表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/218

151.踏破者、湖に潜む魔物の正体を考察する。

「先生、【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】と言うのはどういう魔物なのですか?」


そう疑問を口にしたのはティアだ。

彼女は王室育ちの為、魔物に関する知識は一般レベル程度だ。

しかも大罪竜となれば非常に強力なものの、ごく稀にしか出現しない類のものであるので彼女が知らなくても不思議ではない。


ティアに質問された学者先生も同じことを思ったのだろう。

ティアにその魔物について説明する。


「【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】と言うのは魔物の中でもトップクラスの非常に強力な魔物のうちの一つです。7大罪の名を冠されている竜の一種ですね。これらの竜種は、7大竜とか大罪竜と言うような呼び方をされており、全てがSランクに認定されています。」


「なるほど。それは初耳ですが、…Sランクの魔物ですか…。」


ティアが学者先生の説明に聞き入る。


「【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】は上半身が竜、下半身が無数の蛇で出来た魔物と言われています。Aランクの魔物に【蛇足魔女(スキュラ)】という魔物が居ますが、その上半身が竜化したものとイメージすれば分かりやすいかもしれません。実際、その【蛇足魔女(スキュラ)】の変異種ではないかと言う説が有力です。」


「それは…少し考えただけでも禍々しい姿をしていますわね。」


そう言ってティアは震える。

まぁあれは【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】と言うよりかは爬虫類が無数に生えている姿を想像してのものだろうがな。


「ええ、そして【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】は自身の下半身に生えている蛇を体から切り離し、使い魔のように指示して行動させることが出来ると言われています。まるで蛇に好かれ、その行動を意のままに操る王のように。…おそらくですが、この湖に生息している【海洋巨蛇(シーサーペント)】はすべてその【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】の触手であると思います。」


「…先生がそう思われる根拠をお聞きしても良いですか?」


そう、俺もそれが気になっていた。

海洋巨蛇(シーサーペント)】ではなく【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】だと考える根拠。


「脳がなかったんです。」


「はい?」


「先ほどの検体ですが、実はもう活動を停止しています。最初は衰弱により死んだものと思っていたのですが、食料を与えようとしても興味もなさそうな感じだったのが気になっていまして…。活動停止後に解剖してみたんです。」


「か、解剖ですか?」


横目でティアを見ると青い顔をしている。

爬虫類×解剖と言うショッキングな絵をイメージしてしまったのかもしれない。


「ええ、そしたら、脳がどこにもなかったんです。脳だけじゃありません、内臓全てが存在しなかったんです。あれ(・・)は、ただの肉の塊でした。そこでこの魔物は【海洋巨蛇(シーサーペント)】ではないという事が判明し、このような事象を引き起こせる存在として【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】だと推測しました。」


「では、【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】であるというのはまだ推測なのですね?」


ティアはどこか安堵したかのように言う。

おそらくだが、自身の領地で強大な魔物が出現したという状況を信じたくないと無意識で思っているのだろう。


もし大罪竜が出現したとなれば放って置くわけにもいかない。

Sランク魔物はそれだけでダンジョンの発生源にすらなってしまう事もあるのだ。

領地経営に乗り出し、人手が足りない今の状況では厄介ごとが増えるのは好ましいことではないだろう。


だが、俺は残酷な現実を突きつけなければならない。


「状況から考えると先生の言ってることは真実だと思うぞ。」


ティアが若干顔を曇らせる。


「もともとおかしいとは思っていたんだ。Aランクの魔物が群れを作るという今回の事象がな。しかも、そう考えると他にも説明のつかない行動を奴らは取っているんだ。船や人に対して群がるように攻撃を仕掛けてくることもそうだし、さっきここで見た仲間の死骸を回収していったこともそうだ。これが命令されての行動であったとすれば辻褄は合う。」


俺の考えを聞いてティアはがっくりと肩を落とす。


「反論の余地がありませんわね。では、この湖にSランクの魔物が居るとして、放置しても良いと思いますか?」


それは皆に向けた問だったのだろうが、その質問の答えを考えてしまった俺は言葉に詰まる。

一瞬の静寂の後、学者先生が話し始める。


「心中お察ししますが、放置は非常にリスクが高いと言わざるを得ません。理由は2つ。一つはその魔物を核としたダンジョンが生成されてしまう可能性があること。もう一つはその魔物がいつ陸に上がって(・・・・・・)くるか分からないということです。」


そうなのだ。

仮に【色欲竜(ラスト・ドラゴン)】が居るとして、いつまでこの湖に留まってくれるか分からないのだ。

先程知った事実だが、蛇は陸上でも活動(・・・・・・)できる(・・・)


「…先ほどジーク殿が殺害した触手の死骸を持ち帰っていきましたが、陸上に脅威が居ると判明して攻め上がってくることも考えられますわね。」


ん?


「そうなると、ジーク殿のせいでこの町の市民が襲われることになってしまますわ。」


んん??


「ちょっと待て?俺のせいでか?」


俺の質問にティアはにっこりと微笑む。


私は(・・)そう思っているわけではありませんが、この町の人たち(・・・・・・・)は『よそ者が湖の魔物を刺激したために襲われることになった』と考える人が出て来てもおかしくないですわね。…討伐に協力していただけますかしら。」


元より協力はするつもりだったが、えげつない追い込み方してくるなこのお姫様は。

大体おれは王族専属騎士(ロイヤルナイト)なんだから間接的にお前の責任でもあるだろうが。


俺は大きくため息をついた。

3匹目のSランク魔物です。

今回は数で押してくるタイプのようですね。

ジークさんたちがどう立ち回るか…

どうとでもなりそうですね。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ