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21.踏破者、戻る。(ギルドマスター、考えを巡らす。)

スリアドのギルドに戻ってくると、そこはちょっとした騒動になっていた。


息巻く冒険者達。

腕を組んで仁王立ちするギルド職員。

縄で拘束されている冒険者。


まぁ縄で拘束されているのはテゲスなのだが。


「帰ってきたな。」


ギルド職員の男が俺を見て言う。


「単刀直入に聞くが、オーガの群れをこいつに押し付けられたのは本当か?」


「事実です。報告は上がっていると思いますが。」


俺の回答にギルド職員の顔がピクリと反応する。


「マジで気づかれてたのか。この辺りのギルドじゃ1番の隠密斥候なんだがな。」


今度は俺の方がその言葉に反応してしまう。


「気付いていることに気付かれているとは思いませんでしたよ。というかそれなら助太刀に来てくれても良さそうなもんですがね。」


「ハハッ。それまでの評価でオーガ数匹くらい問題ないと判断したんだろ。実際問題なかったみてぇだしな。」


「でも俺達じゃなきゃ死人が出てもおかしくなかったでしょう。他の新人でも同じことしていたでしょうし。」


今度はテゲスを見据えながら言う。


「そうだな。今回の手際を聞く限りだと初犯では無いだろう。今回のことはギルド側の職員の目の前で行われたことだから弁明の余地はないが、余罪についてもしっかりと調査した上で厳重に処罰しよう。」


「そうか。ならそっちは任せるよ。」


「ああ、今回の件はこういった奴を野放しにしていたギルド側にも責任がある。詫びという訳じゃないが、2人のランクをCランクまで上げておくから好きに使ってくれ。」


「そんな簡単に・・・良いのか?」


「Cランクまではギルドマスター権限で昇格が可能だからな。遅くなったがスリアドのハンターギルドでマスターをしているアセットだ。今度こっちから塩漬け依頼持っていくからぜひ受けくれ 。」


「なんだその面倒そうな依頼は・・・。俺たちは早々に王都に向けて発つからそれまでにしてくれよ?」


そう言うと俺たちに対しては比較的にこやかに話していたアセットの表情が少し曇った。


「・・・王都に急ぐ理由でもあるのかい?」


なんだ?

そんなに時間のかかる面倒な依頼を受けさせようとしているのか?

しかし正直にフレンブリード家の人間に見つかるわけにはいかないと言うわけにもいかないし・・・。


「別に急ぐってほどのこともないんだが、今後は王都を拠点に活動するつもりでね。今から楽しみなんだ。」


そう言うとアセットは納得したのか無言で何度か頷く。


「そうか。まぁ都合が合えばでかまわない。よろしくな。」


そうして俺たちはテゲスの事をギルドに任せて依頼達成報告に向かうのだった。

後方からはテゲスの処置等の命令が飛んでいる。

流石にギルドマスターはしっかりしているな。





◇◇◇◇◇



side アセット


職員へテゲスを留置所へ送るように、また別の職員にテゲスの依頼履歴と同時期に同じ場所の依頼を受けたハンターが行方不明になっていないか調査するように命じた。


こういった卑劣な行為を行う輩は許せねぇ。

同時に、それを阻止できずに見過ごしていた自分たちにも腹が発つ。


まだ少し怒りの感情を処理できていない状態のまま執務室に戻りソファに腰掛けると、部屋の隅に人がいることに気付く。


「居たのかミリア。」


彼女は先の話に出てきた隠密斥候で、このギルドの副ギルドマスターの地位に当たる人間である。


「お疲れさま。逸材だったでしょ?」


「ありゃやべぇな。ギルドとしても出来るだけ仲良くしておきたいところだが、少々背景が気になるな。」


俺はそう言ってデスクの上にある書類を手に取る。


「それは?」


「これはフレンブリード辺境伯家からの要請書だ。なんでも辺境伯家が管理している冥級ダンジョンが崩壊したらしくてその調査のため人手が欲しいんだとさ。」


「ダンジョン崩壊!?中の魔物たちが溢れ出てくる!?」


「いや、どうもそうじゃないみたいだ。魔物が溢れかえってるって報告はないな。もしかしたら踏破されたのかもしれん。」


「だとしたら安心だけど・・・一体誰が?・・・それが彼だっていうの?」


「彼は【才能なし】らしいな?そういった人間に1人心当たりがあってな。その辺境伯家の子供が【才能なし】って噂が流れたことがあったんだ。そしてその子は今回崩壊した冥級ダンジョン【アビス】の調査に向かい命を落とした。とね。」


「そしてそのダンジョンの踏破とともに異様な強さを持ったハンターが現れた・・・偶然にしては出来すぎね。」


「そう思うだろ?それに不審な点はそれだけじゃない。辺境伯家がダンジョン調査にギルドの手を借りたいと要請してきたこともだ。」


「確かに。冥級ダンジョンなんて機密だらけの所は自前の騎士団で対処するのが普通よね?」


「騎士団を動かせない・・・あるいは別に動かさなければならない理由があると考えるのが普通だな。」


「まさか・・・!?」


「確証がある訳では無いがな。」


アセットは書類をデスクに戻すと窓から外の景色を眺める。

ハンターギルドとしての立ち位置と、これからの取るべき行動について考えを巡らせるが、答えは見つかりそうになかった。

アセットさんをはじめ、ギルド職員の方々は皆さん優秀です。

悪いことはできませんね。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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