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110/218

110.堕天使、エマゴール商会を物色する。

エマゴール商会。


今日はジークと共にこの商会の拠点を調査しに来ていた。

既に外から【探索(サーチ)】をかけて、建物の構造と中に居る人員の調査を終えている。


施設としては1階が販売店、2階が住居兼事務所と言った様相の造りになっている。

これだけであれば一般的な小さい商会としてありふれたものだっただろう。

だが、この商会は更に地下へと拡張されていた。


地下1階は小部屋になっており、ある種受付のような作りになっている。

そして地下2階はまるで牢獄のように檻付きの部屋が3つ並んでいる。

どう考えても商品を置いておく部屋にしか見えない。


だが、幸か不幸か今はそこに誰も居ない。

どころか、この建屋内には1階の販売店に1人しか人が居ないことが確認できている。

調査を敢行するには絶好のチャンスだ。


今日の調査はジークが店で1階にいる人の注意を引き、その間に私が裏口から建屋に侵入し、2階部分を調査するというもの。


だが、決行直前に私はあることに気付く。


「ジーク、地下1階にも書類棚があるわ。どうしましょう。」


私の進言に対し、少し悩む素振りをする彼。

しかし、悩んだのも一瞬で、すぐさま判断を下す。


「シファ、まず地下2階に行ってファイルを全て製作してきてくれ。それから2階部分のファイルの複製だ。」


どうやら地下の資料の方が重要と判断したようだ。

確かに明らかな秘密空間にある書類なので、表向きでない内容の可能性は高いだろう。


私は承諾の意味を込めて彼の決断に頷く。


「もしこっちの時間稼ぎが上手くいかなくても、2階を後回しにすれば窓から脱出できるしな。」


なんと、私の身の安全も考慮しての順番の判断だった。

ジークは先日の1件以降、こうして私の身の安全を優先させるように図ってくれている。


なんだろう、この満たされるような感覚は。


「よし、じゃあ作戦開始だ。頼むぞシファ。」


そう言って路地を出て店の前へと向かうジーク。


「了解。」


彼に聞こえたかは分からなかったが、私はそう言って店の裏手に回る。

日中だからか鍵も開いていない。


そして裏口に手をかけた所で表側からジークの声が聞こえてくる。

引きつけは上手く行っているようだ。


であれば私も上手くやらないと。

少し裏口を開いて身を建屋の中に滑り込ませる。

そして【探索(サーチ)】で調べた通り、会議室と思われる部屋から隠し扉を開き階段を下る。


地下1階の小部屋は暗く、じめじめとした空気をしていた。

使われる頻度は少ないのか埃っぽくもある。


ファイル棚は一つだけで、特に鍵もかけられていなかったのでそのまま片っ端から製作して異空間収納に放り込んでいく。

この作業自体は物の5分ほどで終了する。


地下2階も見ておくべきかと悩んだが、足がついても困るし、見ても気分が悪くなるだけだろうという事でスルーすることにした。


次は2階の事務所だ。

素早く地下から脱出すると今度は販売カウンター裏にある階段から2階へ。

ここを通るときは販売カウンターから丸見えになるので【探索(サーチ)】で販売員の位置をしっかり確認してから動き出す。

かつ、足音も立てないように【天翔(フライ)】を使って宙を飛んで移動する。


2階にも特にセキュリティと呼べるようなものはなく、難なく事務室に入り込む。

こちらは書類が多いので全てという訳にはいかない。

いや、すべてやってしまえばいいのか?

中身の確認なんて後でいくらも出来るし。


魔力が持つならそっちの方が良いと判断した私は事務室の中のファイル、紙資料をすべて複製して収納していく。

流石に少し時間が掛かったが、十分許容範囲内だろう。

探索(サーチ)】で1階の状況を確認すると、ジークはまだ話をしてくれているようだった。

私はその話が終わらないうちに事務所を出て1階に降り、裏口から建屋を後にした。


完璧な試合運びだな。


自画自賛しながら今度は正面から店に入る。

ジークに作戦終了を知らせるために。


「あ、いたいた。こっちの用事は終わったわよ。」


ジークを探していて今ようやく見つけたという体で声をかける。

私の声に反応して振り返ったジークの表情にはほんの少し、安堵の色が見える。

少なからず心配されていたという事実が少し私の気分を良くする。


「ちょうどこっちも終わったところだ。一旦戻ろうか。」


もうここに用はないので、当然この後の選択肢は帰るの一択となる。

だが、ここで邪魔が入った。


「随分綺麗な方ですが、お知合いですか?」


販売員の男がこちらを値踏みするような目で見ていた。

不快な目だ。


「ああ、彼女もBランクハンターで俺の仲間(パートナー)だ。」


「どうも。」


ジークがさりげなく私が素人ではない事と所有権を主張したような気がした。

私も淡白に返事を返す。


「そうですか…。あ、そう言えば先ほどの話ですが、宜しければ近隣の町で援助を必要としている孤児院がありますので宜しければ紹介しますよ?」


なにか商談を持ち掛けてきているのだろうか。

ジークを見ると、表情の伺えない冷たい顔をしている。

これは…怒ってる?


「…ありがとうございます。ですが、一度しっかりと自分の中でも整理をつけてからでいいでしょうか。またお伺いします。」


「…承知しました。ああ、そう言えば名乗っていませんでしたね。エマゴール商会の販売を担当していますマイルスと言います。」


「ジークだ。」


「シファよ。」


話は一旦保留にしたようだ。

その後は出来るだけ喋らないようにして話が広がらないように努める。


「ではいつでもお訪ねください。お待ちしております。」


その甲斐あってか、すぐに話は終わり照会を後にすることが出来た。


「気に入らんな。」


商会を出てすぐにジークから不愉快だという発言が飛び出す。

反射的に彼の顔を見ると、完全に怒っていた。


どうやらこの商会はこの世で最も怒らせてはならない人を怒らせてしまったようだ。

私はその怒りの被害があまり大きくならないように祈ることしかできなさそうだった。

シファさんの単独行動は何気に初ですね。

シファさんは物語が進むにつれて口調や考え方が変わってきていますね。

この後どう変わっていくか気になりましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!


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