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181/218

181.踏破者、ハンターギルドで歓談に興じる。

「お、『名無し(ネームレス)』じゃねえか。もうちょっとこっち顔出せよな。」


ハンターギルドに入るや否や声をかけられる。

声のする方を見ると打ち合わせスペースで雑談中のエリオの姿があった。


「まだこの支部ハンターの数が十分じゃねえんだ。もうちょっと高難易度依頼を受けれる人員が居ないと俺が過労死しちまうだろうが。」


「その分懐が潤うだろ?競合が居ないってだけで割のいい仕事も独占状態なんだろ?」


「阿保か。俺しか受けれない難度の依頼がありゃ報酬度外視で受けるしかないだろうが。誰が他に処理してくれるんだよ。」


【瞬身のエリオ】と呼ばれるAランクハンターの彼は、口と態度は悪いがその行動理念は基本人の為になのだ。

つまりただの良い奴なのである。


「悪かったよ。処理しきれなくなったり手に余ると思う依頼があったらこっちに回してくれ。」


「ちっ。ライラのやつが依頼頻度と価格を調整してるっぽくてな。何とか一人でやっていける頻度、かつ手ごろな価格設定の依頼しなかいんだよ。あいつ、俺を生かさず殺さず使いつぶすつもりだぜ…。」


それは上手いを通り越して恐いな。

元々ギルド事務員あがりで管理能力の優秀さを買われてギルドマスターを任されている彼女だ。

エリオが言うようなコントロールがあってもおかしくはない。

…とはいえ一ハンターとしては同郷でエリオには遠慮していないだけだと信じたいところだ。


「人聞きが悪いわね。若手のいる所で公然とマスター批判とは良い度胸ね。」


ちょうどそのタイミングでバックヤードからライラさんが姿を現す。


「なんだ。居たのかよ。」


「なんだとは挨拶ね。まだ元気みたいだし高難度依頼の発行スパンは脳少し短くても良いわね。」


「すみませんごめんなさい。」


一瞬で手の平を返すエリオ。

さすがは【瞬身のエリオ】。


「俺はあまり面識がないんだが、若手も居るんだな。」


俺はギルド内を見回す。

打ち合わせスペースでは何組かのハンターたちが雑談に興じている。


漏れなく全員がちらちらこちらを見ているが。


まぁAランクハンターが2人話している所にギルドマスターが加わったんだ。

そりゃ興味を引くわな。


…平謝りしているエリオの威厳が保たれていることを祈るばかりだ。


「それで、ジークさんがここに一人で来るなんてね。私に会いに来てくれたのかしら?」


そう言って微笑むライラさん。

ただでさえ美人なのにその微笑みかたをされると大抵の男は落ちるだろう。


「一人じゃないでしょう。目が節穴のマスターがギルドを仕切って行けるのか疑問ね。」


俺の後ろから多少の怒気が含まれた声が発せられる。


「あら、【聖癒のシファ】さん居たんですね。あなたもAランクハンターなのですから少しは仕事してもらわないと。ジークさんとは違って王族専属騎士(ロイヤルナイト)ではないんでしょう?専業ハンターが仕事をしないのはどうかと思いますわ?」


対するライラさんも辛らつな言葉を返す。

顔が微笑んだままで口調が穏やかなのが異様に怖い。


あ、エリオ椅子を引いて距離を取りやがった。


「私は王族専属騎士(ロイヤルナイト)みたいなものよ。ジークとは一心同体なのだから。それにハンターは自由意思で仕事を選べるはずよ?無理に仕事をさせるのは恫喝じゃないの?」


「一心同体だなんて言ってストーカーみたいなものでしょう?いつもいつもべったりくっついて。実はジークさんに洗脳魔法でもかけ続けてるんじゃないですよね?大魔法使いの貴女ならそのくらいやってのけてもおかしくありませんわ。」


良い線行ってるんだよな。

洗脳魔法も実際使えると言っていたし。

ただ、あの魔法は使い勝手が恐ろしく悪いらしくて基本自分より弱い者にしか行使できないとか。

まぁ俺はそんな魔法にかかったりはしていない…はずだ。


「そういう物言いこそ何の根拠もないわ。新人ハンターの前で公然と他人を貶めるような発言をするようなことをして…恥を知りなさい。」


その新人ハンターたちは雑談も止めて俯き、誰もがこちらに視線を寄こそうとしていないんだがな。

むしろ巻き込まんでやってくれ。


ふぅ。

ライラさんは微笑み顔の額に青筋が浮かんでいるし、シファの怒気の中には殺気が含まれ始めている。

そろそろ止めないとまずいな。


「まぁまぁ、そんなに邪険にしなくても良いだろ。まず落ち着きなさい。」


俺は二人の間に割って入り騒動の収拾を試みる。


「黙っていてくださいジークさん。ここまで言われて放って置くことはできません。」

「黙っていてジーク。この女に身の程を教えないと煩わしいわ。」


うん、一切聞く耳を持ってくれそうにない。


「だいたい、ジークさんがはっきりと態度を決めてくれないのがいけないんですよ?私を王都まで呼んでおいて、他の女を作っているだなんて…。しかもまだそれにもかかわらず私には優しく接してくるし…。」

「だいたい、ジークがいけない。私というものが居るのだから他の女との接し方には気を付けてもらわないと。勘違いさせるような物言いや態度はどうかと思うわ。」


あれ?矛先がこっち向いて来た?

マズいマズい、この流れはマズい。


あ、エリオ笑ってんじゃねーか。

笑ってねーで助けろ!?



結局、その後ギルド内で美女二人にきつく叱られた俺が土下座を披露することで何とか場が収まった。

新人ハンター達も見ているんだが。

…土下座している俺の威厳が保たれていることを祈るばかりだ。

威厳のない実力者って皆から好かれると思うんですよ。

ハンターギルドモールド支部は良い雰囲気のようです。

締める所は締めるマスターが居るのも良いですね。

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