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180/218

180.踏破者、隣国の侵攻兆候を得る。

頞儞羅(アニラ)の作る異空間での修業は思っていたより良い点と悪い点が顕わになっていた。


良い点としては、やはり100時間ぶっ続けで修練できるのが良い。

【アビス】の時は右も左も分からない中での修練だったので何も考えていなかったが、【アビス】攻略後に現世に戻ってからは日課として訓練していても効率は上がらなかった。

これはまぁ当然だ、訓練に充てられるのはせいぜい1日に3~4時間だ。

しかも睡眠や食事と言う要素もあるため、体が動作を覚えるまで何日もかかってしまう。

その点、この空間での修練は食事も睡眠も必要としない。

正直、時間の差以上に効率が良くなっている。



その一方で顕わになった悪い点と言うのは、この修練に耐えられる者(・・・・・・)が極端に少なかったという事だ。

普通の人族は100時間起き続けていると精神的にくる(・・)ようだ。

…何も感じない俺はやはり【アビス】で何か壊れているのかもしれない。


結局、この修練を行えるのは俺とシファを除いて4名だけだった。

しかもその誰もが連日の修練には耐えられない。

レクシアとレベッカは3日置き、ランドールさんとネレウスが7日置きなら何とか続けられそうと言った具合だ。


それでも以前とは比べられないほど飛躍的な成長が見込めるのでこのあたりは良しとしよう。

もともと俺が修練を積みたいだけなので他にそれを強要するつもりもない。


そして修行に明け暮れる日々が過ぎて行った。





◇◇◇◇◇





「主殿。波夷羅(ハイラ)から連絡がありました。近日中にも動き出しそうな様子との事です。」


いつものように異空間での修練を終え現実世界へと帰ってくる。

シファと太刀使いの宮毘羅(クビラ)と一緒に。

そして帰るなり頞儞羅(アニラ)から告げられたのはそんな報告だった。


波夷羅(ハイラ)に偵察させてたのはミリガルド帝国だったな。やはり侵攻してくるか…。」


十二神将には俺への稽古をつける者とシュタイン領の町の警護をする者、そして懸念地域への偵察を行う者に分かれて活動してもらっている。

そしてそれをローテすることで俺が一通りの技術を修めれるようにしているのだ。


そして今波夷羅(ハイラ)が居るのがミリガルド帝国の西都だ。

以前の報告でミリガルド帝国が戦力を集めていると言っていた所になる。


「この時間ならティアはまだ家にいるな。」


俺はそのまま邸宅内へと戻る。

そしてそのままティアの執務室へ。


「ジークだ。入って良いか。」


「どうぞ。」


確認を取って俺は執務室内に入る。

ティアはデスクで書類確認をしていた。

ソファではラマシュトゥが紅茶をすすっている。


「どうかしましたか?」


手を止めたティアが顔を上げて尋ねてくる。


「どうもミリガルド帝国側で動きがあったようだ。近日中にも攻めて来そうな雰囲気らしい。」


「…やはりそうなりますか。」


ティアは深くため息をつく。

そしてデスクの上あった書簡を寄こしてきた。


「先日届いたフレンブリード領主、オーヴェンお兄様からの書簡ですわ。」


俺はその書面に目を通す。

そこには大体以下のようなことが書いてあった。


・フレンブリード領は住民の移住が続き、人口が減少し続けている。その大半は近隣領地を経由しシュタイン領へと向かっていることは掴めている。これは王戦を優位にするための破壊行為であり、到底許されるものではない。

・シュタイン領主へは税収と住民の補填を行うこと。

・近隣領地からミリガルド帝国が怪しい動きをしているとの情報が来ている。直ちに防衛体制を構築する為フレンブリード領へ派兵を行うこと。


相変わらずの内容だ。


「ん?もうミリガルド帝国が攻めてくるかもって情報は得ているのか。」


「ええ、オスガルド伯爵から情報提供しても良いかと打診がありました。自領を守るための方法は全て取ってほしいと伝えましたので情報提供したとの連絡を受けています。…そのあと各領地に1万ずつ兵力を寄こすよう要請されたとも言っていましたが。」


「国境沿いでもない領地の兵力がどの程度かと言う事も知らんと言う事だな。…王は?」


「オスガルド伯爵からミリガルド帝国の動きも含めて申告したと聞いています。返事があったという報は受けていませんが…。」


「そっちの動きも気になるな…。王都で動きが無いかはハンターギルドから調べてもらうか。ライラに聞いておくよ。」


「お願いしますわ。」


「それで、どうする?ミリガルド帝国が攻めてきたとして、フレンブリード領主の要請に従って派兵と言う形は取りたくないんだろ?」


「それはそうですね。またオーヴェンお兄様がつけあがりますし。侵攻があればあの人は真っ先に逃げるでしょうから、その後に戦闘に介入と言うのが理想ですわね。」


「…もし、領主の逃避前に住民が被害を受けそうになったら?」


「もちろん住民の保護に入ります。民は政争の道具ではありません。」


ティアは一瞬顔を強張らせて即答する。


「よし。その思想が生きているのなら俺も協力しよう。今は十二神将が居るから人的被害はゼロに押さえれるだろう。」


「もう感覚もマヒしてきていますけど、数万の兵の侵攻を許して人的被害をゼロに押さえられると断言できるのは異常ですわね…。」


「とは言え、あまり住民を危険な目には合わせたくないな。ハンターギルドを通して住民の避難を促す様に要請するがいいな?」


「もちろんです。」


ティアの返答を聞いて執務室を出る。

そして次はハンターギルドへと向かうのだった。

修行パートはダラダラ書くつもりがありません。

どこかで閑話として単話の挿入という事も考えましたが、本編を描くことに必死で時間が取れません。

短いとはいえ毎日更新は大変ですね…。

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