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211/218

211.踏破者、王宮に乗り込む。

バハムートに指示して王宮の庭に着陸する。

普段であれば王都から少し離れた所に着陸するような配慮をしていたが、今はそのような気を回す必要はないだろう。


王宮に居た兵士たちは急な【竜種(ドラゴン)】の出現に驚き、慌てているようだった。

着地したバハムートを遠巻きに囲むように各々武器を構えているが、少々遠すぎる。

これではもしバハムートがブレスを吐く動作をしても止めることが出来ないだろう。

武器を構えて威嚇するだけで戦う度胸がないのがバレバレだ。


「ラズールに会いに来た。奴はどこにいる?」


おれはバハムートの上から兵士に声をかける。

そこでバハムートの背に俺たちが乗っていることに気付いたようだ。

そこかしこからティア王女殿下という声が聞こえてくる。


困惑が兵の間に広がる。

見つかった瞬間に問答無用と言うような雰囲気ではない。

これは作法に則って行けばラズールの所まで案内してもらえるかもと思った矢先だった。


「第二王女は反逆者となった!!総員奴らを拘束せよ!!」


一人の男が大声を上げる。

見れば一際豪勢な鎧を着こんだ騎士だった。


その号令を受けた兵士たちが再び武器を構える。

そして、じりじりと包囲を狭めてくる。


「反逆者とはどのような言い分ですか?」


見ればティアが凛とした表情で立っている。

決して高圧的なものではないが、王族特有の覇気とでも良いのだろうか。

有無を言わさぬ威圧感を伴った声が兵士に向けられる。


だが、豪勢な鎧の騎士はそんなティアに不敵な態度を取る。


「ラズール王より勅命が出ている!!ティア王女はラズール王に逆らい、打倒をもくろむ逆賊であると!!見つけ次第拘束、不可の場合は殺しても構わないとな!!」


なんか良く分からん理由だがラズールが言うから反逆者、みたいなことだろうか。

ティアも何とも言えない表情をしている。


「お兄様からの書状では戴冠式には参加するようにと書いてありますが?」


ティアは懐から一通の書状を取り出す。

先日シュタイン領のティアの元に届いた書状だ。

内容はラズールを王として認めてお前はシュタイン領の領主になれ。認めなければ反逆者として処刑すると言った内容のものだ。

そしてその書状には認める場合は戴冠式に参加せよとも書いてある。


最初は他の王候補者がいる場で、前王から戴冠することで完全な王位継承を印象付けることが目的かと思っていたが…。


「ふん!!それは貴様をおびき出すための罠だ!!王は危険因子たる貴様がのこのことこの王都へ現れるのを待って捉えるという作戦を立てられていたのだ!!」


つまり、認めなければ反逆者として処刑。

認めて戴冠式に出席しようとしても同じく処刑というわけか。

ティアにしてみればこうして立ち向かわなければどのみち未来がないという状況だったわけだ。

まぁ、もうその道筋はないので今更関係ないが。


というかさっきは反逆者と言っておきながら今は危険因子とか言ったか?

言っていることも一貫性がないというか…なんというか筋が通っていない。

ひょとして洗脳されているか?


俺はシファを見る。

が、彼女は首を横に振る。


やはり洗脳されているかを外から判断することは難しいらしい。


「ティアを捕えてどうするつもりだ?まさか王族を牢に入れるわけではないだろうな?」


俺はティアの前に立ち騎士に話しかける。


「反逆者に権利などない。前王ともども牢にぶち込んでやるわ。」


「王さんも牢屋かよ。てっきり軟禁されているかと思っていたが…予想よりひどい扱いを受けているようだな。」


俺はティアとシファに目配せする。

2人ともそれに頷く。

因みにラマシュトゥはサンドイッチをほうばっている。なぜ?


俺達が王宮へ来て最初にすべきこと。

それは王の保護だった。


ティアはこのごたごたの間に成り行きで王座に就くことを良しとしていない。

あくまで今回はクーデターの阻止であるため、王の保護を最優先に行うと事前に取り決めていた。

あとはラズールと相対した時に人質として使われると面倒という理由もある。


「行くぞ。」


短く声を発しバハムートから飛び降りる。

動いた俺に兵士たちの視線が集まった。


「【雷蛇(サンダー・バイト)】」


そこへまだバハムートの背にいるシファが攻撃魔法を放つ。

多人数を制圧するのに俺は向いていないからな。

殺していいなら話は別だが、戦闘不能にするならシファに任せるのが一番だ。


シファの放った雷は地を這った以前とは違い、上空から降り注ぐように放たれる。


「ぎゃ!?」「がっ!?」


兵士たちの合間を雷が走り、次々と昏倒させていく。

雷を通す鉄製の甲冑に剣。

密集した形態に混乱した兵士。

全滅するのは必至だった。


兵士がパニックになっている隙にティアをバハムートから降ろす。

振り返った時には兵士の大半は昏倒していた。


「ええい!!相手は4人だ!!怯むな!!かかれ!!相手は反逆し…!?」


俺は残った兵をけしかけようとしていた豪勢な鎧の騎士の目の前に縮地で移動する。

いきなり眼前に現れた俺に面食らったのか騎士が一歩後ずさる。


「操られてるんだったらすまんな。」


俺はその兵士の腹を思いっきり手加減してぶん殴る。


「ぐごぉ!?」


豪勢な鎧は砕け散り、騎士はゆうに10mを越える距離を飛び、そのまま植木の中へと姿を消した。


「まずは地下牢だ。」


俺は後からティアたちが付いてきていることを確認し、王宮へと駆け出した。

あっさりと重要情報喋っちゃう間抜けなキャラは必要ですよね。

物語を進めるうえで必要な存在です。

本作を応援しても良いと思っていただけましたらブックマーク・評価をよろしくお願いします!!

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