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159/218

159.半妖の少女、魔族を狩る。(嵐の魔神、考察する。)

ボクの武器は弓矢と短剣だ。

短剣は近接戦闘を強いられた時用に準備してはいるが、正直得意とは言えない。

【短剣技】なんかの剣技系の才のないボクはレクシアさんのように剣を扱えるわけではないので当てにはできない。

一方の弓矢に関してはずっと訓練を続けているので一般的な狩人位の腕はあると思う。

ただ、おじちゃんの風魔法の補助がないと飛距離も威力も頼りない。

野生動物や弱い魔物位なら一人でもなんとかなるけど、魔族相手にまともに当たって通用するレベルではないだろう。

だから取れる戦術は基本一つ。

狙撃による奇襲で圧倒的優位な状況を作ること。

自分にできることを再確認して一人頷く。


森の中を魔族の視界に入らないように、かつ出来るだけ音を立てないように進む。

自然と魔族の背後を取る形になる。


既に弓矢の射程内に入っている。

一旦周囲に人気が無いかを再確認する。


うん。近くに他の魔族はいなさそうだ。


ボクは呼吸を整え、素早く矢をつがえる。

狙いは首。

出来れば最初の一撃で声が出せないようにさせたい。


狙いを定めて矢を放つ。

ヒュンという風切り音を残して矢は飛び、狙い通り魔族の首を貫いた。


「がぶ!?」


魔族の声にならない声が聞こえる。


一の矢を放った後、二の矢をつがえて走り出していたボクは、走りながら(・・・・・)矢を放つ。

二の矢、魔族の右大腿を貫く。

魔族が漸くこちらを振り向く。

三の矢、魔族の左大腿を貫く。

何か魔法を放つつもりだろうか、魔族が右手を上げようとしている。

四の矢、魔族の右肩を貫く。

魔族の動きが止まる。

五の矢、魔族の左肩を貫く。


魔族は奇襲から碌に抵抗もせず両手両足を封じられる。


いや、腐っても魔族だ。

この程度ならまだ両手足は動かせるのかもしれない。


念のため両腕と両足にもう一本ずつ矢を射っておく。

魔族は立っていられなくなったのか仰向けに倒れこんだ。

その顔は蒼白で、口からは少なくない量の血が吐かれている。


ボクは腰から短剣を抜き、慎重に魔族に近づく。


「これから僕の聞くことに…って死んでる?」


魔族を見ると、その目は見開かれたまま光を失っていた。


「…死んでおるな。最初の喉への一撃が致命傷だった様だ。」


おじちゃんがボクの右肩に止まる。

気を使ってくれているらしく重さは全く感じない。


「…情報、聞き出せなかったね。」


「いや、そうでもない。」


「??」


ボクは少し考える。

この魔族から得られる情報。

一人で人族領へ(・・・・・・・)乗り込もうとしていた(・・・・・・・・・・)この魔族。


「そうか。まだ魔族軍の統率は取れていない。」


「そうだな。まだ目的の魔族はこの要塞には来てないと言う事だろう。」


「確かに。じゃあ後始末してさっさと要塞の魔族領側へ移動しよう。」


そう言ってボクは魔族の死体から矢を一本一本抜いて状態を確かめる。

幸い、全ての矢が再利用可能そうだ。


次は魔族の死体。

この魔族が要塞から人族領への移動途中だったことを考えると、他の魔族がここを通ることも考えられる。

ボクは魔族の死体を引きずって茂みへと移動する。

本当に隠そうと思えば地中に埋めたりするべきだろうけど、それでは時間が掛かりすぎる。

それに、ここから大きく移動する予定のボクからすればこいつの死体が見つかったとしてもそこまで大きなデメリットにはならない。

念のため茂みに死体を押し込んで、落ち葉などでそれを見えにくくしておく。

地面に垂れた血は上から土をかけて見えないようにした。


匂いに敏感な奴が居たらアウトだろうけど、とりあえずはこんなところだろう。

ボクは荷物のチェックを素早く行い、その場を後にした。





◇◇◇◇◇





我は主の命によりレベッカの命が危険に晒された時には助けに入るつもりであった。

否、大きな怪我をしそうであれば助けに入るつもりであったので、主の命通りではなかったな。

現世に受肉し、主に忠誠を誓った後からずっとこの少女の護衛を務めてきた。

正直、情が沸いていないとは言えない。


だが、その心配は無用だった。

この少女は魔族相手に一切の戸惑いを見せることなく、容赦なく攻撃を加えていった。

決して自棄に走ってのものではない、確かな殺意を持ち、冷静に状況を読みながら自身への危険を排除するように動いていた。

この様子なら少なくとも宿敵以外の魔族に後れを取ることはないだろう。


この少女の強さはそこらの魔族で太刀打ちできるものではない。

主と自称主の弟子、この二人に稽古をつけられているのが大きい。

特に魔族どころか魔神である我ですら足元にも及ばない主が鍛えているのだから当然かもしれないが…。

ついでに言えば我のサポートにより理想状態の動きを感覚的に掴めているのも助けになっているはずだ。


本人はそう思っていないようだが、短剣技だけでもそこらの魔族なら1対1で十分対応できるだろう。

ましてや彼女が得意とする弓矢での戦闘は遠距離の狙撃に、中距離は機動戦と可能で穴がない。


これはもしかしたら、我のサポートは必要ないかもしれんな。


森の中を慎重に、確実に進んでいくレベッカを見ながら我はその後を追って飛んでいく。

パズズさんは完全におじちゃん化してますね。

超越者や魔神が放って置けない少女と言うのはある意味最強ですね。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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