43.踏破者、ダンジョンを目指す。
俺とシファを先頭にした調査隊は再度ダンジョンへと向かって歩を進める。
「右側から2体、左から1体、どれも【単眼悪魔】ね。」
シファが後ろから【探索】に引っ掛かった魔物の存在を教えてくれる。
「シファ、左の1体を頼む。」
「分かった。」
少し進むとシファの【探索】結果通り3体の【単眼悪魔】が出現する。
事前打ち合わせ通り俺とシファはそれぞれのターゲットに向かう。
「【空断】」
俺がシュラを振り下ろすと【単眼悪魔】の1体が正中線から真っ二つに切り裂かれる。
もう一匹も同じようにして真っ二つにする。
「【祓魔】」
シファが魔法を行使すると、【単眼悪魔】の体から瘴気が抜けていく。
そしてその瞳から光が消えると同時に巨体が倒れる。
「すげぇ…。」
「あの【単眼悪魔】があっという間に…。」
後方からエリオと『神狼組』のメンバーから感嘆の声が聞こえてくる。
そんな大した相手ではないと思うのだがな。
【空断】は俺のオリジナルの技だ。
技とは言っても使っているのは重力魔法の【圧】なのだが。
【圧】は作用範囲と作用効果が反比例する魔法だ。
広範囲に使用すると大きな圧力をかけられないが、範囲を極小とすることで大きな圧力をかけることが出来るようになる。
【空断】は線状の効果範囲上に極めて高い圧力を加えたものだ。
遠目には斬撃でも飛ばして【単眼悪魔】を切り裂いたように見えるだろうが、実際には局所的に大きな圧力をかけられた部位が押しつぶされて裂けているだけである。
本当は刀を振るう必要はないのだが、そうしないと線状の効果範囲を設定できないのだ。
おそらく、刀を振ると線のイメージがしやすくなるという事なのだろうが、こればかりはどれだけ訓練を積んでも予備動作無しでは発動できなかった。
シファの使用した【祓魔】は悪魔特効の魔法だ。
【単眼悪魔】はれっきとした悪魔であるため、魔法が抵抗されなければ即死させることが出来る。
シファは【聖属性魔術師】という設定だが、この才能のスキルには他にも死霊特効の【除霊】もある。
事前情報では今向かっている上級ダンジョン【奈落】は死霊系、悪魔系の魔物が多く出るらしいので、設定を守ったまま戦えるうちは守ろうという話をしている。
「これだけ【単眼悪魔】が出てくるとはな…。」
エリオが難しい顔をして考え込んでいる。
「どうかしたか?」
「いや、【奈落】は死霊、悪魔系の多いダンジョンだ。最下層が何階かは不明だが、確か20階層を越えたあたりで【単眼悪魔】の目撃情報もあった。…今この辺りにそういった魔物が多く見られるのはいよいよ溢れ出しの可能性が高いと思ってな。」
「確かに。流石にAランクは【単眼悪魔】しかいないが、それ以外の魔物も死霊や悪魔が多くなってきたな。」
『神狼組』のリーダー、ロウが同意する。
確かに【単眼悪魔】と接敵して以降、【悪霊】や【死霊】、【下級悪魔】、【牛魔】などが出てきている。
特に苦戦することもないので気にしていなかったが、確かにダンジョンに近づくにつれ傾向が変わってきているように感じる。
「確認をしておこう。仮にダンジョンの溢れ出しが発生していたとして、被害の拡大を防ぐ方法は大3つ。止めるか、制御するか、閉じ込めるかだ。」
エリオの確認にロウたちは頷く。
「止める方法は1つ。ダンジョンの核の除去だ。核が遺物か魔物かは分からないが、遺物ならば持ち出すか破壊するか。魔物なら倒すしかない。」
俺は聞きながら昔読んだ書物の知識を引っ張り出す。
ダンジョンの核というのはダンジョンを発生させた要因となるものだ。
はっきりとは分かっていないが、ダンジョンとは局所的に異常な量の魔素(魔力の元となる物質)が集まることで形成されると考えられている。
神話時代の遺物や突然変異で生まれた強力な魔物が一定以上に魔素を取り込むことでダンジョンが形成されるというわけだ。
「制御する方法も1つ。魔物が多くなり過ぎないようにダンジョン内の魔物の数を減らすことだ。」
これは基本的なダンジョン管理方法の事だな。
そもそも魔物についての事になるが、魔物と言うのは大気中の魔素が集まって生まれるものである。
かつての魔王が使用した魔物を創る魔法の効果がずっと続いているとも言われている。
対人用の兵器という目的からか、魔物が人を見ると見境なく襲ってくるのもこの名残というわけだ。
そしてダンジョンの溢れ出しという現象についてだが、ダンジョン内に発生した魔物が多くなりすぎ、ダンジョン外に出てくる現象である。
これを防ぐために各貴族はダンジョン内の魔物を定期的に間引きし、溢れ出しが発生しないようにしているのだ。
「そして最後の閉じ込める方法についてだが、これは周囲環境なんかに依るところもあって方法は多くある。」
閉じ込めについては文献にはなかったな。
結界みたいなもので覆うのだろうか?
「ダンジョンに到着したら、一旦中に入り状況の確認を行う。核の除去が可能なら除去を、ダメそうなら閉じ込めを行い、態勢を整える時間を稼ぐ。」
「異論はないが、その閉じ込めってのはどうやるんだ?」
俺の疑問に対し、エリオは懐からこぶし大の水晶を取り出す。
「結界水晶。これを使う。この水晶を割るとそこを中心に結界を張ることが出来る。使用した者が認めるもの以外入ることも出ることも出来ない結界だ。この大きさの水晶ならちょっとした小屋位の大きさの結界が張れる。効果は1日ほどだが、ギルドにストックはあるし継続してかけ続ければある程度の期間閉じ込めはできるだろう。」
なるほど、確か水晶は魔法を蓄える性質があると聞く。それを破壊することで中に蓄えられていた魔法が発動するというわけだ。
「よし、それでいこう。」
全員の方針が統一された。
その時だった。
「人の反応がある。魔物に囲まれてる。」
シファの【探索】に反応があった。
因みに重力魔法は水平方向に力を加えることもできる設定にしています。
そのうちこの設定が活きることもあるか?
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