128.踏破者、第二王女に王戦の話を聞く①
その日、ティアに呼び出された俺たちは王城へと来ていた。
話の内容はだいたい分かっていたのでレクシアとレベッカも来ている。
レクシアはオリヴィア王女に合わせる顔がないと気まずそうにしていたが、幸い鉢合わせることはなかった。
「それで?王戦の概要が発表されたって?」
呼び出された理由これだろう。
先日王国全体に発表があったばかりだ。
「ええ、だいたいの内容は既に発表されていますので知っているかと思いますが…。」
「いや、知らんな。」
「え?」
号外なども出ていたが興味のないことに時間は費やさない主義だ。
ここ最近はレクシアとレベッカの戦闘力強化に忙しかったしな。
だがそのおかげで2人ともメキメキと実力をつけてきている。
「少しは興味を持ってください。あなた方の生活にも関わることなのですから。」
「ん?俺達も王都を離れるのか?」
「一応、王戦では必ずしも候補者が指定された領地を直接統治する必要はありません。政治に強い有能な部下がいればその部下に領地経営させても問題はありません。ですが、私の部下にそう言った才覚のものはおりませんので私が領主として領地経営を行っていくつもりですわ。」
「なるほど。ということはティアはその領地へ引っ越すことになるのか。」
「ええ、そのつもりです。まぁ王都とシュタイン領を往復する生活になるでしょうね。そしてジークさん方にも一緒にシュタイン領へと来てほしいのです。」
「まぁ断る理由もないが…。」
「シファお姉さまと離れて生活なんて嫌ですわ。向こうでは王族専属騎士の皆様方も領主の館で生活することになりますし、一つ屋根の下…何か間違いがあってもおかしくありませんわ!!」
いきなりテンションを上げるティア。
なんだこれ?
初めての一人暮らしに異性を連れ込んだりとかの想像を膨らませる思春期の男みたいな顔をしているぞ?
横に居るティアを見ると少し呆れたような顔をしている。
「ティア、言ったはずよ?私は今ジークと24時間一緒に居るの。寝る時も一緒よ。あなたの相手をする気はないわ。」
「おいおい、それは事実だがそう言う話を少女がいる前で言うもんじゃない。」
そう言ってレベッカを見ると、レクシアが後ろから両耳を覆うように手を当てていた。
そしてすごく何か言いたそうな顔をしている。
「ティア王女殿下。師匠と共にある時間は私の方が長い。ティア殿に後れは取っているが、第二夫人の席を譲るつもりは無いぞ!!」
言うのかよ!!
王家への忠誠はどうした!?
ってかなんだよ第二夫人って!?
「なっ!?【剣姫】であるあなたまでお姉さまを狙っていますの!?」
話噛み合ってねぇだろ!?
気づけよ馬鹿2人!!
あと今【剣姫】関係ねぇ!!
「ん?」「え?」
「なんだ?姫様はティア殿に気があるのか?」
「そう言うあなたはジーク殿に?」
あ、気付いた。
「という事は私がティアお姉様と一緒になって…」
「私が師匠と一緒になれば…」
「全てうまくいくわ!!」「全てうまくいくぞ!!」
利害が一致しちゃった!!
何その何十年来の友みたいな連帯感!!
「受けて立つわ。ジークは渡さない…。」
あとティアさん!?マジの殺気が出てるから!!
流石に王族殺しちゃったら王都に住めなくなるからね!?
「みんな一緒になればよいではないか。特定の相手とだけとか効率悪いと思わんのか?」
そう言って横合いから声をかけてきたのはラマシュトゥだ。
今はフリフリのドレスを着た少女の姿で、ティアのベッドに腰かけている。
「強い者との子孫を残そうとするのは本能的に当然のことじゃ。主殿のように突き抜けた存在にもなればそれこそいい寄ってくる女なぞいくらでも居るであろう?それを特定の相手とだけなぞ残せる子孫の数も減るし人族全体で見ても数が増えにくい。それこそ一夫多妻?じゃったかの?という制度を用いるのが効率が良いではないか。なぜそうせん?」
「ラマシュトゥ、人族には倫理観と言うものがあるんだよ…。というか魔人族ってそんな感じなのか?」
「我らはそう言う所は割と奔放じゃな。妾の旦那のパズズも何十人と妻がおるぞ?」
「え?そうなの?」
「つまり私が第二夫人になってティア王女殿下が第三夫人になれば万事解決という事だな!!…あれ?でもティア王女殿下はシファ殿に気があるので第二夫…?なんて言うんだ?あ、でも女性だから…。」
レクシア、頭悪いんだから入ってくるなよ…。
マジで場が混乱してきた。
「みんな何を話してるんですか?」
透き通った純水のような声は今も耳を塞がれているレベッカのものだ。
その声が発せられた瞬間、醜い?言い争いをしていた大人たちがハッとする。
レクシアがそっと耳を塞いでいた手を放す。
「喧嘩してるんですか?怖い顔をしていましたけど…。」
皆その言葉にお互いの顔を見合わせる。
そして全員がにこやかな笑顔を作る。
「レベッカちゃん。少し大人の話をしていただけで喧嘩はしていませんわ。」
「そうだぞ。ここに居るのは皆仲間だからな。」
「そうですよね。良かったです。」
あれだけ混乱していた場が一瞬で和やかな雰囲気の場に変わってしまった。
純粋な少女と言うのはこれだけの力を持っているものなのか。
俺はレベッカの頭に手を置くと優しくなでてやる。
「さて、話の続きだ。…そもそもティアはどこの領地を経営することになったんだ?」
「そこからですか…。」
ティアががっくりと肩を落とした。
ティア×レクシアの最強コンビ結成回でした。
こういった掛け合いは書いていて楽しいのでちょくちょく出していきたいですね。
もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!