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135/218

135.踏破者、城塞都市モールドの現状を知る。

「…その話は本当ですか?」


ティアは少し声のトーンを落として言う。

今のやり取りだけではルーベル男爵が不正を働いていて、それを国防軍に知られてしまったという可能性もある。

だが、そういった後ろ暗い話ではなかった。


「この城塞都市モールドの近くには小さな村がいくつかあるのですが、国防軍の庇護下にあります。…実は、私の娘がその村の一つで暮らしていまして、それをネレウス将軍に知られているのです。」


「村を魔物に襲わせるというような脅しを?」


「その書類に書いてある内容と同じようなことを言われています。『国防軍の戦力を村に回す余力がなくなる』と。」


ルーベル男爵は苦渋の表情でそう説明する。


そう言う状況なら私財を投げうったことにも納得だな。

本来ならすぐにでも粛清に動きたいところだが、まだ聞かねばならんことがある。


「いくつか問題があると言っていたが、他にも国防軍関係で問題が発生しているんだな?」


俺は半ば決まりきったことと言う論調で話を促す。

ルーベル男爵はそれに頷く。


「次に問題となっているのは治安についてです。」


治安と来たか。

国防軍関係で治安の悪化と言われるとだいたいどういう事が起っているか想像がついてしまうな。


「この都市の治安は主に憲兵団という組織が行っているのですが…国防軍の不祥事に対して取り締まりが出来ない状態にまでなってしまっています。『俺達を捕まえるってことはこの都市には国防軍は要らないってことだよな?この都市が魔物に襲われてお前は責任が取れるのか?』と言ったような事を言って憲兵団を威圧するそうです。ひどいものでは複数の国防軍兵士に憲兵団員が暴行を受けると言ったケースもありました。」


その現状を聞いて絶句するティア。


「そう言った下等な行動に出るのは組織の下っ端と相場は決まっているが、ネレウス将軍とやらに苦情を入れたりはしなかったのか?流石に一般人に被害が出るようなことについては国防軍指揮官として望むところではないかと思うが。」


俺の言葉に首を横に振るルーベル男爵。


「もちろん将軍へは何度か苦情を入れていますが、返ってくる答えは決まっていて『憲兵団が弱いことが問題だ。』と言うものです。…最近は国防軍の規律もあってないようなものとなっており、都市内で犯罪まがいの行為に及ぶ兵士も現れる始末です。」


「腐ってるな。」


「しかし彼らが居なければこの城塞都市はあっという間に魔族に滅ぼされてしまうでしょう。そして魔族の攻勢が強まっていることもまた事実なのです。」


「しかしそれでは魔族に襲われるか国防軍の統治下で不遇な扱いを受けるかの不幸な選択肢しか残されないことになりますわ。一般市民がこの状況に憂いて都市を離れるようなことも出てくるのではないですか?」


「おっしゃる通りです。それが次の問題なのですが、最近一般人の他の町への流出の傾向が強まってきています。…このままではそう遠くないうちに都市としての機能を失うかもしれません。」


ティアはそれを聞いて頭を押さえて考え込んでしまう。

気持ちは俺も同じだ。

もうこの都市は国防軍と言うがんに侵され、寿命を迎えようとしているようにしか見えない。


「まずはその国防軍の行き過ぎた行為をどうにかせねばならんな。」


「それはそうなのですが…。いったいどうすればいいのか…。もはや彼らには良識と言う概念は存在しません。」


「そうだな。聞いている限りそいつらには調教が必要だ。腐った性根を叩き直さなければならん。」


ここでルーベル男爵は悔しそうに首を振る。


「しかし、どうすればいいのか…。」


「ハンターギルドに協力の要請はしたのか?国防の依頼を発行してハンターを派遣してもらえれば国防軍の大義名分は失われることになるが。」


「…この都市にハンターギルドはありません。半年ほど前に国防軍の圧力を受けて撤退しました。」


撤退?

国をまたぐ国際組織であるハンターギルドに撤退させるほどの圧力をかけたというのか?

そんなことをすれば今後この都市にはハンターが寄り付かなくなってしまう。


ハンターは貴族からの高額依頼も受けるが、一般市民の困りごとやお使いと言ったような依頼も受ける。

いわば何でも屋だ。

それがないとなると一般市民の生活の質は向上しなくなる。


しかもハンターギルドの支部は設置された土地の安全の確保にも貢献している。

周囲の魔物の間引きは日常的に行われるし、大繁殖と言った異常にもいち早く対応してるのだ。


魔族にばかり目が行っている国防軍がそう言った都市の周りに潜在的にある脅威に対応できているとは考えにくい。


これはもう無理だな。


「ルーベル男爵。ネレウス将軍の元へ向かうぞ。俺が奴らの調教を請け負う。」


「今から?たった数人でですか?彼らはいざとなれば武力も行使してくるかもしれません。無謀ではないですか?」


「その点は心配要りませんわ。ですがジーク。人死には避けて下さいよ?」


「心配するな。今後の事を考えれば駆逐ではなく調教が必要だという事は俺も理解している。」


俺とティアのやり取りを不理解できないものを見るような顔で追うルーベル男爵。


「心配するな。今から向かうと先方へ連絡を入れてくれるか?」


「は、はい!!」


そう言ってルーベル男爵は慌てて部屋を出て行った。


さぁ、屑を調教しに行こう。

次回ネレウス将軍と相対します。

ジークさんがどんな懲罰を与えるかが見所ですね!!

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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