123.侯爵、オークションに参加する。
先日も誤字脱字報告いただきました。
また、評価も何人かにいただけております。
この作品の為に貴重なお時間割いていただきましてありがとうございます。
しっかり内容読んでいただけていることや、直接の感想に近い評価を頂けることを非常に嬉しく思っています。
この場をお借りして御礼申し上げます。
それでは続きをどうぞ!!
「少し休憩する。珈琲を持ってきてくれ。」
執務室で作業をいったん中断した儂は執事に指示する。
執事は「畏まりました。」と短く言い部屋を出て行く。
部屋に一人となった儂は窓から外を眺める。
雲一つない、澄んだ空が見える。
沈む儂の気持ちとは裏更に。
ここ最近は失敗続きだ。
何故か何をしても上手くいかない。
王戦が間もなく本格化するのだ。
その前に出来るだけ貢献度を上げて王戦後のポジションを確保せねばならんのに…。
思えばコウナードのボーマ・オスガルド伯爵だ。
先のないティア王女の派閥から引き抜いてやろうと思ったのにそれを断って来やがった。
第一王子派閥だったフレンブリードの没落に隣領であるオスガルド領の確保が出来れば少なくない影響力を持つことが出来るというのに…。
それだけでも業腹なのに続くダンジョン溢れ出し作戦も失敗に終わった。
単に儂の誘いを断ったことに対する報復でもあるのだが、下位貴族共が第二王子派閥からの誘いを断ると魔物の大群に襲われるというような印象を待たせることが出来れば見せしめ的な効果もあると踏んだのだがな。
だが…。
最近導入した魔道具を使用したのだが、これが上手く効果を発揮しなかったようだ。
想定通り魔素を吐き出さなかったのか、魔物の生成が上手くいかなかったのか…。
あろうことか街にまともな被害が出る前にハンターギルドに処理されてしまうとは。
やはり使用試験前の導入に問題があったか。
もしかしたら魔素供給用の奴隷の方に不備があった可能性もあるか。
しょせんはどこかから攫ってきた子供だ。
すぐに死んでしまったのであれば魔道具が思っていたような効果を発揮しなかったのも頷けるな。
いずれにしろダンジョンの溢れ出し作戦も失敗に終わり、魔道具はハンターギルドのに回収されてしまったようだ。
まぁあの魔道具一つから儂に辿り着くことはないだろうから問題ないだろう。
アルカディア魔道具研究所にも守秘義務があるしな。
だが儂の不幸はこれで終わらない。
最近起こったのは【幻獣園】の崩壊だ。
このダンジョンは儂の管理下にあるダンジョンの中で最も富を生み出していたダンジョンだ。
希少種が複数出現する等魔物資源が豊富で、そういった資源の価格下落を防ぐために入場規制までして管理していたダンジョンだ。
これが定期的に行っている調査隊の暴走でダンジョン崩壊を招いてしまったのだ。
未踏破区域で新たな資源が見つかれば更なる富を生むし、最深部がどこかや核が何かという事が分かればその後の階層の規制等で管理が容易になる。
調査隊はそう言った未踏破区域の調査を行ってもらうための集団で、予め核の破壊や奪取をした場合には莫大な賠償金が課される契約がされている。
だが、今回は状況からその調査団があろうことか核の破壊を行ってしまったようだ。
ダンジョン崩壊の際に調査隊が戻らなかったことから、未踏破区域で核である魔物と遭遇、逃げ切れずに応戦し相打ちとなったという事だろう。
大人しく死んでおけよ。
そう思わずにはいられない。
ドアがノックされ、執事が珈琲を持って執務室に入ってくる。
儂は思考を一旦止め、珈琲をすする。
口の中に珈琲の苦みが拡がる。
「少し苦くし過ぎましたでしょうか?」
執事が少し心配そうな表情でこちらを見ている。
「いや、いつも通りの味だ。苦めが好きな儂のドンピシャの味だ。」
「左様でございますか。…何分難しい顔をされておりましたので、少々心配になりました。」
言われて自分が険しい顔をしていることに気付く。
「いや、これは…。どうも最近上手くいっていないからな…。」
「差し出がましいようですが、少し気分転換などされてはいかがでしょうか。」
「気分転換か…。」
正直そんな気分ではないのだが…。
いや、そう言うタイミングだからこそなのだろう。
「先日案内が来ておりましたが、久々にオークションなどいかがですか?掘り出し物があるかもしれませんよ?」
そう言って執事が差し出してきたのは闇オークションの案内状だ。
オークション前の商品を扱う証人と繋がりを持ってから足が遠のいていたが、確かに気分転換に行くにはちょうどいい所のように思える。
最近のうっぷんを晴らすのに手ごろな価格の奴隷がいれば購入してもいいかもな。
「よし、今夜会場へ行く。準備しろ。」
「畏まりました。」
執事は恭しく礼をして執事室を出て行った。
◇◇◇◇◇
王都西部のとある施設の地下。
今日はここがオークション会場だ。
儂はVIP席から会場を見渡す。
会場は素顔が分からぬよう仮面をつけた貴族とその護衛で満席となっていた。
「相変わらずの盛況ぶりですな。」
儂の後ろに立つ執事が話しかけてくる。
「これも王都の一つの顔だ。こういった産業も結局は表の潤滑剤になっているという事だ。」
そんな話をしていると会場がすっと暗くなる。
そしてステージの上がスポットライトによって照らされる。
そこには支配人にしてはずいぶん若い男と、その裏に絶世の美女が立っていた。
男の方が良く通る声で話し始める。
「紳士淑女の皆様方、今夜はよくぞお越しいただきました。」
男が胸に手を当て一礼する。
同時にそこかしこから拍手が起こる。
男はその拍手の中面を上げると、にっこりと微笑み続けて話し出す。
「私はこの王国第二王女の王族専属騎士。これよりあなた方を拘束させていただく。」
儂には男が何を言っているか理解が出来なかった。
さぁ次回ヴァン侯爵と直接対決です。
大番狂わせはありません。
気軽に続きをお読みください。
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