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第五十六話

鳥型のドラゴン、アザレが街を襲う中、ミハエラ・ハーミットは当惑していた。

当然それは遠く足元の"それなりの惨状"に対してではない。

むしろその逆だ。


"なぜこの程度で済んでいる?"


そんな疑問だった。



北方魔族の首魁、アイゼン・ヴラドが弄した策の一つ。

『竜化の魔法』

おぞましいその秘術を利用し、ハーミットは人々に竜害の恐怖を強く根付かせようと画策していた。

確かに、現時点でも人々はドラゴンの恐怖をその身で味わっているところだろう。

足りないのは、絶望だ。



「失礼するぜ大将」



ノックも無く入室してきたのは、中央懲罰隊『容赦室』室長、ララ・スノウドット。

制帽からはみ出る茶色い前髪、儀礼用の軍服。

そしてその軽い態度に、ハーミットは特に言及することはない。

問題なのは、今しがたどこかの警備に向かった筈のこの男が踵を返してきた事だ。

おそらく今起きている異常、あるいは"今起きていない異常"にまつわる話だろう。



「竜化の魔法が何者かに破壊された」


「…………やはりか」


「ただ破壊されたのはそれだけみたいだ。

愛の魔法も、エスベルグに用意された魔法も無事だぜ」



尚更奇妙な話だった。

此度のハーミットの計画を知る者は、その身分や実力に関係無くほとんど存在しない。

そしてそれを知らずとも邪魔立てが出来る者はあらゆる手を使い縛り、遠方に飛ばし排除した。

ただ、ハーミット自身とて自らが完璧ではないということは十分に理解している。



「『合成竜』は侵攻用に取っておきたかったのだがな」


「ありゃエグすぎますからねえ。俺だって相手にしたくねえ」



空からの悪意は一方向だけではない。

依然として、王都には死の匂いが付きまとっていた。

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