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191/218

191.氷の魔将軍、作戦会議に呼び出される。

賑わいを取り戻してきた大通りを歩く。

一時期は人族の強襲による被害や刺客の侵入騒ぎがあり閑散としていたが、それも時が経つに伴い過去の事と割り切れるようになってきたという事だろう。


「何も状況は変わっていないというのにな…。」


無意識につぶやく。

このキテン要塞へ高火力魔法を放った者の行方は知れず。

こちらの大規模侵攻軍を壊滅させた人族の戦力も健在。

要塞内に侵入した刺客の行方は知れず、侵入経路も不明。


もし私が人族の指揮官ならこのキテンの気が緩み始めているこのタイミングで最大戦力を投じて攻め込むだろう。


そう思うと何時人族がここへ攻めてきてもおかしくない。

もしそのようなことが有ってもしっかり対応できるように、一度兵の気を引き締めておかねばならんな。


大通りから軍施設の中へ入る。

入口に居た警備兵との面識はなかったが、片目を失い、片腕も義手となった私の姿は広まっているらしく無言で道を開けられた。

いや、もしかしたら私が覚えていないだけで面識があっただけなのかもしれないが。


施設の中をしばらく歩き、指定された会議室の前で止まる。

今歩いて来た廊下を振り返るが、誰も居ない。

ここまで誰ともすれ違わなかった。

先の侵攻で3000もの兵を失った影響だろう。


戦力の補填もままならんという事か。


俺は会議室の扉を開けて中へ入る。

大体のメンバーはもう揃っているようだった。


「ほう。【氷華のベリル】も完全復活したのかな?以前の覇気が戻ってきているじゃないか。」


声をかけられた方を見る。

ゴルドが没した後にキテンの指揮を任されている黒髪の女将軍だ。


「もう俺は四将軍ではない。その二つ名も返上済みだ。で、この落ち目の一兵士を呼び立てた用事はなんだ?【幽鬼のブランディア】さん。」


俺の回答にブランディアはケラケラと笑う。

いつも思うが妖艶な容姿と子供のような笑い方のギャップがひどい。

まぁそれが魅力的だと感じる一部兵からは絶大な人気を誇るらしいが…。


「あんたを呼び立てたのは言うまでもなく人族領への侵攻作戦へ加わってもらうためだよ。数は何とかできそうだが、単騎で強い駒が足りなくてね。」


数は何とかできる?

前に一度話した時は3万程の兵が必要と言っていなかったか?

今この拠点にそれだけの兵が居る気配はない。

つまり、能力で集めた(・・・・・・)兵ということか。


「この間、東の方で人族同士の小競り合いがあったって話は知っているかい?」


「…ああ、数万人規模の戦があったとは聞いている。」


「そこで兵を調達してきたんだよ。ほら、以前隕石で消滅しちまった森があっただろ?人族の奴ら、戦の戦死者をそこに土葬してたんだよ。流石に数が数なんで運び込むことが出来なかったからアタシが直接行って呼び起こしてしてきたんだけどね。」


「…という事は数が揃ったというのは人族の不死者(アンデッド)か?大した戦力にならんぞ。」


【幽鬼のブランディア】の才能は【死霊術】だ。

亡骸に死者の魂を定着させることで不死者(アンデッド)を作り出せるが、肉体強度は亡骸に依存するので今回の場合は人族と同程度の強さとなるはずだ。

定着させる魂が技術レベルの高い魔族の者であればただの人族より多少は強くなるかもしれんが、純粋な魔族よりは弱くなる。


「だから強い駒が必要だって言ってるだろ?基本は数で押して、数で押せない相手にあんたみたいなのをぶつける算段さ。」


「…以前の俺とは違うぞ?」


そう言って左腕を示す。

今は魔導義手も生活用ではなく戦闘用のものを使用している。

アダマンタイト-ミスリル合金製の耐久力も魔導効率も最高クラスの逸品だ。

そのおかげか今では体の一部として不自由なく動かせるようにはなったが、それでもやはり以前とは違う。


「アタシには以前より底知れない感じがするがね。戦いに対する意識の違いかね?…それに、右目にも細工してるだろ?」


ブランディアは目を細めて俺を見てくる。

確かに細工はしているが実戦投入できるかは不透明な代物だ。

それに、いくら味方とは言え手の内をすべてさらけ出すつもりは無い。


しばし無言の時が流れる…。

やがて根負けしたかブランディアは肩をすくめる。


「まぁ今すぐに参加を決めろって言うつもりはないさ。作戦決行は1週間後。それまでに決めてくれればいい。ただ、作成会議には参加してくれよ?アタシは物量で押す脳筋だから細かいのは苦手なの知ってるだろ?」


そう言って再びケラケラと笑い出すブランディア。


一体誰が脳筋なんだか。

どうせ作戦会議中に俺が参加したくなるような餌を準備しているんだろう?


俺は心の中で悪態をつく。

共に四将軍として同じ戦場に立つこともあったのでこの女の性格は分っている。

とにかく意地悪い性格なのだ。


…おそらく俺にこの手傷を負わせた小娘関連だろう。

この女の事だ、そのあたりもしっかり調べたうえで俺が作戦に参加する確証があって呼んだのは間違いない。


おれは大きく息を吐き、空いている席に座る。


もう作戦参加が規定事項なら、この作戦を勝てる戦いにしていく必要がある。


俺は頭の中で相手戦力、味方戦力を整理し始めた。

魔族の反攻が始まります。

ブレンディアさんが戦力と思っている不死者がジークと対峙し一度完膚なきまでに敗北しているという事は分かっていないようです。

もう負けは確定していますね。

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