218.踏破者、今後について考える。
2022.7.3改稿になります。
本文変更はありません。
あとがきに今後の方針書き加えています。
「メタトロンは神さまからの任務を受けて人界へと来ていたらしい。」
この辺りの情報はシファの【強制自白】なんかを使用して聞いたものではないので真実でない可能性もある。
まぁキツ目に体に聞いたのである程度は信じても良いかもしれない。
こういう時相手が神族だと壊れにくくていいよね。
「任務の内容は堕天使となり神に弓を引いた者の抹殺。対象は2人。ルシフェル…シファと、もう一人がベルゼブブという堕天使だ。」
「ベルゼブブ…。」
「ああ、話を聞くにシファより先に人界に墜ちた元天使らしい。シファ、知ってるか?」
俺はシファに問う。
シファは首を縦に振る。
「一応名前だけは。自己顕示欲の強い天使で、主神越えを果たそうとして返り討ちにされて墜ちたと聞いているわ。」
「メタトロンとしてはシファには天界へ戻ってきてほしかったらしい。墜ちた理由も人界への干渉の是非という思想の違いによるものだったから完全に相容れないものでもないと思っていたようだ。」
これにはシファが難しい顔をする。
まぁ【アビス】という冥級ダンジョンなんて舞台を用意してまで神を打倒できる人材を探していたくらいだ。
もうとっくに相容れない状態だったとは思うが…。
もしかしたらメタトロン自身の願望も含まれていたのかもな。
「で、もう一人のベルゼブブについてだが、こっちは自身が頂点であると証明するために人界に墜ちてからも天界へ攻め入るためにいろいろと画策しているらしい。」
「天界へ攻め入るために?」
「ああ、もう一度神さまに挑戦して打倒するのが目的なんだろうな。具体的に何をしているかまでは良く分からなかったが…。」
っていうかメタトロン。
あいつ俺たちにしてもベルゼブブって奴に対してもあんまり情報持ってなかったんだよな。
以前シファに聞いた話だと天界の親族たちは人界の様子を見ることが出来ると言っていたが、そこまで人界に興味を持っている奴が居ないのかもしれない。
「メタトロンから聞き出せた情報はそのくらいで、天界へ侵入する方法なんかは聞けなかった。なので次のアクションとしてはベルゼブブを探そうと思う。」
「…でもメタトロンからは情報は得られなかったのですわよね?何か当てがあるのですか?」
「当て…と言えるほどのものではないかもしれんが、少し前にある裏組織の事を知ってな。なんでも『この世界は神なるものに支配されており、人類は飼われているだけである。真の自由は神を討ってこそ為される。』という思想を掲げているらしい。」
この情報にティアが苦い顔をする。
「何となく、シファお姉さまの想いに近いものがありますわね。」
俺も最初はそう思ったんだよな。
「だがその実情は異なる。その組織の活動は主に『神に対抗できるものを生み出す』ことを目的にしているんだが、人体実験や人を生贄にする儀式召喚など、人命をごみとしか思っていないような行為を繰り返しているんだ。組織の名目は人族の為と言うような言い方をしているがな。」
「なるほど。それが自身が天界へ攻め入るための駒を欲しているベルゼブブが操作している組織だと考えるとつじつまが合うという訳ですわね。」
俺は頷く。
「組織の名前は『討神』。人族にとって不利益な行為を繰り返しているこの組織を潰し、そのトップがベルゼブブなる堕天使であった場合には天界への侵入方法などの情報を聞き出したうえで消滅させる。」
俺は隣のシファを見る。
「異論はないわ。私はあなたに付いて行くだけ。」
シファの意志を確認してティアに向き合う。
「という訳で大まかな行動方針は決まってるんだが、まだ動けるだけの具体的な情報が無いんだ。レベッカたちの事もあるし一旦モールドには戻るが、近々離れることになる可能性はあるな。」
「ええ、ジーク殿が人類の為に動いている以上異論はありませんわ。私の方でも『討神』については調べてみます。王も協力してくれるでしょう。」
「助かる。」
「構いませんわ。では準備しますのでまた連絡入れますね。」
そう言ってティアは踵を返して屋敷を出て行こうとする。
紅茶の1杯でも飲んでいけばいいのにと思って見ていると、ティアは不意に立ち止まり振り返ってきた。
「…聞こうか迷うところですが、メタトロンと戦って満足しましたか?」
その問いに俺は苦笑いを返す。
「…全然だな。防御と回復が得意って、よくよく考えたらこっちのリスクが極端に低いんだよな。防御を固めて耐えるだけの相手を魔力が枯渇するまで一方的に攻撃し続けただけだから…まぁ作業だよな。」
俺はため息をつく。
シファと同じ熾天使という事で過剰に期待し過ぎたというのもあるだろう。
次は攻撃型の相手を期待しよう。
「…そうですか。それは残念でしたわね。」
ティアはそれだけ言うと今度こそ屋敷を後にした。
「…神さま自身がこっちに来てくれりゃ楽なんだけどな…。」
俺は空を見上げてぽつりとつぶやく。
何となく天界って空の上とかにありそうなイメージなんだけど、実際どうなんだろう。
まだ神様へ到達する目途はたっていない。
だが、やるべきことは多くある。
思えば才能に恵まれず、消去法的にハンターとして生きて行こうとしていたんだったな。
【アビス】に捨てられたことでその人生設計は大きく狂ったが、そのおかげで今があると思えば…。
…いや、やっぱあれはないわ。
自分の子を処理しようとした父親の顔が浮かぶ。
しっかりと自分のやったことについては責任を取ってもらわないとな。
俺はやるべきことリストに逃亡中の父と義弟の捕縛を加える。
やる事が多いというのは悪くない。
そう思いながら残りの紅茶を楽しむのであった。
最終話になりました。
ご愛読、ありがとうございました。
仕事が落ち着けば、また続きを書きたいと思います。
そうでないと、最終話で漸く出てきたベルゼブブさんが可哀そうで…。ね。
2022.7.3追記
一ヵ月業務過多で執筆を離れていただけで、吃驚するくらい話を忘れてしまいました……
とりあえずは新作書き始めていますのでそちらに力を入れようかと思います。
今作は少し話が進むペースを落として、より内容を詳細にと思って書いています。
よろしければ一度ご覧ください。
↓
能力を認められなかった補助魔術師、Aランクパーティを追放されて新人冒険者の育成を始めました。
https://ncode.syosetu.com/n0430hs/




