第五十二話
超大規模想量変換術式『愛の魔法』
150年以上前、とある国が開発したそれはまさしく夢のような、奇蹟の魔法だった。
人が生まれれば、世界はエネルギーを消費する。
過去と現在と未来、その全てにおいて。
消費されたエネルギーは魔素や空気、大地や海に還り、やがて永い年月を経て新しいエネルギーへと換わる。
この性質を利用し、逆に今生きている存在を消費、ないしは消滅させる事で、そのエネルギーを強引に生み出し、さらにそれを変換、抽出し利用しようと画策する者達によって作られたのが、『愛の魔法』である。
そして、消し去る対象としてもっとも効率が良いとされたのが人間だった。
当時のかの国は敵国との戦時下にあり、主戦場となる場所に秘密裏に展開していた愛の魔法は膨大な死と魔素を溜め込んでいた。
だが、現在のバレンディア王国に残る文献には、『愛の魔法は失敗した』としか記されておらず、また確かにそれを用いて何かを成し得たという記録も無かった。
というのはただ裏に通ずる者が持ち得る見識だ。
深部にて暗部。
王国という呪いの国の根幹を秘匿する僅かな者らは知っていた。
『共和国による愛の魔法は失敗していない』
「灰街よ!王都よ!
魔王!翠姫!夜神秘!」
狂気に満たされハーミットは叫ぶ。
宿敵たる憎悪の名を浮かべ、歯噛みすること無く喝采する。
「今日私は、貴様らを躙る。
すり潰し、噛み砕き咀嚼するのだ」
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