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一時帰還

 明日には勇者が王都へと訪れる。そのまま恐らくは教会の指示だろう、イーストランドに入り魔王討伐のために戦場に向かうのだろうな。ノースランドは通り道ついでに俺のダンジョンに寄ってたのかな?

 そんなことはどうでもいい。とにかく面倒ごとが来る前にゲートを開いて逃げねば。場所はどうしようか。見回して見ても隠すことはできそうにない。見回りの兵が隈なく城内をうろついている。

 腹減った。あれか?腹に風穴開いたからか?医者曰く安静にしてろと言われたが、安静になんていられない。つまみ食いもしておきたい。ということで食堂に着く。


「すみません。ご飯って作っていたりします?病人食とか」

「あ、ああ…。さっきの爆発の…」


 そんな覚えられ方かよ。

 病人食は時間がかかりそうなのでシェフに無理言ってまかない飯をもらう。

 うめえな。

 そういえば、食堂の内部は基本的に見回らないよな。

 ご飯を平らげて王室に向かう。常駐してる人にすんなり通してもらえた。


「王様ー!」

「馴れ馴れしいぞ小僧、身の程をわきまえよ」

「じゃあゲート設置して帰りますね」

「説明を要求する!」

「なら変なテンションやめてください」

「最近威厳がなくなっている気がしてな」

「初対面から皆無ですが?」

「そんなことはない。賢王として知られるワシの威厳を凡人のお主には看破できなかったのだ!」


 看破しなきゃいけない時点で威厳もへったくれもねえな。というか賢王ってウェストランド王だろうに。


「…ごほん、それで、どこに設置するのだ?」

「食堂です」

「また変なところに…」

「食堂なら不便にはならないし、具体的には食堂の近くってことですよ」

「なるほど、そこなら人目にはつきにくいと」

「はい」


 あまりにも人目につかなければ、王様自身が公務を放り出してラビリンスアースに乗り込んできそう。多少は人目につかないとな。


「ロイドの商品補充で使いたいから特別許可証をもらっといたぞ」

「なんだそれ?」

「宰相の人にダメ元で頼んでみたらくれた」

「ダメで元々、当たれば儲けとは言うが、儲けすぎだな」

「順調すぎて怖いくらいだ」


 ゲートを設置する。一瞬でゲートが開き、そこを通ってラビリンスアースに帰還する。


「帰ってきたぞー!」

「ここどこだよ」

「旅の扉」

「…どこだし」

「鉄道の街の外れだな」

「微妙に距離ある場所か」


 神殿をモチーフにした人が訪れることのない場所。中を出るとワイズちゃんが待っていた。


「おかえりなさいませ」

「…ただいまワイズちゃん。帰ってきたのよくわかったね」

「突然うるさくなればわかりますよ」


 そう言って俺を指差した。

 あー、テレパシーですか。すみません。いまいち管理できなくて。というかテレパシーの仕組みもわからない。俺のスキルじゃないってのはわかるんだけど。


「クレアは一緒ではないのですね」

「ゲートを軽く設置してロイドを送り届けにきただけだし、俺自身はすぐ戻るつもりだったけど」

「事情があるのですか?」

「その辺はすぐに説明する。ロイドはどれくらい時間かかる?」


 俺は隣でぽかんと口を開けていたロイドに話しかける。ワープで帰ったら出迎えられるのは一種のホラー感あるからな。ワイズちゃんはたぶんワープしただけだろうけど、手にダンジョンコア持ってるし。


「電車に荷積み、荷下ろし…、結構かかるぞ。明日まではかかる」

「明日は無理だな、後々のことはお城のお偉いさんと話してくれ」

「俺が直接交渉するのかよ」

「商品の内容見せれば悪い顔はしないだろう」

「お前本当に俺より20も歳下か?」


 俺自身も半年前まで学生やってたとは思えないな。


「無断でゲート使って帰るのは酷くありませんか?」

「クレアか」


 背後から怒気含む声で話しかけられたので振り返れば多少息があがっているクレアが顔を出していた。


「ハルトの気配が消えたからお父様に尋ねれば、また変な場所にゲートを設置しましたわね」

「結構いい場所だから」

「王族が普段から使っていたら変な場所でしょうに!」

「いや、変な場所に置かないと王様がすぐ遊びに来そうでな」

「確かに…、そうですけど」


 クレアの不満があるが、あまりゲートを行き来したりはしないはず。一番使うことになるのはロイドだし。


「ハルト様、どうやらクレアと親密になられてしまったようですね」

「あ、ああ。一応な」

「ふーん」


 そんあジト目で見ないでよ。かわいい。


「痛いっす」

「ふん」


 なかなかの握力してますね。頰が取れるかと思った。

 横でもげろとかつぶやいているやつは無視する。


「それで、何か企んでいるみたいですね」

「わかる?」

「ニヤついた笑みが張り付いていますよ」


 顔に出てたのかよ。テレパシー仕事しろ。


「ろくでもないことでしょうね」

「何を言うか、完璧な作戦だぞ」

「へー、具体的には?」

「それはだなー」

「目を合わせてください」


 いや、だってな。俺としては倫理観に反すると言うか。でもやっておいた方がいいかなって。


「ハルト様」

「うぅ…」

「じーっ」


 声に出さなくていいからね。ジト目かわいいから。


「俺は今、命を狙われてます」

「そうですね」

「多くの冒険者ならびに暗殺者に狙われています」

「一応勇者も該当するでしょう」

「そこで考えた。なら俺がドッペルゲンガーを作り出し、俺に化けさせて勇者に倒されれば万事解決じゃね?と」

「………」

「………」

「………最低ですね」

「命狙われてるんだから許してくれよ」


 というか他2人はあまり気にしてないみたいだけど?


「使えるならいいんじゃないか?」

「雲隠れにはうってつけですね」

「ドッペルゲンガーの作り方とか知らないですけど」

「「………」」


 真顔にならないで、穴だらけの企みなんです。


「仮にできたとしてもドッペルゲンガー量産とかやめてくださいね。私のコピーとか作って何するかわかりませんし」

「ワイズちゃんコピーできないと思うし、そもそも変なこととかしないし」

「変なこととは言ってませんけど?何想像したんですか?変態ですか?」

「ワイズちゃんのこの辛辣具合久しぶり!興奮する!」

「死んでください」


 ワイズちゃんの毒舌に戻ってきた安心感あるな。


「そもそもまだミラーの死体が手に入らないし」

「穴しかない作戦ですね」

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