214.第二王女、状況説明に窮する。
「ここでは手狭だな。場所を変えるぞ、着いてこい。」
メタトロンの体からまばゆい光が上方へと放たれる。
気が付けばこの地下1階から空が見えた。
…何かしらかの攻撃魔法なのだろうが、規格外だ。
メタトロンはそのまま大きく空いた穴から外へと飛び立つ。
「望むところだ。」
そしてジーク殿はその後を追って行ってしまった。
…あれ?私は?
思わず周りを見渡す。
そこにはジーク殿に付いて行きたいけどメタトロンに会いたくないから行かないでおこうか悩んでいると言った雰囲気のシファお姉さまと、私と同様に置いてけぼりにされて困惑しているお父様とその王族専属騎士の2人が居た。
それにしても悩み顔のシファお姉さまも可愛らしいですわ…。
「ティアよ。彼は…その、行ってしまったが…。」
お父様に話しかけられて我に返る。
「ええ、彼は少々困ったことに戦い大好き人間なので…。まぁこの中で一番の脅威を連れ出してくれているという事ですので、私たちはこのままラズールお兄さまの所へ向かうべきでしょうね。」
「相手は神族の中でも高位の者らしいが、彼は大丈夫なのか?何というか…悲壮感みたいなものは全く見られなかったが。」
お父様の言っていることも分かる。
常識では計れない人なのだ。
「大丈夫ですわ。私たちは私たちでやるべきことをやりましょう。」
なので私はあえて問題ないことを断言する。
「シファお姉さまはどうします?」
「…こっち側に居ようかと思ってるわ。やっぱりメタトロンは苦手ね。」
私は心の中で軽くガッツポーズする。
メタトロンはジーク殿が外へ連れ出したが、王宮内にはまだメタトロンの配下の天使が闊歩しているかもしれないのだ。
それらと相まみえても戦える戦力だというのもありがたいが、ジーク殿の居ない状態でシファお姉さまと一緒に居られることも嬉しい。
ここはしっかりとアピールをしなければ!!
私はすっとシファお姉さまに近づき、その細腕に抱き着くように身体を密着させる。
ちょっと怖がっている風な雰囲気を出して庇護欲を刺激する作戦ですわ。
「お姉さま…。」
少し怖いけど頑張る。
そんな微妙な気持を表す表情を作り、シファお姉さまを見上げる。
そこにはごみを見るような目で、これ以上ないという嫌そうな顔のシファお姉さまの顔があった。
あれ?なんで?
でもそういう目で見られるのも…悪くない?
雑に腕を振り払われる。
「下級天使位なら私が相手してあげるから離れなさい。貴女の護衛はラマシュトゥの役目よ。…あれ?ラマシュトゥは?」
シファお姉さまがきょろきょろと辺りを見回す。
どうやらこの場にファンシーな装いの幼女が居ないことに気付いたようだ。
「妾ならここじゃ。」
そう言いながらぴょこんと私の頭の上に1匹の猫が乗る。
「あら、そっちの方が可愛くていいわね。」
シファお姉さまがラマさんの喉をくすぐっている。
ラマさんは最近人形態で私に付いてくるのが難しい場面ではこうして猫形態になって私の肩に乗ったりしながら護衛の任務を果たしてくれている。
しかし、流石に神族であるシファお姉さまはこの程度では驚かないのですわね。
「ね、猫が喋った…?」
一方ただの人族であるお父様は大仰に驚いている。
まぁこちらが普通の反応だろう。
「話すと長くなりますけど…この猫は私の護衛としてジーク殿が遣わした彼の眷属です。」
「け、眷属?」
「ええ、彼女は魔神です。その気になればこの一国くらい難なく落とせるくらいの力はありますので、護衛としては戦力過剰ですわね。」
「待て待て、頭の整理が追い付かん!!」
そりゃそうだろう。
「ですがお父様、今はそんなことを話ししている場合ではありませんわ。この隙に早くラズールお兄様の企みを阻止しなければ。」
「そ、それでいいのか?」
困惑しているお父様を無理矢理動かす様にその背を押して地上へと続く階段へ向かう。
だが、その階段の先の扉が先に開いた。
「王!!ご無事ですか!!」
その扉の先に居たのはお父様の王族専属騎士の1人、リュードだった。
更にその後方には面識のない男たちがいる。
リュードが王の元へと駆けつける。
他の男達も地下に降りてくるが、そのうちの一人がシファお姉さまを見て足を止める。
「お?君はシファ君じゃないか。」
シファは少し思い出すようなそぶりを見せる。
「コウナードのギルドマスターだったかしら?サイモンさんよね?」
「はっはっは。覚えてもらえていて光栄だよ。」
その初老の男は嬉しそうに笑う。
「リュード。よく来てくれた。しかし彼らは?」
王がリュードに問う。
「はい。御命により各地のハンターギルドをめぐっている最中に今回のクーデターの報を受けまして、昔の仲間に協力をお願いして駆けつけた次第です。突入の機会を探っていた所、白銀に輝く【竜種】が王宮に降り立ちまして、中で混乱している隙をついて侵入してきました。」
「【竜種】!?外にはそんなのも居るのか!?」
「あ、それもジーク殿の使い魔ですわ。今はもう幻界に還っていますのが。」
「はぁ!?…いや、まぁいい。ティアが言うのだから真実なのだろう。」
お父様は考えることを放棄したようだ。
ジーク殿に対する処置としてはそれが最善である。
「それよりラズールお兄さまの所へ行きますわよ!!」
いい加減足止めを食らい過ぎている。
私はお父様と、まだ混乱している王の王族専属騎士たちに発破をかけた。
はい。
ジークさんvsメタトロンさんは描写ありません。
勝負は始まる前に着いているのです!!
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