17.踏破者、依頼を受ける。
俺は今ハンターギルドの受付嬢から説教を受けている。
「ちゃんと聞いていますか?【竜種】って言うのは、魔物の中でもトップクラスの強さを持った魔物なんです。下位種の【地竜】とは言え、ハンターランクで言えばパーティ攻略ならBランク複数名、ソロ攻略ならAランク以上が推奨される魔物です。依頼書にも書いてあります。」
そう言って受付嬢は俺の持ってきた依頼書の一文を指さす。
そこには確かに推奨ランクの文言があった。
近隣で魔物討伐依頼、かつ高額報酬のものをと思って選んだのだが分不相応だったようだ。
ギルドが最大級警戒するような魔物を自分なら大丈夫と思ってしまうと、後で痛い目見るのは間違いないだろう。
「わかった。相応の依頼を受けるようにしよう。」
そう言って俺は受付を後にし、依頼書を掲示板に戻す。
推奨ランクがFランクの依頼を片っ端から見ていくが、高額報酬が謳われている物はなかった。
近隣で完結できるものであれば、【北の森の魔物の間引き】だろうか。
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【北の森の魔物の間引き】
依頼内容:スリアド北の森外縁の低級魔物の討伐
依頼主:ハンターギルド
依頼達成条件:【小鬼】【小狼】の討伐(上限なし)
報酬:各魔物10匹討伐につき3,000ギラ
備考:北の森深淵で【地竜】目撃情報あり。討伐が確認できるまでは森に深く立ち入らないよう注意。
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因みに、オーガの刀の売却額は40,000ギラ、今の宿の宿泊費が一泊12,000ギラ(1人部屋は8,000ギラ)だ。
さっき諦めた【地竜】討伐の報酬が40万ギラ。
だが、この依頼では一日40体討伐しないと宿代も稼げない。
正直金額的にはかなり見劣りするが仕方あるまい。
俺は【北の森の魔物の間引き】依頼を持って先ほどの受付嬢の元へ向かう。
今度は問題なく依頼を受理してもらえた。
「先ほどの【地竜】討伐依頼が出ている森ですので、絶対に森深くには立ち入らないようにしてくださいね?ではお気をつけて。」
「俺も死にたくはないからな。気を付けるようにするよ。」
善は急げだ。
俺は打ち合わせスペースで変わらず本を読んでいたシファを引きずってギルドを後にした。
◇◇◇◇◇
北の森はスリアドの北門を出たところで視認出来るくらいの距離の場所にある。
時折中の魔物が出てきて町の方まで来ることがあるらしく、脅威にならないように定期的にギルドの依頼で間引きが行われているらしい。
外縁には弱い魔物しかいないが、深く入っていくとCランクの【鬼】や【獄犬】と遭遇することもある。
オーガは【アビス】で何万と狩ってるから問題ないけど、ヘルハウンドのように【アビス】で出てこなかった魔物はとは戦闘経験がない。
つまり、低ランクであっても油断すれば殺されてしまってもおかしくないという事だ。
俺は気を引き締めて森へと向かう。
「ゴブリンやウルフが相手なんて、いくら何でも弱すぎるのではないか?」
「俺たちは最低ランクハンターだし、戦ったことのない魔物も多い。慢心は人を殺すともいうしな。」
『其方は変な所で慎重じゃな。少なくとも我の攻撃が全く通じなかった【鉄壁】さえあれば地上のどんな相手でも傷を負う事もあるまいに。』
「それが慢心だよ。フェンリルの【虚無】みたいにこっちの防御力に関係ない攻撃だってあるんだから。」
『あそこの80階層のボスなんぞ、神クラスと渡り合えるレベルの魔物だぞ…。』
「お、いたいた。」
俺は30m程先に3匹のゴブリンを見つける。
30m…ギリ届くかな?
「闇魔法【影突】」
俺が魔法を行使するとゴブリンたちの影から尖った針が突き出るように出現した。
「ッギャ!?」
ゴブリン3匹はその影の針に突き刺されあっさりと絶命する。
「特に問題はないな。」
俺はゴブリンの死体に近づくと討伐証明部位である右耳を切り落として革袋へしまい込む。
とりあえず3匹。
ノルマの40匹まであと37匹だ。