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168.踏破者、フレンブリード派兵を検討する①

ミリガルド帝国。

この王国の東に位置する大国だ。

国家思想としては武力を重んじる傾向があり、他国への侵略戦争を繰り返していた過去もある。

しかしこの100年ほどはそう言った動きもなくなり、この王国とも交流がある。


「これが3つ目ですわね。実はこれも未確認情報なのですが、ミリガルド帝国が西都に軍事力を集中させているという情報があります。」


「その情報はどこから?」


「これもオスガルド領の領主、ボーマ伯爵からの情報です。フレンブリード領の急速な防衛能力の低下は領土を隣接している3領主も気にしているようで、そのうちの一人がミリガルド帝国の動きを内偵させていたようです。そしてその情報を他の2領主に展開してきているようですわ。」


なるほど、

仮にミリガルド帝国が侵攻してきたとして、フレンブリード領が落とされれば自分の領地が次の戦火に巻き込まれるわけだ。

そりゃまともな領主ならそれに備えるくらいの事はするわな。


「ティアは実際にミリガルド帝国の侵攻はあると思うか?最近は大人しいもんだったが。」


「…可能性はあると思います。」


「そう考える理由は?」


「ミリガルド帝国がここ100年ほど他国への侵略戦争を行っていない理由は主に皇帝の人柄によるものです。もし最近この皇位継承がなされていて、以前と同じ思想の皇帝が誕生していたとしたら…。」


「皇位継承ね…。時期皇帝は知っているのか?」


「以前にこの王国へ国賓として招いたことがあります。…私の印象としては何を考えているか分からない人。というものです。」


その答えを聞いて俺は少し考えこむ。


「それで、ティアとしては(・・・・・・・)どうしたい(・・・・・)んだ?」


ここまでの話では、フレンブリード領に侵攻があるかもという話でシュタイン領の(・・・・・・・)話ではない(・・・・・)

王国としては他国の侵攻があれば対応を迫られるが、それは王が考えればいい話だ。

次期王候補(・・・・・)のティアが考えを巡らすような話ではない。


ティアは俺の質問の意図を察し押し黙る。

しかし、意を決したか顔を上げる。


「私はフレンブリード領への派兵を考えています。」


この答えに、一同に動揺が走る。

フレンブリード領は確かにミリガルド帝国の脅威に晒されているのだろう。

だが、実際に侵攻されたわけではない。

もしかしたら侵攻すら行われない可能性もある。


対するこのシュタイン領は現在も魔族の侵攻を受けている。

昨日魔族領の拠点への攻撃と新指揮官への攻撃を行ったところなので態勢の立て直しに時間はかかるだろうが、いずれ以前以上の戦力をつぎ込んで再侵攻してくるのは目に見えている。

最前線にあたるこの城塞都市モールドの戦力は十分とは言い難く、再侵攻に対し戦力の強化は喫緊の課題にも挙がっている。


皆そのことを理解しているのでティアの言葉に驚きを隠せない。


「僭越ながら。今はこのシュタイン領の防衛力の強化に集中すべきかと。」


この発言もネレウスだ。

今の国防軍のトップには俺が仮で就いてはいるが、元将軍のネレウスはその右腕的なポジションにいる。

心を入れ替えてからは自身の鍛練に加え、組織の運営も学んでいる。

なので現状の国防軍の戦力状況もよく理解しているのだ。


先日の会議時にも発言したが、国防軍の戦力は十分とは言い難い。

最近の活動のお陰で個々の戦力は確実に上昇しているが、組織としてはやはり人員不足が深刻な状況だ。

この状態で他領への派兵となると、この都市の防衛に支障をきたすのは明白なのだ。


「ネレウスの言う事も理解しています。ですので、これは決定ではありません。まだ私の考えに過ぎません。」


「では、そう考える理由を聞こうか。」


「…いくつか理由はあり、私自身纏めきれているわけではありませんのでその点は承知ください。」


そう言うとティアは一つ咳払いをする。


「まずは純粋に国難に対する意識からですわ。私が目指しているのは王位です。王位を得たとして、治める土地・民が無ければ意味がありません。」


まぁそれはそうだな。


「次に、オスガルド領に脅威が迫るのを阻止したいというのがありますわ。」


「オスガルド伯爵夫人か?」


「ええ、ボーマ伯爵もそうですが、私は非常にお世話になりましたので。もしフレンブリード領がミリガルド帝国に落ちるようなことがあったら、フレンブリードより戦力に乏しいその隣領は成すすべなく蹂躙されてしまうでしょう。それは避けたい。」


「かなり私情が含まれているようだが、そのために兵を死地へ送るのか?」


「…っ!!」


ティアは口を真一文に結ぶ。


少し意地悪な言い方だったが、使われる兵の気持ちも無視できるものではない。

兵も人間なので命を懸けて戦うに足る理由が無ければ士気など上がりようがないのだ。


「正直に言って、派兵は現実的ではないな。ここの兵にフレンブリード領を守る理由はない。」


「…王に任せるしかないのでしょうか…。」


ティアはがっくりと肩を下ろす。


「ティアが兵が戦う意思を持てるくらいの大義名分を見つけ出さない限りはな。だが、派兵は無理でも他にやり方がないわけではない。」


その言葉は希望を繋ぐものだったのだろう。

ティアは反射的に顔を上げてこちらを凝視してくる。


「…聞かせてもらえますか?」


俺は説明し始める。

フレンブリード領は領主には恵まれていませんが、国としては戦略的に重要な立地にあるという事ですね。

隣領の領主は普通に連携取れてて皆優秀なのが第二王子の無能さを更に強調しますね。

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