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177/218

177.踏破者、魔族軍撃退の状況説明をする。

城塞都市モールドの外縁まで戻ると、臨戦態勢に入っている国防軍の姿が見えた。

この数…どうやら全員に近い位の戦闘員が集結しているらしい。

魔族の大規模侵攻に備えての事だろうが、流石にまだ3000にも及ぶ魔族軍に対抗できる力はない。

それでも逃げ出すことなく戦いに身を投じようとしている彼らの成長を感じずにはいられない。


「ジーク様!!」


国防軍の最前線に陣取っていたネレウスがこちらの姿を確認して叫ぶ。

こちらがリラックスしているのを見て大剣を下ろしてこちらへと走ってくる。


「すみませんが今国防軍は少々混乱しています。先ほど魔族軍の大規模侵攻を確認したため、全兵力を防衛に注ぎ込んで備えていたのですが…、防壁上に配置した弓手より魔族軍が異形の大群に飲み込まれ、消滅したと…。地上に待機していた我らは異様な雄たけびを聞いただけで何が何だか…。」


今の説明だけでもネレウスが混乱しているのが若干わかる。


「とりあえず魔族軍は排除したから警備は解いて構わんぞ。ネレウスは聞いていたと思うが、例の軍勢を配下に置くことに成功した。シファが魔族軍を察知したんでその軍勢の一部をけしかけて魔族軍殲滅を行わせている。今はまだあの数を国防軍で捌くのは難しいだろうからな。」


「なんと、流石ジーク様!!」


一瞬嬉々とした表情を浮かべたネレウスだが、その顔もすぐに渋いものに変わる。


「しかし…国防軍については皆ジーク様の実力を知っているのでこのことを話しても疑う者はいないと思いますが、都市からの避難を指示した市民に何と説明すればよいか…。」


俺も神族関係の事は話しても信じてもらえないことが多々あったのでその悩みは理解できるな。

それに、正直に話して十二神将の力を当てにするような奴が出てきても困る。

今後の事を考えれば俺が居なくともこの町の住民だけで生活を守れるようになってもらわなければならない。


幸い、因陀羅(インダラ)の配下の鬼神たちは事を成した後に送還しているためここには波夷羅(ハイラ)を除いた十二神将しかいない。

それぞれ人族に擬態しているし、大軍を配下に置いたとは思われないだろう。


「ネレウス。国防軍および市民には魔族軍の大規模侵攻に備えて設置していた罠魔法の発動により撃退に成功したということにして説明しよう。」


「罠魔法…ですか。」


「ああ、詳細は機密としてぼかしてだ。あと、今回は罠魔法が上手く作動したので撃退できたが次も上手くいくとは限らないとして国防軍の気が緩まないようにも注意してくれ。」


ネレウスは俺の意図を理解したのか真剣な顔つきで頷く。

そして踵を返して国防軍の元へと戻っていった。


ふと防壁の上を見るとティアと目が合った。

どうやらティアも都市を脱出することなく前線に留まっていたようだ。

保身に走らなかったのは実にティアらしい。


一応ティアにも説明しておかねばならんか。


俺は防壁に設置された門をくぐり、ティアの元へと向かった。





「たまたまですが、私はここに居たので遠目には事の成り行きを見ていました。」


どうやら細かい説明は不要らしい。


「ああ、十二神将を配下に加えた。今回の魔族軍の侵攻は国防軍の手に余ると判断したから手を出させてもらったよ。」


ティアは頷く。


「助かりましたわ。ネレウスの話では時間稼ぎしかできないとのことでしたから。…それで、ジーク殿の後ろにいる方たちが十二神将ですか?」


「そうだな。今は一人魔族軍の偵察に出しているからここに居るのは11人だが。」


「人族の男女にしか見えないですわね。擬態しているのですか?」


「ああ、因陀羅(インダラ)。」


「御意。」


因陀羅(インダラ)が擬態を解く。

額に角が二本、牙も大きく筋骨隆々の大男の姿となった因陀羅(インダラ)の見た目は人族と言うより【(オーガ)】に近い。


ティアはその威圧感に気圧されたか言葉を出せない。


因陀羅(インダラ)、もういいぞ。」


俺がそう言うと因陀羅(インダラ)は再び人の姿に戻る。


「という訳で予定通り8万越えの軍勢を迎えることに成功した。フレンブリード派兵についても相談したいところだが…。」


そこで一旦言葉を区切り防壁内を見やる。

そこにはまだ状況が伝わっていない市民が避難していく様子が見て取れた。


「まずは落ち着かんことにはな。ティアも状況説明に出るのか?」


「ええ、領主の務めですから。」


「そりゃそうか。」


俺はてティアに説明案を提示する。

ネレウスに行ったものと同じ内容だ。


「…仕方ありませんわね。数万もの鬼神を従えた人族が事態を収拾したと言っても信じられる人はいないでしょうから…。」


「そう言う事だ。」


「分かりました。私も事態に収拾に動きますのでまた後程。」


そう言ってティアは階段を下りて行った。


防壁の上には俺とシファ、そして十二神将だけが残される。


「この混乱が落ち着くまで数日はかかりそうね。」


避難する市民を見ながらシファがつぶやく。


「まぁそれはティアの仕事だ。俺はその間に訓練でもしてるさ。せっかく指導者も得られたんだから。」


そう言った俺を見るシファはあきれ顔だ。

まだやるの?と言わんとしているのが分かる。

だが、まだまだ身に付けたい技術は沢山ある。


「まずは宮毘羅(クビラ)の刀剣術、そして因陀羅(インダラ)の格闘術。…時間が足りんな。」


「…時間の流れが緩やかな異空間を作りましょうか?」


スケジュールを思案する俺に声をかける者が居た。

頞儞羅(アニラ)だ。

鎚矛を武器とする彼女は魔術師型で、時魔法を使って戦っていた。


「…できるのか?」


「はい。」


頞儞羅(アニラ)ははっきりと肯定した。

十二神将は男女両方の将軍が居ます。

因みに人化しても角と牙、肌の色が変わる位で見た目はそんなに変わりません。

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