表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/218

197.踏破者、鉱石採取依頼の報告をする。

王都東ギルドの中へと足を踏み入れる。

依頼受注できた時よりもハンターの数が多い。

おかげで目的の人物を探すのに手間取る。


あの猫人は身長小さいんだよな…。


「お兄さんこっちにゃ。」


声のする方を見るがそこにフェリスはいない。

いきなり視線を向けられたハンターが驚いている。


「下を見るにゃ!!そんなベタなのは要らないにゃ!!」


そのまま視線を下に向けると顔を膨らませたフェリスが居た。


俺のすぐ横に立っている。


いや、そんな近くにいるとは思わないだろ。


「依頼達成の報告をしたいんだが、いいか?」


フェリスは俺の声のトーンを聞いて何かを察知したようで、一つ頷くとバックヤードへと俺達を促した。

そしてそのままギルドマスター室へと入る。


「その様子じゃ当たりを引いちゃったみたいにゃ?」


当たり?

という事はアレも含めての依頼だったという事か?


「心配しなくてもうちは()じゃないにゃ。何があったか報告してくれると助かるにゃ。」


俺が返答に慎重になっているのを見てフェリスがそんなことを言ってくる。

まぁ、敵ならわざわざ俺達をあんな所にはやらないだろう。


「坑道の最奥には儀式召喚の設備(・・・・・・・)があったよ。」


思い出すのは【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】の居た広い空間。

中央に祭壇の様なものがあった。

また、【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】討伐後、鉱石採取の依頼を達成するために辺りを見て回っていたのだが、そこで祭壇を中心とした魔法陣が床に描かれていることに気付いた。


祭壇と魔法陣。

典型的な儀式召喚の設備だ。


「【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】は居たかにゃ?」


さして驚いた風もなくフェリスが問うてくる。

この反応、やっぱり知っていたか。


「ああ、祭壇のある最奥の空洞にな。…あれはなんだ?」


「お兄さんは『討神』という組織を知っているかにゃ?」


「いや、初耳だ。」


「…『討神』は『この世界は神なるものに支配されており、人類は飼われているだけである。真の自由は神を討ってこそ為される。』って言って過激行動を起こしている犯罪組織にゃ。」


犯罪組織…。

その思想がシファと被っているのが少し気になる。


「どこからか得た知識で神様を討つために各地で禁忌の実験を繰り返している節があるにゃ。あの鉱山にもその組織の手が入っていた可能性が浮上したので調査を依頼できる人を探していた所だったのにゃ。」


「なるほど、それで他のハンターが絶対に受けない条件で(・・・・・・・・・・)依頼を張り出して(・・・・・・・・)おいて、俺に押し付けたってことか。」


「…バレてたにゃ。」


ばつが悪そうに視線を外すフェリス。

俺はそれを見て小さくため息をつく。


「ライラあたりから俺たちが王都に来ることを聞いて張り出しておいたんだろ?軽薄な態度と口調でごまかしはしていたが、俺達に依頼を受けさせようと待ってたってわけだ。」


今思えばギルドに足を踏み入れた瞬間フェリスに声をかけられたのはそう言う事だったのだろうと思う。


「態度と口調はいつも通りにゃ!!軽薄はただの悪口にゃ!!」


違ったようだ。

まぁ確かにいつもこんな感じだな。


「そう言う事なら先に言ってくれてもいいだろうに。わざわざ偽装まですることか?」


しかし俺の疑問は見当違いだったようだ。


「うーん。正直に言うと、ハンターギルド内やハンターの中にも『討神』の人間が居る可能性が高いにゃ。いわゆる間者って奴にゃ。なので、この件はギルド上層部と信頼のおけるギルド職員、ハンターにしか知らないにゃ。ああいう偽装工作をしたのは、お兄さんたちがそっち側の人間ではないことを確認する意図と、あの場に間者がいても不自然な依頼をしていないように見せかけるためにゃ。」


なるほど。

つまりは俺も間者として疑われていたという訳か。


「ぶっちゃけお兄さんは正体不明の強大な力を持つ非常識なハンターにゃ。怪しすぎるにゃ。」


「ひどい言われようだな!!あと非常識はただの悪口だ!!」


「でもそっち側じゃなさそうで安心したにゃ。やっぱりうちの見る目は正しかったにゃ。」


そう言ってフェリスは屈託なく笑う。


「しかし、そうなるとあの【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】はその組織の人間が召喚したって事か?」


「…どうも他の組織関連の施設でも大罪竜が召喚された形跡があるみたいにゃ。まさかとは思っていたけど、組織にそれだけの力があるとは予想外にゃ。」


神に対抗する戦力だから大罪竜か。

このネーミングも組織から発信されている可能もあるレベルだ。

名前を付けたのは有識者だろうから表の組織の中枢に組織の人間が居る可能性は高そうだ。


あとはその思想と技術がどこから来たかだが…。


俺はシファをちらりと横目で確認する。

どうも彼女も彼女で何かを考えているようで思案顔だ。


「でも実際に【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】がまだ居るとなると討伐依頼をかけなきゃいけないにゃ。もう鉱山が閉鎖して10年にもなるのにまだ居座っているなんて信じられないにゃ。大規模依頼(レイドクエスト)を発行しなけりゃいけないにゃ…。」


気が付くとフェリスが今後について頭を抱えていた。

討伐?


「【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】なら討伐済みだぞ?あと、そいつがそこに居座り続けてたのは、体が坑道より大きかったから外に出られなかっただけだな。」


「へ?………と、討伐したと言ったのかにゃ!?大罪竜にゃ!?いったいどうやったにゃ!?」


「どうって言われても…。」


不測の事態による可哀相な最期だったからなぁ…。

逃げられなかっただろうというのに気付いたのも討伐後だし…。


彼の名誉のためにここは口をつぐもうと俺は決心した。

フェリスさんの腹黒回です。

ギルドマスターにもなると酸いも甘いも…ってやつですかね。

本作を応援しても良いと思っていただけましたらブックマーク・評価をよろしくお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ