表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

157/218

157.踏破者、剣姫に事情を聴く。

城塞都市モールドの領主邸前。

そこへ【幻竜王(バハムート)】に乗ったまま着陸する。

街は突然現れた【竜種(ドラゴン)】が街中へと降り立つという光景に一般市民が混乱している。

そしてそれは一般市民だけでなく、憲兵団や国防軍と言った兵士たちも一緒だった。

本来であれば都市の外に降りて徒歩とするべきなのだろうが、非常時なので仕方ない。


すぐに駆け付けた国防軍は【幻竜王(バハムート)】に乗った俺を見て安堵する。

比較的近くに居た一般市民も【竜種(ドラゴン)】に騎乗しているのがティア王女と分かると落ち着きを取り戻していく。


俺はその様子を確認した後【幻竜王(バハムート)】から飛び降り、駆けつけた国防軍の兵士に話しかける。


「任務ご苦労。騒がせて悪かったな。レクシアがどこに居るかわかるか?」


問いかけられた兵士の一人が姿勢を正す。


「はっ!!レクシア様は国防軍拠点におられます!!」


「よし、私はこのまま拠点へ向かう。君達には混乱した一般市民に事情を説明し、事態の収拾をはかってもらいたい。頼めるか?」


「はっ!!承知しました!!即座に取り掛かります。」


そう言うと国防軍の兵士はすぐに分担を決めると方々へと散っていった。


「凄い統率力ですわね…。なんだかジーク殿が死ねと命ずれば死んでしまいそうな危うさを秘めているように見えましたわ。」


幻竜王(バハムート)】の背から降りてきたティアが話しかけてくる。

見ると表情は取り繕っているが、足が震えていた。


わずか5,6分の時間だったが、高高度を飛行するのは相当な負荷だったようだ。

空では凄い悲鳴を上げていたからな。


だが、意識を保ったっだけまだマシだろう。

ラマシュトゥが抱えているティアの侍女は【幻竜王(バハムート)】が飛び上がった瞬間気絶してしまったのだから。


「無理せんでいいぞ。それと兵士たちはしっかり規律を守らせるようにして少し手ほどきしただけだ。元々軍人気質だったのだろう。」


「いや、あれは狂信者に通ずるものを持っている気がしますわ。」


狂信者?

その身一つで戦場に立つ戦士が何を信奉するというのだろうか。

ティアの感覚も良く分からんな。


「俺はシファと国防軍の拠点へ行く。ティアは休んでてくれ。」


「いえ、私も行きますわ。通信役のラマさんがいた方が良いでしょう?」


それは確かにそうだが…。

いや、その生まれた直後の小鹿のような足でどうやって行くんだよ。


仕方ない。

少し恥ずかしいだろうが我慢してもらおう。


領主邸から出てきた侍女に気絶した侍女を渡したラマシュトゥが戻ってくる。


「ラマシュトゥ。ティアを抱えてやってくれ。そんでついてこい。」


「承知した。」


そう言うとラマシュトゥはティアを抱え上げる。

見事なお姫様抱っこだ。

フリフリドレスの(見た目)幼女にお姫様抱っこされているお姫様が街を駆ける…。

変な噂になりそうだ。


「ちょっと、ジーク殿?これは流石に恥ずかしいというか…。」


「シファ、ラマシュトゥ。行くぞ。」


そう言って俺たちは駆け出す。


「私の話をきいてくださいましー!!」


領主邸前にティアの絶叫がこだました。




◇◇◇◇◇




国防軍モールド支部拠点。

その執務室にレクシアはいた。

俺達が執務室に入ると一瞬その表情を明るくさせたが、すぐに俯いてしまった。


これは相当ショックを受けているようだな。

普段ポジティブな彼女からは中々想像できない姿だ。


「お勤めご苦労。状況は聞いているが、何があったか教えてくれるか?」


俺は器用な人間ではないので下手な慰めなどは行わずに聞きたいことを直球で聞く。

横でティアが何か言いたげだったが、口には出さなかった。


「はい。発端は今朝早くに魔族が襲撃してきたことです。」


レクシアは顔を上げて経緯を説明し始める。


どうも今朝は大規模な魔族軍の侵攻があったようだ。

その数は150。

今の国防軍なら撃退自体は可能だろう。

だが、念のため朝の訓練中だったレクシアとレベッカも戦線に立ったそうだ。

…レベッカはいつの間にか国防軍の訓練にも出るようになっていて彼らとの仲も良好だったということもあったらしい。


結果、国防軍に多数の負傷書を出しながらも死者無しで魔族の撃退には成功したとのこと。

ただ、最後の指揮を執っていた魔族に止めを刺す際にその魔族が放った言葉が事態を急変させた。

その魔族はこういったそうだ。

「お前らがいい気になれるのも今のうちだ…。ベリル様が来て下されば…。今の無能な指揮者が変わればこんな都市など簡単に陥落させてくれるだろう。」


「ベリル…。その名には聞き覚えがあるな。」


「…レベッカちゃんはその名を聞いた途端豹変したんだ。一人で魔族領へ向かうと言い出してな。意味が解らず止めようとしたが…まぁ突き放されたんだ。」


なるほど、レクシアが落ち込んでいるのは妹のように仲の良かったレベッカから拒絶されたからか。

彼女の過去を知らなければショックを受けるのも頷ける。


「魔族のベリル…。レベッカちゃんと関係があるんですか?」


そうと問いかけてくるティアもレベッカの事情は詳しく話していない。

まぁこのメンツなら話しても問題ないだろう。

特にレクシアはちゃんと事情を理解しないとモールドに置いておいてもいざという時の戦力にならなさそうな感じだ。


「レベッカは住んでいた村を魔族に滅ぼされた過去があってな。その魔族がベリルと名乗っていたそうだ。」


レクシアもティアも驚く。


「レベッカの中にはその魔族に対する復讐心が芽生えていてな、今回は自分の力でその目的を達したいんだろう。」


「…元々奴隷として売られていた子とは聞いていたが、その前にそんなことが…。」


「その過去を聞いた時の話からすると、レベッカは奴隷商と言うよりは魔族の方にこそ復讐したかったようだな。」


「…師匠はどうするのだ?彼女が独力での復讐を望んでいるとして…。」


「俺は保護者だからな。出来るだけ彼女の意志は汲むが、死なせるわけにはいかんさ。」


そう言って笑った。

落ち込んでいるレクシアさんはレアですね。

単細胞キャラですが最初の方にもあったように一部繊細さも持ち合わせているところも彼女の魅力ではないでしょうか。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ