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141/218

141.シュタイン領元領主、決意を新たにする。

あの日から城塞都市モールドはその様相を一変させた。


実際何か変わったとすれば国防軍だけだろう。

防壁の上を巡回する兵士も復活し、壁外の巡回もきっちりとした班単位で行われている。

防衛体制がしっかりしたからか街の雰囲気は明るくなった。

いや、それも往来する兵士たちがそれまでの横暴な態度を改め、街中を謝罪して回ったことも大きいだろう。

言葉だけでなく、街の清掃活動に積極的に取り組むなどの態度でもそれを現していた。

それ以来兵士たちは市民と挨拶を交わしながら通りを往来している。


私がこの地を治めているときに実現したくても出来なかった光景だ。

今思えば私は領地を治める器ではなかったのだ。

魔族との交戦が続いているこの都市特有の事情に飲まれ、身内の安全を最優先し領地の発展・繁栄を切り捨てた。

私のその判断がネレウス将軍、いや、国防軍全体をつけあがらせる要因となったのだと今ならわかる。


それに対し、王女殿下の判断は早く、適切だった。

勿論あの規格外の王族専属騎士(ロイヤルナイト)の存在があってこそだろうが、彼女は領地の安全と市民の安寧の為に即日行動を起こした。

そして戦う力のない身であの将軍と相対し、しっかりと意見をぶつけたのだ。

それが私はにはできなかった。

彼女はその器だったのだ。


しかも私を街の現状を知る人間として役職に採り立ててくれた。

私財を費やした領地経営を行ったことはしっかり叱責されたが…。


街の現状が改善されたことで市民の流出も止まった。

これからは領地を発展させるためにどうやって人を呼ぶかという事を考えなければならないだろう。

人を引き付ける魅力をどうやって出すか。

私も知恵を絞る必要がある。


そいえば人を集めるという話とは違うのだろうが、近々ハンターギルドの支部がこの町に復活するらしい。

何でもかの王族専属騎士(ロイヤルナイト)、ジーク殿は高ランクのハンターでもあるらしく、王都のハンターギルドへ話を通してくれたらしい。

本当あの人はいったい何者なのだろうか。

ハンターギルドが復活すれば魔物素材のような一般市民では入手の難しい材料も手に入り、それを元にした用品も出回るようになる。

都市の周囲の魔物の間引きもできるようになるだろうし、そうなれば国防軍はなおのこと魔族に集中できるようになる。


そういったメリットの反面、中にはガラの悪いハンターもいるかもしれない。

今のうちに憲兵の方にも力を入れなければならないな。


そんなことを考えながら領主邸へと足を運ぶ。


と、その領主邸からティア王女殿下がフリルドレスの女性とともに出てくるところだった。


「おはようございますティア王女殿下。どこかへ出かけられるんですか?」


声をかけたところでティア王女殿下は私に気が付く。


「あら。おはようございますルーベル殿。今から少し街を見て回ろうかと思いまして。」


「護衛もつけずにですか!?ランドール殿の姿が見えないようですが…。」


私が心配の意を告げる。

しかし、ティア王女殿下は若干困ったような仕草をする。


「ランドールは国防軍の拠点で兵士に混ざって鍛錬中ですわ。今のままではいけないと考えているようですわね。でも護衛の件は大丈夫ですわ。彼女が私の護衛です。」


そう言って隣に立つフリルドレスの少女を手で指し示す。


…この少女が??

私は一瞬ティア王女殿下が何を言っているか分からなかった。

その顔を見ればからかわれているのではないことは分かる。


私はもう一度フリルドレスの少女を見る。

武器の携帯も防具の装備もない。

何だったら文官の私でも難なく圧倒出来るとすら思える。


と、そのとき。

フリルドレスの少女が消えた(・・・)


「これで実力は示せるかのぅ?」


すぐ背後から聞こえたその声は底冷えするほどの冷気を伴っていた。

同時に背に当てられた手がまるで真剣を当てられているように錯覚する。


「彼女はジークの配下の女性です。実力的には(パズズに次いで)2番目でしょうか?彼女がいればめったなことはないでしょう。」


「なるほど…。そこまでの(レクシア殿に次ぐ)実力者には見えませんでした。申し訳ありません。」


「分かればよい。」


次の瞬間にはフリルドレスの少女はティア王女殿下の横に戻っている。


…全く見えない。

何かのスキルを使っているのだろうが、私のレベルでは何も分からないほどですか…。


「では行って来ますわ。戻ったら少し聞きたいことがありますので資料があればまとめておいてほしいのですが宜しいですか?」


「ええ。どういった内容ですか?」


「このシュタイン領にある資源についてですわ。鉱山なんかの天然資源やダンジョンを利用できている物から利用できていないものまで。外資獲得の手段として産業を起こせるものがあるか確認したいのです。」


「なるほど…。分かりました。まとめておきます。」


「お願いしますわ。」


そう言ってティア王女殿下は街へと消えていった。


新しい産業か…。

私が領主をしているときには思いつく事すらなかった。

やはり彼女はすごい。

私もしっかりサポートせねば。


私はその足を資料庫に向けた。

元領主になったルーベルさん、再就職していました。

これまで散財した分もしっかり働いて稼いでほしいですね。

勿論、使ったお金は戻ってはきません。

ご利用は計画的に。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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