40.踏破者、Aランクハンターと対峙する。
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それでは続きをどうぞ!!
エリオに連れられてハンターギルド裏の訓練施設へと来た。
エリオはその施設の中でも最大の設備の中へと入る。
そこは球形の結界で覆われた闘技場だった。
「ここは防御結界で覆われてるから好きに暴れていい場所だ。俺は使わんが、魔法を使うのであれば好きに使っていいぞ。」
「剣のみでいいぞ?その方が差がわかりやすいだろ。」
あえて言わないが、この闘技場の結界のレベルは大したことない。
普通に魔法を使ったら破壊できるレベルだ。こんなところで魔法なんて使おうものなら周りに被害が出てしまうわ。
「けっ、自分のほうが上だと疑わねぇその態度が気に食わねぇな。」
エリオが額に青筋を立てて剣を構える。
「エリオさん!!だめですよ!!木剣でやってください!!」
闘技場の外から木剣を持ってきたのは受付のお姉さんだ。
先ほどのやり取りから名前はライラさんで間違いないだろう。
「ちっ、仕方ねぇ。」
エリオと俺は武器を木剣に持ち替える。
ライラさんはすぐに闘技場から出ていき、それを見送ったエリオが再度剣を構える。
「…構えろよ。格の違いを見せてやるぜ。」
俺は無言で木剣を構える。
「行くぞ!!」
瞬間。エリオが不自然な速度で急接近してきた。
身体能力向上の強化魔法レベルのものではない。
だが、俺からすれば慌てるほどのものでもない。
エリオが接近しながら振り抜く木剣の軌道上に自身の木剣を置く。
その瞬間木剣同士がぶつかり合う武骨な音が会場に響く。
「ほぉ、言うだけはあるじゃないか!!俺の初撃を受けるとは!!」
「…やはり大したことないな。」
気分が高揚してきていたエリオとは違い、落胆を隠せない俺。
つばぜり合いの状態から【剛腕】を使用してエリオを弾き飛ばす。
「がっ!?」
それだけでエリオは防御結界の壁に叩きつけられてしまう。
だが、戦闘不能にはなっていないようで、ふらつきながらも立ち上がる。
「今のは【瞬歩】だな。いいスキルを使うようだが、いかんせん練度が低い。」
「あ゛!?」
瞬歩は俺も持っていたスキルだ。
【アビス】の50階層ボス、キメラを討伐した報酬だったかな?
その後練度を上げ、進化したスキルが【縮地】だ。
俺は【縮地】を使用し、一瞬でエリオの眼前に移動すると剣を持っていない側の左腕でエリオを殴りつける。
今度は【剛力】を使用していないが、それでもエリオは数メートル吹き飛ぶ。
「弱い。弱すぎる。【瞬歩】が使えるのにそれを極めようともしない。【縮地】には反応もできない。」
Aランクハンターってこの程度なのだろうか。
どうも戦闘が不得手で、別分野でAランクになったという雰囲気でもなさそうだが…。
(おい、あの【瞬身のエリオ】を瞬殺かよ。)
(あいつが一瞬で移動したのは魔法か?)
(転移魔法ってことか?宮廷魔術師が陣と詠唱の補助を受けて使うような魔法だぞ?)
(鎧を着たエリオを吹き飛ばす膂力もやばくないか?)
(【地竜】討伐ってのもガセじゃなさそうだな…。)
いつの間にか闘技場の周りにはギャラリーが溢れていた。
大半はさっきの騒動の時にギルド内に居たハンターだろう。
漏れ聞こえてくる声を聴くに、エリオは本当に実力のあるハンターとして認識されているようだ。
「…治療に入りますね?」
俺に殴り飛ばされたまま起き上がらないエリオを見てライラさんが闘技場内に入ってくる。
その後ろには別の職員の姿も見える。
彼女らはエリオの周りにしゃがみ込み、状態の確認を行う。
「気絶しているだけで命に別状はないようですね。このまま医務室へ運んでください。」
ライラさんの指示に従い、ギルド職員がエリオを闘技場から連れ出す。
その姿を見届けたライラさんがこちらへと歩いてきて頭を下げる。
「ご迷惑をおかけしました。彼は責任感の強い人ですので、自身の指揮する今回の件に参加する資質を見極めたかったのだと思います。やり方や言動は褒められたものではありませんが…。」
「気にしてはいないよ。」
これは半分嘘だ。
Aランクハンターと聞いたときに、若干ではあるが強者と交われると期待した自分もいた。
結局は最初の接見時の強くなさそうという感覚のほうが正しかったのだが…。
「彼に対して悪感情を持たれたとは思いますが…、出来れば明日の調査隊に参加の件は考えていただけないでしょうか。正直、我々も危険度の高い依頼に対しできるだけの陣容を手配したいのです。被害を最小限に抑えるために…。」
「(ギルド職員である)お姉さんの頼みなら喜んで参加しますよ。」
「え?」
俺の返事になぜか驚くお姉さん。
「(ギルドとは)良い関係を築いておきたいですからね。」
「(私との)良い関係ですか…?」
「そうです。(ギルド職員である)あなたとです。また明日朝来ますよ。」
そう言って俺は闘技場を出る。
闘技場周りにいたハンターたちが俺を避けるようにして移動したため人垣の道ができる。
その終点にはシファが面白くなさそうな顔をして立っていた。
「どうかしたのか?」
「なぜ主殿は私の野望の前に、ナチュラルに障害物を置くのだ。」
「???」
困惑する俺の後方、闘技場の上でライラさんが顔を赤くして俯いていたことには気が付かなかった。
お、ライラさん重要度アップ?
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