布団の中の勉強
寝かしつけた子供は
夢の中には居ない
ひっそりと目を瞑り
親の話に耳を傾けている
酒が入り
大きくなる声の先に
その人間の何かを知ろうと
脳を動かし続け
程度を測ろうとしている
本人には自覚が無い
面白いラジオのように
布団の中でダラリと学ぶ
身動きの音で想像し
普段の動きを合わせて
空想上の親を映像化し
上手くできれば
クスクスと静かに笑う
枕元に
床を伝って足音がすれば
目の瞑り方を変え
わざわざ自らが動いて
注目度を上げる
眠っている印象を新たに作り上げ
相手に認識させることで
自分の状態を
上書き保存させている
玄関の音がすると
親の友人が来たことが
子供には分かった
話始めのごちゃごちゃは
直ぐに消えて
会話の順番が決まる
盛り上がりの時に
またごちゃごちゃになり
笑い声が高くなる
その繰り返しを
布団の中で繰り返す
ハッキリと聞こえたものは
手の届く範囲の知識として
子供の頭に蓄積していく
使えるものだからではない
面白いものとして
増えていくのだ
十二時の鳩時計が鳴っても
親達の話は終わらない
ただ子供はゆっくり
夢の中へと落ちていく
遊び疲れたのだから
大きな音も気にならない
明日になれば
別の面白さがあると
安心して眠るのである