146.超越者、新ギルドメンバーと会う。
領主邸で有識者による会談が行われた数日後、遂にその日が来た。
「本日はご挨拶に伺ったにゃ!!」
「何でお前がいるんだよ。」
俺の第一声はつれないものとなってしまった。
ハンターギルドのモールド支部再設営に際し、領主邸へ挨拶に来たのは王都東ギルドのギルドマスター、猫人のフェリスだった。
喋る口調からお子様のようで、俺もついついそう接してしまうが、一応俺より年上の28歳と言う情報がある。
「今回ハンターギルド設営の事務手続きやってたのがうちなんだにゃ!!本部への申請から人員の確保まで走り回ったんだからちょっとはねぎらうにゃ!!」
「おう。それは悪かったな。礼を言うぞ。」
一度撤退を余儀なくされた都市への支部再設営がスムーズに行ったなと思ったらそう言う事だったのか。
これは普通に感謝だ。
「ふふふ。東ギルド出身のAランクハンターが要請してきたことだからにゃ。協力するのは当然にゃ!!」
無い胸を張るフェリス。
うん、どう見てもお子様だ。
だが、そうやって一ハンターに協力を惜しまない当たり本当に良いマスターなんだなとも思う。
そして気になる点がもう一つ。
「しかし、なんでここにライラさんが居るんだ?」
そう、フェリスの座るソファの後ろに控えているのはコウナードで受付嬢をしていたライラだ。
因みにもう一人、コウナードを拠点にするAランクハンターのエリオもいる。
エリオはハンターだしいろいろな所へと行くこともあるだろう。
今回もおそらく護衛か何かだろうからそこまで疑問はないが…。
「お久しぶりですジークさん。先日、約束通り王都への移籍を果たしたのですが、何でもジークさんはティア王女殿下の王族専属騎士としてこのシュタイン領が活動の中心になるというじゃないですか。なので今回の支部再設営に手を上げたのです。」
うん?約束ってなんだ?
まぁ知っている人がギルド運営に携わってくれるというのは正直有難い。
「そうだったのか。歓迎しますよライラさん。」
「はい、これからもよろしくお願いします。」
若干頬を紅潮させながら頷くライラさん。
隣にいるシファから若干睨まれているような気がするが気のせいだろう。
「ちなみにライラちゃんはモールド支部のギルドマスターを務めてもらうにゃ。元々優秀な子がいるとサイモンさんに聞いてた子だからにゃ。せっかく王都に来てくれたと思った矢先にこうやって外に出て行っちゃうのはうちとしては残念な気もするけど仕方ないにゃ。本当にお兄さんは罪作りにゃ。」
どういう意味だ?
俺は首をかしげる。
コホン
ここまで黙って話を聞いていたティアが咳払いする。
「フェリスさん、此度のギルド設営の件尽力いただきましてありがとうございます。ライラさんもこれからよろしくお願いいたしますわ。特にライラさんは私と利害が一致していそうですので仲良くなれると思いますわ。」
「おお…。なんだか王女様からヤバい雰囲気を感じるにゃ。魔境に踏み入った気分だにゃ。深入りは避けるにゃ。」
フェリスは意外と勘が鋭いな。
俺も同じ空気をティアから感じた所だ。
「良いでしょう。受けて立つわ。」
何をですかシファさん!?
「なんだか随分込み入ってるな『名無し』は…。」
なんだか呆れたように話すのはエリオだ。
厳密には『名無し』にはもう一人メンバーが居るのだが、居ると話がややこしくなる奴なので居なくて良かった。
本当に。
「あ、俺もしばらくはここを中心に活動しようと思ってるんだ。よろしくな。」
思ってもいなかったことを言うエリオ。
「そうなのか?それはありがたい。よろしくエリオ。」
活動するハンターの数が増えれば都市としての予備戦力が増えることになるのでありがたい。
エリオは名前も通っているので追従するハンターにも期待が出来るな。
「エリオちんはライラちゃん一筋だからにゃ。振られても付きまとうストーカーにゃ。」
「余計なことは言わんでいい。」
なるほど。
そう言う事情だったか。
「いや、だが想い人の近くに居なければアピールも出来んだろ?積極的なのは悪いことではないだろ。俺は応援するぞエリオ。」
俺がそう言った瞬間、場が凍り付いた。
え?なに?
その場にいる全員が俺を信じられないというような目で見ている。
何という居心地の悪さ。
今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られる。
なんとかこの空気を変えなければ…。
「そ、そう言えば俺たちの二つ名をフェリスが決めるとか言ってたよな?もう決まったのか?」
俺はこの中で唯一利害関係が発生していなさそうなフェリスに何とか絞り出した質問を繰り出し、状況の好転を狙う。
質問されたフェリスもその意図を察知したようだ。
若干テンパりながらも答えてくれた。
「そ、そうにゃ!!それもまだ伝えてなかったにゃ!!ちょうど(?)良いから伝えて置くにゃ!!」
「ほ、ほう!!どんな二つ名なんだ?聞くのが楽しみだなぁ!!」
「お兄さんの方が【才越】、お姉さんの方が【聖癒】にしたにゃ!!お兄さんの方はそのまま才能という素養を超越したものと言う意味で、お姉さんの方は光魔法を扱うからにゃ!!本当は【聖女】を押してたんだけど教会の反対があって断念したんだにゃ!!」
「良い名前じゃないか!!そう思うだろシファ!?」
俺は皆を振り返る。
そこには変わらず冷たい目で俺を見る皆の姿があった。
さぁライラさん参戦してきました!!
彼女の行動力の高さにも驚きです。
今後の波乱にも期待ください。
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