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194/218

194.踏破者、メキア鉱山を進む①

「そこの角を曲がった先に2匹居るわね。どっちも【火竜(ファイアドラゴン)】だと思うわ。」


「…またか。」


俺は一つため息をつくと姿勢を気持ち低くして曲がり角へと移動する。


短く息を吐いてその身を曲がり角の先へと投げだし、【火竜(ファイアドラゴン)】の元へと駆ける。

火竜(ファイアドラゴン)】がこちらの存在に気付いた時にはもうすでにこちらの間合いだ。

シュラを抜刀した勢いそのままに一匹の首を一太刀で切り落とす。


だが、刀一本では2匹を同時に相手にはできない。

1匹を切り捨てる間にもう一匹が大きく口を開く。

火炎を吐く態勢だ。


駆け寄るより火炎を吐かれる方が早いと判断した俺は、その場で踏ん張ると上半身のばねをフルに稼働してシュラを投擲(・・)した。


『ファァァアアア!?』


シュラは今まさに吐き出されんと【火竜(ファイアドラゴン)】の口内に溜まった炎を切り裂き、【火竜(ファイアドラゴン)】の口内から後頭部を突き抜けた。

そしてそのまま坑道の壁に突き刺さる。


『び、吃驚した!!と言うか熱い!?熱いいいいぃぃぃぃぃいいい!!!!』


俺はすぐに坑道の状態を確認する。

結果的にシュラを坑道に突き立てるような結果になってしまったためだ。

こんなところで生き埋めにされるのはごめんだ。


…力のかかる面積が小さいせいか坑道がひび割れることもなかったのでセーフだろう。


『いや!!我が苦しんでおるのだぞ!?もう少し労わるべきじゃ!!あと急に投げるでない!!心の準備が必要じゃ!!』


「ぴーちく喚くな。火炎に触れてたのだって一瞬だろうが?それに駆け寄ったんじゃ間に合わないと思って投げたんだ。そんな時に心の準備なんて待ってられるか。」


『知らんのか!?【火竜(ファイアドラゴン)】の火炎は鉄をも溶かすと言うのじゃぞ!!』


「お前鉄じゃないじゃん。」


『我は生身じゃ!!』


「シファの【焦熱地獄火炎(インフェルノ)】でも無事だったんだから大丈夫だろ?」


『我が死にかけたことを無事だったとか平気で言うでないわ!!!!』


あれ?そうだったっけ?

俺の中ではシュラが死にかけたという記憶がない。

不慮の事故で【焦熱地獄火炎(インフェルノ)】に巻き込まれながらも使命を果たさんと無数に襲い来る【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】の触手に立ち向かっていたのではなかったか。


『…そ、其方、本気で我が死にかけている記憶がないのか…?』


「記憶と言うか、そんな事実はないな。」


『職場環境の改善を申請する!!』


「ん?有給休暇が欲しいのか?」


『ふざけるなぁぁぁああ!!!!』


俺は慎重にシュラを壁から抜く。

さいわい、坑道が報らk数るようなことはなかった。


「しかし本当に魔物だらけだな。こんな中戦闘もなく鉱石採取なんて出来るわけがない。…やっぱりこの依頼は割に合わんな。」


「でも分かってて受けたんでしょ?なんで?」


シファが首をかしげて聞いてくる。

この依頼の受注を決めたのは俺だ。

割に合わないと予想しながら受注を決めたのを不思議に感じているようだ。


そう言えばそのあたりの話はしていなかったな。


「ああ、簡単に言うと希少鉱石が残っている可能性が高い鉱山だからだな。」


「そう言えば依頼書にミスリルとかアダマンタイトとか書いてあったわね。」


俺は頷く。


「それらの金属を合金にすると高硬度の武器・防具が付くれるんだ。」


「依頼の達成ついでに武具を新調するって事?」


『何!?ま、まさか我をリストラする気かっ!?考え直してくれぇぇぇええ!!!!』


こいつマジで煩いな。


「シュラの代わりじゃない。レクシアとレベッカのだ。」


彼女らは普通の店売りの武具を使用している。

レベッカはまだ問題ないが、レクシアは本人のレベルに武器の強度が追い付かずに苦労しているのだ。


「あら、レクシアにプレゼント?焼けちゃうわね?」


シファさん!?

それ『焼ける』じゃなくて『妬ける』だよね!?

物理的に燃やそうとしないで!?

周りの気温上がったよ!?

サウナくらいにはなってるよ!?


「…シファにはこう言った武骨なものじゃなく本当の贈り物を考えてるよ。」


「…ならいいわ。」


少し顔を赤らめ鼻を鳴らすシファ。


俺は肝を冷やしたが…。

気温も下がってきているようなので一安心だ。


『相変わらず苛烈じゃの…。』


「概ね同意だ。」


俺とシュラは小声で会話する。

シュラも自身が置き換えられる危険性がないと分かって安心したようだ。


「じゃあ魔鉄だけじゃなくて希少鉱石を狙っていくわけね?」


「そう言う事だ。基本的には坑道の奥深くにある物らしいからまずは真っすぐ最奥に行くぞ。」


「確か、【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】が居るって話じゃなかったっけ?」


確かも何も、そういう話だったな。

この鉱山が閉鎖された理由。

大罪竜の1種である【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】が住み着いたせいで採掘が出来なくなったと。


「最奥まで行くって事はエンカウントする可能性が高いって事よね?」


「そうなるな。当然途中で討伐する予定だ。」


『大罪竜な…我は先の【暴食竜(グラトニー・ドラゴン)】、【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】の両方にいい思い出がないのぅ…。』


「そうだっけ?」


『其方は記憶の改ざんをやめぃ!!部下の働きは正当に評価せよ!!』


「ぶっちゃけ十二神将から色んな武術を学んでいて今が一番楽しいんだよ。早く実戦で使ってみたいってな。ただ、俺の場合は相手を選ぶからな…。大罪竜は雑魚にしては耐久力がある方だからちょうどいいんだよな。」


「つまり、元々【憤怒竜(ラース・ドラゴン)】は討伐するつもりだったと?」


「そうとも言える。」


『「はぁ。」』


何故かシファとシュラがため息をついた。

この世界に有給休暇があるかは突っ込まないでください。

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