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11.堕天使、驚愕する。

side ルシフェル


とうとう私の前に立つ猛者が現れた。

神と袂を分かち、地に降りてから初めての事だ。


人々に【才能】という呪いをかけることで全体を管理することを是としてきた方針に疑問を覚えたのはいつからだったか。

それは人の感情の波に触れた時だったように思う。


何となく目に留まった青年の一生を特に理由もなく追いかけていた。

その青年は【将軍】の才能を有していた。

それは戦闘に特化した才能で、自身の戦闘能力に加え、仲間にもバフ効果を掛けることができる。戦場に立つことに特化した才能だ。

だが、その青年は農家として生活を始める。

その青年の住む村では外敵の脅威に晒されていなかったこともあるが、本人が穏やかな性格でもともと農家となることを希望していたのだ。

数年はそのまま何事もなく過ぎていったが、ある時転機が訪れた。

近隣の町が魔族と戦争状態に入ったのだ。

どこから青年が【将軍】の才能持ちだと聞きつけたのか、町の騎士が青年の元へと現れ、無理やり徴兵していく。

その後、青年は碌な教育も行われないまま最前線に投入され、そして命を落とした。

死に際の言葉ははっきりと覚えている。

なぜ僕にこんな才能が…静かに暮らしたかった。という内容だった。

彼は【才能】に振り回され、そして死んだ。


全員が農家を希望して見ろ。人はすぐに魔族に滅ぼされてしまうぞ?

全員が兵士を希望して見ろ。人はすぐに飢えて滅んでしまうぞ?

神の言う事もわからなくはない。

個人ではなく種としての存続を考えれば神の管理下に置くことは一つの答えなのだろう。

だけど、私にはそれが正しいと思えなくなっていた。


そして野に下ったのだ。


それから私は人を神の管理下から解放するために神を討つ方法を考えた。

それは私には不可能だった。

神々はその系列の上位存在には絶対に敵わないようになっているためだ。


私は考えた。

そして考え着いたのが人を育て、神を討たせるというものだった。

呪いのかかっている人が神を討てるまで強くなれるかはわからなかったが、他に方法を思いつかなかった。


そして人を育てるためのダンジョンを創った。

神に届きうる【才能】を有したものを選別して育てるのでは、あの青年のような悲劇を生んでしまう。

ダンジョンという形を取れば、少なくとも戦場に身を置くことを良しとした人しか来ないだろう。

ダンジョンとして空間を切り離してしまいさえすれば、中で何をしているかは神に察知されにくくなることも都合が良かった。

副産物で現世と時間の流れが変わってしまったのも、人という種の寿命の観点から見るとプラスに働くだろう。


だが、このダンジョンに入ってきた人はこれまで全てこのダンジョンで死に絶えた。

このことに心が痛まないではなかったが、神を討つという目標の為に難易度を下げるわけにもいかず、仕方ないと割り切ることにした。


そして今、とうとう100階層にまで達した少年が現れた。

彼は神の呪いにかかっていない異端児(イレギュラー)だった。

ダンジョンに入ってきたときは武器すら持っておらず、本当にダンジョン攻略に来たのか疑問になったくらいだった。

だが、そんな疑問は彼の【無才】という【才能】の前に吹き飛んだ。

神の呪いにかかっていない人間。

神を討つのにそんな存在以上に適任はいないだろう。


このダンジョンを攻略する過程で彼がどれほど強くなったのか。

今から視るのが楽しみで仕方ない。

私には人や物の情報を読み取る能力である【解析(アナライズ)】がある。

人のスキルでいう【鑑定】に近いものだが、読み取れる情報量はそれより多い。

特に【レベル】は通常ブランクになっている情報で、人には認知されていないステータスだ。

神々にもレベルはあり、神でLv.999、私でLv.850になる。

人では、かつて魔王討伐を果たした【勇者】の才能を持つものでLv.75くらいだっただろうか。

このダンジョンは人にレベル3桁の壁を越えてもらうために作ったものだ。


私は湧き上がる期待に胸を膨らませ【解析(アナライズ)】を行使する。


<><><><><><><><><><><><><><><><>

ジーク

種族:人族

才能:なし

年齢:17


Lv.:1116

魔力量:286942335


スキル:剛腕Lv.MAX. 空歩Lv.MAX. 鉄壁Lv.MAX. 縮地Lv.MAX. 重力魔法Lv.MAX. 再生Lv.MAX. 闇魔法Lv.MAX. 眷属化Lv.MAX.

<><><><><><><><><><><><><><><><>


「は?」


私は思考が停止し、それ以外の言葉を発することが出来なかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 神が悪役で悪魔がいいやつ展開大好きです。 [一言] 次回はルシフェル様の葬式回かー(棒読み)。
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