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166/218

166.踏破者、半妖の少女を見舞う。

「気分はどうだ?」


俺はレベッカの部屋に入りそう声をかける。

レベッカはベッドに横たわったまま顔だけこちらへ向ける。

顔色的には若干青いが、表情に曇りはない。


「上手く力が入らなくて体も起こせないけど、痛いところはないよ。」


「そうか。」


俺はベッド横に置かれた椅子に腰かける。

レベッカの視線は俺の後ろに向けられる。


「レクシアお姉ちゃんに聞いたんだけど、シファお姉ちゃんに回復してもらったって。ありがとう。」


「ふふ、どういたしまして。」


「失った血は戻らないようだからしばらくは安静にしていろ。」


「あ、それはさっきレクシアお姉ちゃんに聞いたよ。」


「む。」


休むように言うのは俺の役目と思っていたが、もう仕事は無くなっていたようだ。


「…ベリルには逃げられました。」


レベッカが先の戦いについて言及してくる。

その表情を見る限りは負の感情はないように見える。


「見ていたよ。惜しかったな。」


「…うん。」


「と言いたいところだがありゃダメだ。」


「え?」


レベッカが驚く。


「あんな捨て身の戦い方じゃ仇を討つ前に普通死ぬぞ。採点するなら0点だ。」


「えええ…。ちょっと厳しいと思います。」


そう言ってレベッカが笑う。


()はしっかり戦えるようにしなきゃだね。」


「ああ。…すぐにでも動きたいところだろうが、今はゆっくり休め。」


レベッカは力強く頷く。

それに対して表情を暗くする者も居た。


「やっぱり、まだ続けるのだな。」


「レクシアお姉ちゃん…。うん。これはボクが前に進むために必要なことなんだ。」


「そうか…。いや、私も手伝うぞ。こんどはレベッカが危険な目に合わなくて済むように。」


レクシアの方も覚悟を決めたようだ。

少し前まで落ち込んでいたがこの様子なら大丈夫だろう。


「パズズ。後は頼むぞ。」


そう言って俺は立ち上がる。


「承知した。」


部屋のしみに置いてある止まり木に居たパズズが答える。


「あ、パズズおじちゃんもありがとう。止めないでくれて。」


「ん?ああ、我にはあそこで間に入ることはできなんだよ。」


レベッカが言っているのはベリルの【氷獄領域(コキュートス)】を受けたその後に氷刃で腹部を貫かれた時の事を言っているのだろう。

確かにあれは確実に致命傷であったし、俺のレベッカを死なせるなと言う命令があったことを考えれば途中でパズズが介入していてもおかしくなかった。

だが、それをしなかったという事はパズズがレベッカの意を汲んだという事だろう。

人族を見下していた魔神が随分と変わったものだ。


「我としてはこの後、主にどのように罰せられるかが気になる所だがな。」


「ん?」


パズズを見ると、ちょっとビクついた。

鷲の姿なので表情は読み取れないが、どうやら怯えているらしい。

なんで?


「…言っておくが、あそこでパズズが介入しなかったように俺も介入しなかっただろ?あれはレベッカの為にも介入しちゃいけない場面だったんだよ。だからよくやったとは思っていても罰しようとは思っていないぞ?安心しろ。」


俺の言葉を聞いてパズズは力が抜けたようだ。


「そ、そうなのか…我はてっきりこの後に調教と称した拷問を受けるのではないかと内心ヒヤヒヤしていたぞ。」


「そんなことしたことないだろうが。人に変なキャラをつけるな。」


シファがどの口がそれを言うかと言わんばかりの半眼を向けてくるがそれは全力で無視する。

まぁ俺としても義弟の事とか、ネレウスの事とか思い当る節がないでもない。

あ、パズズの時もそんなだったか?


「じゃあ俺は一旦戻るよ。ティアにも呼び出されてるしな。シファとレクシアも来てくれ。」


そう言って俺達は部屋を出る。


「ティア王女殿下に呼び出されているのだったな…何か問題でもあったのか?」


「さあ?レベッカの事は報告したが、その時は何も言ってなかったと思うがな。」


雑談を交わしながらティアの執務室へと向かう。


「ジークだ。入るぞ。」


一言かけてから執務室へ入る。


そこにはネレウスにルーベル伯爵、ライラにエリオまで揃っていた。


「なんだ大仰だな。」


「…揃いましたわね。実はまだ不確定な状況なのですが、不穏な動きがありますのでその周知と、後は備えについて相談させていただきたいと思いますわ。」


「次から次へと…今度は何だ?」


また厄介ごとかとため息をつく俺。


「このシュタイン領は今の所良い方向に発展して行っていますし、今後もそう暗いものではないと思います。」


まぁ魔族の侵攻に対する備えも出来てきて、資金面もマグカル湖の資源活用が現実的になっている。

今のところは順調と言って差し支えないだろう。


「ですが、【王戦】で王族が派遣された土地がすべてそうとは限らないのですわ。」


「具体的には?」


「ええ、今懸念なっているのは…フレンブリード領ですわ。」


またか。

と言うのが俺の正直な感想だ。


「フレンブリード領に派遣されたのは第二王子だったか?」


「ええ、頭空っぽの馬鹿なお兄様ですわ。ですが、その…私の予想以上に頭が悪かったようで…。」


言い淀むティア。


「はっきり言え。何が起こってるんだ?」


「ええ、この【王戦】の評価基準なのですが、税収と満足度という2つの基準と定められています。」


ふむ、その2つの基準とは…王の性格の悪さがうかがえるな。


「ジーク殿は気が付いたようですわね。そう、この2つの要素は相反する要素を含んでいます。なので本来は上手く調整していかなければならないのですが…。」


何となくこの話の先が見えてきた気がする。


「あの第二王子は…、領主になるやそれまでの3倍になる重税を領民にかけたそうです。」


3倍…。

これは笑うしかないな。

レベッカ回はいったん終了です。

流れでフレンブリード領の話を書いてしまいましたが、箸休めのパートも書きたい…。

でも流れが…と悩んでいる今日この頃です。

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