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8.回避

自分も危なかった、などとは、伝えないほうがいいだろう。

余計な心配はさせたくないし、僕の鳥体の居場所もバレるわけにはいかない。

何よりも、少年のピンチを救うために霊体で現れた鳥ってほうがかっこいいからね…。


そして、この美味しそうで濃厚で巨大なエネルギーを取り込むことができたら、

僕は予定よりも早めに孵化することができるだろう。

聞いたこともないから、うまくできるのかわからないけど、きっと僕の乱れてしまった神聖力を整えるのに役立つだろうと思う。


しかも、リリィの神聖力が練り込まれているから、

リリィの性質をも受け継ぐことができるかもしれない...!!

いわばエネルギーの遺伝子組み換えのようなことが起こるだろう、と予想される。


…でも、それは同時にとても懸念すべきことを多々含んでいる。

そのことについては、今は考えないことにした。


『そのエネルギーは巨大すぎて、濃すぎるから、適切に定着できるものが限られている。

神聖力の器である、その少年か、リリィか、僕か、しか器となれる存在がいないんだ。

そして、今この状況では、

リリィにも少年にも注入することはできない。

精神の成熟度が追いつかなくて、暴走させてしまう可能性が高いから。

おそらく、僕しか受けとることができない。』


リリィは少し逡巡して、僕の懸念を言い当てた。

「...それって、空気を入れすぎた風船が割れてしまうようなことが起こるかも、ってことでしょう?... 白い鷲さんにそんな危険なことさせられないわ。」


―気づいちゃったか。


『...僕はこう見えて長生きしているから、大丈夫だと思うよ。


うん、そうだね。まずは僕のエネルギーと融合させて馴染ませたものを取り込むなら、精神への負担はだいぶ軽減されると思う。


あの少年にやったのと同じように、僕の周りを包みながら、僕のエネルギーを吸収して融合させてみてほしい。』


「うん、わかったわ。白い鷲さんを信じる。」


そう言うと、分厚く練られたエネルギーの膜をゆっくりと移動させ、僕の周りを取り囲む。

僕は意識的にエネルギーを広い範囲に放出させ、融合できるかどうか様子をみる。

ここで拒絶反応が出れば、霊体である僕は衝撃で消しとんでしまう恐れもあるが。

今のリリィにならできるんじゃないかと、なぜか思ってしまった。


それに、実際、危険だとしても僕たちには他に選択肢がない。

こうでもしないと、こんなバカでかいエネルギーを吸収できる場所なんてないんだから。

核兵器にも匹敵するほどのものだ。ちょっとバランスを崩したら、この島なんてひとたまりもないだろう。もたもたしていたら、リリィの負担が大きくなってくる。


神聖力は創造における元始の力。

少量でも影響の強いそれ同士を融合させている、その状態は非常に不安定で、何かの拍子に自然界の理を簡単に変えてしまうほどの威力がある。

そんな怖いことをここで発しても、リリィの集中を害するだけなので、言えない。

鳥も人間も、島も、、滅びるときは滅びるのだから、天災と思えばあきらめもつくだろう。

何か起ってしまえば一瞬だろうし、苦しむ暇もない。皆、道連れだ。


そう思いながら、覚悟を決めていると、驚くべきことがおこった。

リリィの身体を光の粒が包んだかと思うと、そのエネルギーが膜に吸収されていたのだ。

おそらく、リリィが無意識でやっていることなのだろう。


実は、3つの神聖力の融合など、2つのときとは比較できないほど難度がはねあがるはずなのだ。

きっと、僕と少年の神聖力の反発をできるだけ中和させるために、両方と親和性の高いリリィの神聖力の比率を上げようとしているのだ。


型の違う血液同士を混ぜるようなものだからな。

さしずめ、リリィの神聖力はO型のような性質なのだろう。

僕とあの少年の型が反発しないことを願うばかりだ。


リリィは自分から溢れる神聖力が膜へと吸収されていることに気づくと、瞬時に理解したようだった。今度は一筋の川のように、光の粒を膜へと放出させ、練り込んでいく。


『リリィ、そんなに神聖力を放出してしまうと危ないよ。あの少年のように意識を失ってしまう』


「うん、まだ大丈夫。少しずつ白い鷲さんのエネルギーと馴染んできたわ。

あとはこれをできるだけ凝縮していくわ。」


リリィは直径20メートルほどまで膨れあがった膜を、ゆっくりと光の粒でなでるように練り上げた。

僕の神聖力をだいぶ馴染ませたそれを、僕から引き離して、さらに練り固めていく。

そして、なんとそのエネルギーを固体化させ、眩いほど輝く光の珠にしてしまった。


「白い鷲さん、霊体のまま、この珠に入ってみて?」


―なんだ、これは...


リリィはなんともないような顔で言っているが、ものすごい何かだ、ということしかわからなかった。


リリィは何を考えているんだ。いったいこれは、何なんだ。

僕は逡巡しつつも、その光の珠に霊体のまま入っていった。


すると、眩しさは消え、淡く光るていどに治まった。


「エネルギーを圧縮しすぎて固体化しちゃったんだけど、これで、白い鷲さんの必要な分だけ、少しずつ吸収することができると思うの。」


なるほど。固形食材というか、フリーズドライみたいなものか?

いや、それだけじゃない。

霊体の定着が安定していて、ものすごく心地がいい。バリアの機能が応用されていて、

完全に外界と遮断できている。

いわば、僕の霊体のシェルターボックスだ。


圧縮する過程で相当むずかしいことをしたのたろうけど、どうやっているのか、僕でさえまるで見当もつかない。

そもそも、圧縮するには、あの巨大な融合エネルギーをさらに強い力で取り囲む必要があると思うのだが、それがきっとバリアを応用したこの珠の外郭なのだろう。

エネルギー自体はこの珠のなかに圧縮というより封印されている状態に近い。

神聖力の固体化、、どれほどの技術なのかその価値は想像もつかなかった。


とにかく僕は、それから一週間、身体が成長しきるまでの間、

安全な光の珠の中にいて、放出しすぎた神聖力を補うように浴びるように珠のなかの神聖力を吸収していった。

そして、卵が孵化する直前まで、リリィのそばにいることにしたのだった。


読んでくださってありがとうございます。

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