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195.踏破者、メキア鉱山を進む②

「で、【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】はどこにいるんだ?」


「…最奥よ。」


シファの【探索(サーチ)】の範囲ならこの鉱山の全体像が把握できていてもおかしくない。

そう思っての質問だったが、その見立ては正しかったようだ。


「ちなみに今どれくらい進んできたんだ?」


「だいたい半分くらいかしら?でも、魔物は奥に行くほど多くなってるから戦闘回数は増えそうね。」


という事はここまで来た以上の時間が掛かるってことだ。

帰りの時間を計算すると少し急いだ方が良いな。

ティアにはハンターギルドで適当な依頼を受けて時間を潰しておくと言ってあるので問題はないと思うが、大罪竜と接触するような依頼を受けていると知られると小言を言われかねない。


何としても向こうの呼び出しの用事が終わるまでに帰らないとな。


「よし、ちょっとペース上げよう。最奥まで真っすぐに、途中の鉱石なんかも無視で行こう。」


『完全に依頼内容そっちのけじゃな。』


「…帰りにでも採取すればいいさ。よし、行くぞ。」


そう言って俺は駆け出す。

後ろを付いてくるシファが進むべき道と魔物の位置を教えてくれる。


「【竜人化(ドラゴンフォーゼ)】。」


身体能力を跳ね上げて道中の魔物に接敵する。

火竜(ファイアドラゴン)】、【地竜(アースドラゴン)】はおろか装甲の硬さに定評のある【岩石蜥蜴(ロックリザード)】までをもなで斬りにしていく。

宮毘羅(クビラ)に教えを乞うてから太刀の扱いを学んで来た結果、刃の入れ方、引き方が適正化されてきているのだろう。

単純に腕力で切っているときはシュラも文句を言っていたが、今回はそう言った苦情も出ていない。


「…この先に広い空間があるわ。そこに他の魔物より一回り大きな魔物と、【火竜(ファイアドラゴン)】かな?が10匹ほど居るわ。」


シファがそう言うので駆けるのを止めていったん休憩に入る。

正直な所【火竜(ファイアドラゴン)】10匹は多い。

壁際の適当な岩に腰を落として突入方法を考える。


「言っておくけど私はこんなところで生き埋めになるには嫌よ?」


『我もだ。』


俺の隣に腰を下ろしたシファが言い、シュラがそれに同意する。


「安心しろ、俺もこんなところで【終焉の息吹(メギド・ブレス)】を使ったりはしないさ。そこまで馬鹿じゃない。」


「信用がないのよ。」


「それは面と向かって言う事か?」


シファの辛辣な物言いに苦笑する。


まぁ、【終焉の息吹(メギド・ブレス)】を使わず戦う方法じゃなくて、【終焉の息吹(メギド・ブレス)】を使っても周囲に被害が出ない方法を初めに考えるあたりにそう言われる要因があるのだろうが…。


「いい方法が思い浮かばんな。シファならどうする?」


自分に振られるとは思っていなかったのか、シファが意外そうな顔をする。


「…そうね。坑道にダメージを与えずに処理する必要があるから…。」


そう言いながらシファは周囲を観察する。


「水攻めにするかしら。」


「水攻め?」


今度は俺が首をかしげる。


「ええ、この坑道は基本入口から下るように掘られているの。つまりこの最奥は一番低い所にあるわ。水を流せば自然とそこへ流れているという訳ね。」


「なるほど、それで溺死させるという事か。」


俺が察した内容を話すとシファが頷く。


「しかし、この先にどのくらいの空間があるかわからんのだが水魔法?でその空間を埋め尽くすほどの大量の水を作れるのか?それと、空間を埋め尽くした後の水をどうするかだな。まさか炎魔法で蒸発させていくわけにはいかんだろ?」


シファの思いついた案の問題点を指摘する。

しかし、シファは俺の指摘に対してきょとんとした表情を浮かべていた。


「…水魔法なんて使用しないわよ?」


「え?」


今度は俺がきょとんとする。


「使うのは異空間収納。確保している飲み水の一部を放出するだけ。終わったらその水を異空間収納に回収するだけ。流石に一回使った水は飲み水にできないから別で収納しないといけないけど。」


「え?…ええ??」


飲み水?

確かに依頼などで外出している時の飲み水についてはシファが用意してくれていた。

しかし、そんな桁外れの量の水を確保しているというのか?


「ちゃんとあるわよ?全部出せばマグカル湖くらいの水量はあるかしら。」


「マグカル湖!?」


あれはもう海ですよね!?


…いったい何処からそんな量の水を回収したんだろう。

単純計算でこの世から巨大湖が一つ消滅していることになる。


「えーと、あれは天使辞めた時だから…相当昔ね。」


相当昔の出来事だったようだ。

うん、この件については深入りを避けよう。


「確かにその方法なら安全、かつ確実に魔物を掃討できるな。」


使える技能が少なく戦術の幅が少ない俺とは違い、多種の魔法を使い引き出しの多いシファらしい発想だ。

こう言った考え方の違いは俺の思考パターンにも良い影響を与えてくれる。


「じゃあやってみる?」


「いや、ダメだ。」


俺はシファを止める。


「…なんで?」


「その方法じゃ【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】まで溺死してしまう。それじゃあ目的を達成できない。」


その言葉にシファが絶句する。

顔にありありと『信じられない』という想いが現れている。


いや、掃討効率を考えればシファの案が最適とは理解しているよ?

だが、俺は【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】と戦いたいんだ!!

それだけは譲れん!!


俺はその熱い想いを胸にシファへ代案を説明し始めた。


シファさんは元々即物的な考え方をしていますので、手段が残酷とか関係ないようです。

彼女の収納の中にはいろいろとんでもないものが入っていますのでまたお披露目していきます。

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