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第四十四話

真昼の王都グリアノスに深々と降るホシドリの雪。

ある種幻想的なその光景は、自然に生み出されたものではない。


それと知ってなお風流と楽しむ者もいる。



「愚直とは貴様の事だよ、ヴラド」



他に誰もいない部屋で、ハーミットは湧き上がる哄笑を噛み殺し大窓の外へと視線を遣る。

世の全てが自分の思い通りに動く。

その全能感は日々強まりあらゆる悦楽に勝れば猛毒のように精神を蝕む。


現国王サラス・バレンディアが病に倒れ早十一年。

摂政争いに各省の重鎮がこぞって参加し、ハーミットはその泥沼の政治闘争に敗れていた。

血統主義に傾倒した世襲制の議会。

叩き上げの軍部由来の軍警省には縁遠いものであり、それでもなおありとあらゆる手を使い、人を使い、使い潰して今の地位を手に入れた。


そして今日また一つ、ハーミットは自身の位が高まるのを感じていた。


『神徒』

禁忌の書庫番から紐解いた文献を元に造られた、人の形をした大災。

その力を見た時、ハーミットは言葉を失った。

人の奇蹟と呼ばれる一等星のドラゴンハンターですら、ともすれば凌駕する程の圧倒的な大破壊。

欠落した感情による精神面でのある種の安定。

ぞくりと背筋が凍り、怖気が走ったのを今でもよく覚えている。


欲しい。そう素直に感じた。

この天をも統べる力が手元にあれば、蛮族も獣もドラゴンも、全てがひれ伏し忠誠を誓うだろう。



「踊れ、獣よ」



降りしきる雪はハーミット、ないしは王国軍の所業ではない。

ただ、事態は彼の掌の上で進行しているのも事実だった。


王都のどこかで叫び声が生まれるが、分厚いガラスに阻まれハーミットに届くことはない。


栄華を極めるグリアノス。

その市井の中心で、一際大きな遠吠えが木霊した。


知る者が聴けばそれとわかる、ドラゴンの咆哮だった。

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