16.踏破者、依頼を選ぶ。
そこそこ先まで予約投稿してたらいつの間にかダンジョン編終わってましたね。
また暇な時にでも飛ばした階層の話を閑話として作りたいですね。
少しこの先気になると思っていただけましたら、ぜひご評価ください。
では続きをどうぞ。
流石にこれでハンター引退なんてさせてしまえばちょっとした問題になってもおかしくない。
絡まれた上に正当防衛だが、こちらの事情的にも揉め事は勘弁だ。
というわけで、テゲスさんには穏便にお引き取りしてもらった。
シファに【治癒】をかけてもらい手は元通りになっているし、何も問題はない。
まぁ、治癒後にまだ反抗的な態度をとったので一回肩を握りつぶして、再度回復させることはしたが。
二回目の治癒後は恐ろしいものを見た子犬のような怯え具合になっていたからもう絡んでくることはないだろう。
「驚きました。正直才能なしと出た時はハンター登録しないよう説得するか悩んだんですが、お強かったんですね。」
ハンター登録申請時の受付嬢がこちらへ近づいて声をかけてくる。
テゲスとのやり取りは見られていたようだが、問題視はしていないようだ。
「あれはあいつが弱かっただけだろう。Cランクなんて嘯いていたからな。」
「あ、いえ、テゲスさんは本当にCランクなんですよ。でも素行に問題があって、他のハンターと揉めたのも初めてではないんですよねぇ…。」
「そうなのか。よく(あの弱さで)Cランクなんてなれたな。」
「ギルドの昇級制度の問題ですね。(どれだけ素行に問題があっても)Cランクまでは依頼をこなしていれば誰でも昇級できちゃうんです。」
「それは問題だな。(あれだけ弱いCランクが居ると)ハンター全体の信用が落ちかねんな。」
「そうですよね。(素行の悪いハンターが多くなると)ハンター全体がそういう目で見られかねませんし…。やっぱり昇級時の面接の採用を上申しておきます。」
ん?面接?ああ、試験に直接戦闘を導入するという事か。
試験管の準備の問題もあるだろうが、やった方がいいだろうな。
頷く俺を見ていた受付嬢だが、思い出したようにテーブルに小さな金属の板を2枚置く。
銅の板で出来たそれには、それぞれ俺とシファの名前が記されていた。
「こちらはハンター登録を証明するもので通称【タグ】と呼ばれています。ランクによって材質や色が変わります。登録直後はFランクですね。」
俺とシファは受付嬢の話を聞く。
いや、嘘だ。シファは本を読んでいて聞く気がなさそうだ。
タグの材質と色はそれぞれ
Sランク:ミスリル:黒
Aランク:ミスリル:翡翠(無着色)
Bランク:金:白
Cランク:金:金(無着色)
Dランク:鉄:黄
Eランク:鉄:銀(無着色)
Fランク:銅:褐色(無着色)
となっているらしい。
タグ材質で2ランク一まとめにして金級やミスリル級というような言い方もするとのこと。
受付嬢は、鉄級が初心者脱退の目安とも教えてくれた。
「タグには特殊な魔力印が施されており、ギルドで情報照会等に使われます。いわゆる身分証明になりますので、無くさないよう常に身に着けておくことを推奨します。」
「わかった。」
「依頼受付状況も記録されますので、依頼受付・報告時には依頼書と共に受付へ提示ください。」
「便利な代物だな。」
「管理が楽になりますから我々も本当に助かっていますね。…あと、もしどこかでこのタグを拾ったり、亡くなっている方がこのタグを所持していた場合はギルドへそのタグを届けていただきたいのです。ご家族の方への報告の義務がありますので。」
「…覚えておこう。」
「はい、説明は以上です。もう依頼も受けていただいて構いませんよ。最初は安全な依頼を受けてシステムに慣れていってくださいね。」
そう言うと受付嬢は窓口の方へ戻っていった。
タグにはチェーンが付いていたので、そのまま首にかけることにする。
「この後はどうするのだ?」
「お前本読んでたんじゃないのかよ。」
「本くらい、読みながらでも話は聞けるぞ。」
聞いていたのか?
自分の分のタグを戸惑うことなく首にかける辺り、本当に聞いていたのかもしれない。
「この後そのまま適当な依頼を受けるつもりだ。早々に金を手に入れて王都へ向かいたいからな。」
そう言って俺は席を立つ。
依頼掲示板の前に立ち、張り出されている依頼書を読んでいく。
内容と報酬…。
バランスからしてこれだな。
俺は一枚の依頼書を掲示板から剥ぎ取ると、そのまま依頼受付窓口へと向かう。
そこには持ち場が変わったのかハンター登録申請時の受付嬢が居た。
「この依頼を受けたい。」
「早速活動されるんですね。どれ………っ!?【竜種】討伐!!?? な、なに考えてるんですかー!!!!」
受付嬢が目いっぱい大声を出すので周囲の注目を浴びてしまう。
そんな変な依頼受けようとしてたっけ?
俺は首をかしげる。