31.踏破者、義弟と対峙する。
ライラックとスリアドを結ぶ街道、ライラックから出てちょうど町を覆う防壁が見えなくなるくらいの所に俺たちは陣取った。
と言ってもここに居るのは俺とシュラ、そしてシファだけ。
間もなくここを通過するであろうアレン・フレンブリードを止めることが目的なので、戦闘要員だけの配置だ。
「来たぞ。街道沿いに真っすぐ来るな。もう少ししたら姿も見えるだろう。」
どうやらシファの【探索】にアレンたちが引っ掛かったようだ。
「しかし40人だかの兵を率いていったいどうするつもりなんだ?まさか堂々と街中に入って迎賓館に攻め入るつもりじゃないだろうな?」
『アセットだったか?が言うには相当な単細胞という事ではないか。そのまさかじゃろう。』
「ここはフレンブリード領でもないんだぞ?普通ならこの町を出て次の巡視目的地に行くまでの間を狙うだろ。」
『しかし隠密行動する気もないようじゃしのう…。』
「いくら考えても馬鹿の考えることはわからんよ。それにもうすぐここに来るんだ。直接聞けばいいだろう?ほら、見えてきたぞ。」
そう言ってシファが街道の先を指さす。
そこにはまだ遠目ではあるが騎馬兵の一群が見えた。
「よし、じゃあ手筈通りに。万が一危険を感じるような事があれば各々全力で対処してOKだ。」
そう言うと俺は街道の中央に仁王立ちする。
シファは【天翔】で近くの木の上に身を隠すと、そのまま気配を消した。
そのままアレンたちが到着するのを待つ。
途中で俺の存在に気付いたか、騎馬兵の一群は徐々に速度を落としながら近づき、俺の前方20mほどで停止した。
止まる様子がなければシファに土魔法で足場を歪めてもらって強制的に止めるつもりだったが杞憂に終わったようだ。
「…どこかで見たような男だと思ったが、お前まさか、ジークか?あのダンジョンからどうやって出てきた?」
騎馬兵たちの先頭にいるアレンが俺に話しかける。
「さぁな。せっかく出てきたのに馬鹿の相手をさせられて機嫌が悪いんだ。さっさと家に帰れ。」
「ああ゛!?」
「王女誘拐を企んでいるんだろ?バレバレなんだよ。せめて辺境伯くらいに周到に準備しろよ。王女一行を襲わせたのはあいつなんだろ?あれはしっかり準備されてたぞ?」
「ハッ。親父はそれで失敗してるじゃねぇか。力に物を言わせないからそうなるんだよ。だが俺は違う!!【魔法剣】の才を持った俺は武力と権力を手に入れた!!都合の悪いことはもみ消し、邪魔な奴は消せばいい!!」
「気になっていたんだが、王女一行はライラック滞在中だぞ?まさか街中に押し入って襲うつもりか?ここはお前の言う権力の及ばぬ土地だぞ?」
「そんなもんどうとでもなる。国家反逆を企んでいる逆賊を処分したとその町の統治者に言わせりゃいいんだ。簡単だろ?」
「辺境伯はそれが困難だから自領で襲撃を行ったんだろうが。」
「フン。あの腰抜けと俺を一緒にするな。親父は情報流出を恐れて自分の信頼のおける人物にしか計画を伝えていない。挙句、ろくに戦闘も出来ない執事長に奴隷印まで刻んで無理矢理出兵させたんだぜ?結果は失敗だ。」
何がおかしいのかアレンは豪快に笑う。
俺も思いのほか情報を得られてしまってかみ殺したような笑いが漏れてしまった。
その様子を見たアレンが一転、訝しげな目で俺を見てくる。
「何がおかしい?」
「いや、本当にお前は馬鹿だなと思ってな。」
俺はそう言いながら懐からある魔道具を取り出す。
「それは…。」
「ああ、【録音】の魔道具だ。」
そう言いながら俺はその魔道具を操作する。
『…準備しろよ。王女一行を襲わせたのはあいつなんだろ?あれはしっかり準備されてたぞ?ハッ。親父はそれで失敗してるじゃねぇか。力に物を言わせないからそうなるんだよ。だが俺は違う!!【魔法剣】の才を持った俺は武力と権力を手に入れた!!』
俺は魔道具の再生を止める。
「これは辺境伯が襲撃の首謀者である証拠の一つになるだろう。なんたって息子の証言だからな。」
「…チッ。お前ら、こいつを殺すぞ。【無才】の屑が出しゃばったことを後悔させてやる!!」
もういいだろう。
俺は魔道具を懐にしまうとシュラを抜き、宙に放った。
「シュラ、いいぞ。」
『相分かった。』
シュラは空中で刀剣化を解くと三顔六腕の本来の姿へと戻る。
見上げるような巨体、一本一本が人の背丈ほどもある刀をそれぞれの腕で振るうダンジョンボスだ。
「なっ!?」
「化け物っ!?」
案の定シュラの姿を見た奴らに驚愕が走る。
「シュラ、手筈通りに。アレンは俺がやる。他は全員殺していい。シファが結界を張っているから逃げられる心配もない。ストレス発散してこい。」
「御意に!!」
そう言うとシュラは大きく跳躍する。
アレンの頭の上を飛び越え、後ろにいる有象無象の中に降り立つ。
同時に振るわれる六腕による斬撃。
「ぎゃああああああ!?」
「ぐぁ!!」
その一瞬で10人弱が無残に切り飛ばされ、宙を舞う。
何人かは即死しただろう。
「ひぃぃぃいい!!」
「に、逃げろ!!」
「馬鹿!!全員で立ち向かうんだ!!」
恐慌状態に陥った奴らは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
何人かはシュラに立ち向かうべく武器を構えるが、端から順に切り飛ばされている。
辺りにアレン以外いなくなると、シュラは逃げた者を追って森の中に入っていく。
俺は馬からも落ちて腰を抜かしているアレンに話しかける。
「お前の相手は俺だ。その腐った性根、叩き直してやる。」
さあビシバシ調教してもらいましょう!!
もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!




