかになってしまうな。」
「はぁ。まぁゆっくりやるけど、本気でやりたくなったら神様サマ狩りとかどんな背神者だよ…。」
「私の目的はそれなんだがな…。」
そうだった。
シファは神様なるものを倒すことを目的にしていると言っていた。
エリオたちがこの後のプランを再検討している間、俺はどうやったら神族と戦えるかという事を考えていた。
Sランクと言っても普通の人間が付けたランクですから…。
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