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109/218

109.踏破者、エマゴール商会を訪ねる。

エマゴール商会。

王都西に拠点を置く小さな商会。

貴族等の大口顧客は有していないものの、一般市民を対象に日用品販売で利益を上げている。

慈善事業に対して積極的で、定期的に街の美化清掃作業を行ったり、孤児院に対して格安で日用品を提供したりと、その人気は高く悪い評判は流れていない。


表向きが優良すぎるのが逆に怪しいと言えなくもないが…。


俺はエマゴール商会と看板の掲げられた小さな建物の前でその建屋を眺めていた。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


そんな俺に声をかけてきたのがこの商会の店番の男のようだった。


「ああ、いや、少しこの商会の評判を聞いてね。少し見てみようかなと思って足を延ばしてみたんだ。」


「ほう?我々の評判ですか?」


「実は俺は最近王都に拠点を移したBランクハンターでね。ここでの生活にも慣れて少し懐にも余裕が出てきたので孤児院への寄付を考えているんだ。」


「Bランクのハンターさんでしたか。それに…それは立派な心掛けですね。」


「かくいう俺も片親で、しかも長く離れて生活していてね。同じような境遇で育つ子の力になりたいってだけさ。」


「そこからBランクにまでなられるとはすごいですね。…しかしそれで何故うちの商会が?」


「ああ、ギルドで寄付の方法について尋ねてみたんだが、管轄外らしくてな。そこでそう言った活動を活発にしているというこの商会の話を聞いたんだ。色んな力のなり方があるだろうから聞いてみてはどうか。とな。」


「なるほど、そう言う事でしたか。では店の方でお話でもどうです?」


「良いのか?お宅にとっては金にならない話だが…。」


「志を同じく持つ方に協力することはお金とは別でしょう。それに、気にされるんでしたら何かお一つでもお買い求めいただいて構いませんよ。」


男は笑いながらそう言って店の中へと入っていった。


志が同じね…。

良く言ったもんだ。


俺は心の中でそう蔑みながら男の後に続いて店の中に入る。

店の中には所狭しと日用品が置かれていた。


「狭くてすみません。こちらへどうぞ。」


案内されたのは店の奥にポツンとある打ち合わせスペースで、丸テーブルに椅子が2脚あるだけの所だった。

俺がその椅子に腰かけて待っていると、店番の男がお茶を持ってやってきた。

お茶の一つを俺に差し出すと、対面の位置にある椅子に腰かける。


「まず何から話しましょうか…。まず、我々は寄付というものは行っておりません。」


「そうなのか?」


「ええ。我々の考え方では寄付と言うのは子供たちの為にならないという考えなのです。降って湧いたお金で生活が裕福になっても何の教訓も得られませんから。ですので、何かしらかの対価、例えば街の美化清掃のようなことをして貰って、その対価としてお金を支払っています。もちろん対価としては破格の金額にはなりますが、労働の概念やお金のありがたみみたいなものをより理解してもらえると思っています。」


なんかすごくまともなことを言われている。

安易に寄付とか言って接触を試みようとした俺が浅はかだったか…。


「なるほど、考えてみればその通りだ。この商会ではそうやって利益を還元されているんだな。」


「まぁそう言う事です。ですが、その対象は王都以外の方が多いのです。」


「??活動拠点は王都と聞いていたんだが…?」


「拠点はここですので王都で間違いはないですね。ただし、活動自体はもっと広い範囲で行っています。対象の話ですが、王都は比較的治安も良いので孤児の数は少なく、国からの援助も手厚いのです。それに比べると、地方の町なんかでは本当にひどい状態の孤児たちを見ることがあります。我々が主にお力添えさせていただいているのはそっちの方の孤児院なんですよ。」


「それは言われてみれば確かに。より助けが必要なのは地方の孤児院だということか。」


「そうなのです。ですので、貴方がなにかしら援助をと考えられているのでしたら、当商会としてはお仕事で地方へ行かれた際にでも孤児院へお仕事の依頼をなされて、その対価として支払う方法を推奨させてただくことになります。」


「いや、勉強になった。ありがとう。お陰で自分の進むべき道が見えた気がするよ。」


「期待に応えられたようで何よりです。」


もう十分かな?

そろそろ店を出ようかというタイミングで、新しく店の中に入ってくる人が居た。


「あ、いたいた。こっちの用事は終わったわよ。」


それは別行動をしていたシファだった。


「ちょうどこっちも終わったところだ。一旦戻ろうか。」


そう言って椅子から立ち上がる。


「随分綺麗な方ですが、お知合いですか?」


店番の男が尋ねてくる。

特に何でもないよう装ってはいるが、その雰囲気が少し変わったことを俺は感じ取っていた。


「ああ、彼女もBランクハンターで俺の仲間(パートナー)だ。」


「どうも。」


「そうですか…。あ、そう言えば先ほどの話ですが、宜しければ近隣の町で援助を必要としている孤児院がありますので宜しければ紹介しますよ?」


「…ありがとうございます。ですが、一度しっかりと自分の中でも整理をつけてからでいいでしょうか。またお伺いします。」


「…承知しました。ああ、そう言えば名乗っていませんでしたね。エマゴール商会の販売を担当していますマイルスと言います。」


「ジークだ。」


「シファよ。」


「ではいつでもお訪ねください。お待ちしております。」


少し残念そうな表情のマイルスに見送られ商会を出る。


「気に入らんな。」


まだ店も近いのについ声が出る。


あの男、シファが姿を現した途端に俺達と繋がりを持とうとしやがった。

個人的にシファの事が気に入ったか、商品価値(・・・・)を見出したか…。


いずれにしても完膚なきまでにぶっ潰そう。

俺はそう心に誓った。

これは完全にジークさんのヤキモチですね。

この後商会がどのような末路を辿るのかをお楽しみに。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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