42.踏破者、単眼悪魔を討伐する。
「倒せる…のか?」
俺の言葉に困惑しながらエリオが問いかけてくる。
「倒せるな。」
「ど、どうやって?」
「どうやってって…普通に?」
「それを…2人で出来るというのか?」
「ん?俺一人でいいだろう。」
エリオは呆然としている。
【神狼組】をはじめとした他のハンターたちも困惑しているようだ。
「まぁ見てな。」
俺はそう言うとサイクロプスが来るであろう方へと歩いていく。
皆から少し離れた所へ来たタイミングで【単眼悪魔】が現れる。
【単眼悪魔】は俺をターゲットにすると、右腕を大きく振りかぶる。
そして、そのまますさまじい勢いで腕を振り下ろす。
だが、その一撃は俺に届かない。
「【無重力】」
俺の使った魔法により【単眼悪魔】が浮き上がる。
振り下ろした腕は俺の眼前を通過する。
そして踏ん張りの利かない空中で【単眼悪魔】の体がぐるんと回転する。
【無重力】は直接攻撃しか使えない奴には凶悪な威力を発揮する。
なにせ移動する手段がなければ脱出することも出来ないのだ。
そしてちょうど【単眼悪魔】の頭が下まで来たタイミングで攻撃を開始する。
剛力を使用し切りかかる。
まず目を。
次に耳を。
そして首を。
次々に舞う鮮血。
痛みに叫び暴れる【単眼悪魔】。
出鱈目に腕を振り回すも、目も耳も潰された状態でそんなものが当たるわけもない。
やがて【単眼悪魔】は静かになった。
【無重力】を解除すると、宙に浮いていた巨体が地に落ち地面が揺れる。
俺はシュラに付いた血をふき取り、鞘に納める。
「「「うおおぉぉぉぉおおおおお!!!」」」
後方から雄たけびが聞こえてくる。
おそらくは死をも覚悟したであろう状況が一変したのだ。
「ジーク!!お前【単眼悪魔】を単独で討伐しちまうなんてすげぇぞ!!」
「あの奴を浮かせたのは魔法か?なんて魔法なんだ?っていうかお前剣士じゃなかったのかよ!!」
ハンターたちは俺を囲い、喜びを爆発させている。
だが、その傍でエリオだけが難しい顔をしている。
「エリオ?」
その様子に気付いたハンターの一人がエリオに声をかける。
エリオは意を決したように俺に問いかけてきた。
「ジーク、余力があるか?」
その一言でその後の言葉を察した俺はゆっくりと頷く。
「【単眼悪魔】位なら複数体の対処も可能だろう。」
流石にその答えは予想外だったのか、エリオは苦笑いする。
「…規格外だな。今回はそれに救われたわけだが。」
そこでエリオは全員に聞こえるように少し声を張る。
「聞いてくれ、俺たちは再度ダンジョンへ向かおうと思う。」
エリオの言葉を予想していたものは神妙に頷き、そうでないものは驚いていた。
「ちょっと待ってくれ、撤退するべきだろ。Aランク魔物が出てくるような場所、もっとしっかり準備しないと死んでしまう。」
「本来ならそうだが、今回は異常事態だ。時間を置くとさらに状況が悪化する可能性がある。幸い俺達にはジークが居るから対処ができる。今状況を確認し、可能なら異常の原因の排除をしてしまいたい。」
これにはさすがのハンターたちも黙り込んでしまう。
エリオの言っていることは【単眼悪魔】を倒したとはいえ、いつ力尽きるか分からない、素性のよくわかっていないハンターを当てに死地に飛び込むということだ。
【単眼悪魔】以上の魔物が出てくる可能性もあるし、俺がそのすべてに対処できる確証も持てないだろう。
やがて一人のハンターが声をあげる。
【神狼組】のリーダーで、狼人のロウだった。
「俺はエリオに賛成だ。だが、大人数では【名無し】の負担も大きいだろう。エリオに俺達、【名無し】の2人で調査続行を提案する。どのみちギルドへの報告も必要だろう?」
エリオも同じことを考えていたようで、表情を変えることなくロウの言葉に頷く。
「皆、それでいいか?」
少し静寂の時間が流れる。
反対意見は挙がらなかった。
「よし、俺と【神狼組】、【名無し】で調査を続行する。ギルド報告組は【銀星】を中心に隊列を組み直して帰還だ。」
ハンターたちは2チームに分かれてそれぞれ行動を開始する。
「ジーク、無理をする必要はない。これ以上は無理と判断したら言ってくれ。退避する。」
「分かった。一応、こっちのシファも俺と同じくらいには戦える。」
それを聞いたエリオは驚く。
シファをまじまじと見る。
「てっきりサポーターだと思ってたよ。それは心強い。」
「【赤い斧】はどうする?」
ロウがエリオに問いかける。
エリオは少し考えた後結論を伝える。
「調査に協力的なら共闘する。そうでなければ邪魔なだけだ。処分する。」
「表向き共闘の意を示して裏切ってくるかもしれんし、取得物のちょろまかしもするかもしれんぞ?」
「裏切りの警戒は必要だな。それは対魔物にリソースを割かない分、俺と【神狼組】で警戒しよう。取得物については帰還後チェックをかけよう。」
「わかった。それでいい。」
【神狼組】も納得の上で方針が決まったようだ。
「よし、行こう。」
そして俺たちは再度ダンジョン目指して調査を開始したのだった。
これはわざと派手にならない方法で倒していますね。
ええ、間違いありません。
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