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助力

「助けてくれたことには感謝する」


 王都内の下町の寂れた小屋、しかも地下にスザンヌたちは幽閉されていた。飯もろくに食えず、なんとか生かされているという衰弱した状態だったのだが、スザンヌはコピーと話していたときと同じように気高げに振る舞う。立つのもやっとなのに彼女は弱みを見せたくないのか、無理して動いている。

 隣には半分死んでるロイドが横たわっている。むしろこっちが正常だぞ。


「私は魔族は許さないからな」

「あ、はい」

「だが、助けてもらって礼も言わぬ恩知らずの女とは見られたく、うっ…立ちくらみが…」

「いいから寝てろよ」

「わ、私は———」


 えいっ。


「ちょっ」

「こういうときは無理やりヤった方が良いのですよー」

「絶対違う」


 スザンヌは首にマリエルのチョップを食らってそのまま気絶した。


「よいしょっとー」

「背負ってあげるんだな」

「ロイドさんが可哀想ですねー」

「いいんだよ別に」


 台車にロイドを乗せて運ぶ。石畳でガタガタいうけど半分くたばってるし大丈夫だろ。


「いてっ、いてぇ、いや、いてえよ。めっちゃガタガタしてるんだけど、肩甲骨とか背骨に響くんだけど!?」

「うるせえぞ病人黙ってろ」

「病人の扱い方わかってんのかよ!?」

「元気そうだし平気だろ、自分の足で歩け」

「おーい、ちょっとー、ハルトくーん!おいていかないでー、台車でいいからー、緩やかな坂道だからちょっとずつ落ちてるってー、加速し始めてる!?」


 仕方ねえな。


「そういえば普通にコピー体との会話を覚えてるみたいだな、マリエルとも初対面だろ?」

「感覚自体は通じてたからな。マリエル様に殴られた感触も覚えてる」

「直接殴られたドッペルゲンガーが不憫なんだが?」

「致し方なし」

「それで、何日閉じ込められてたんだ?」

「3日くらいか?なんか奴らコピー前がどうとか言ってたぞ」

「ならドッペルゲンガーの元の姿を見たのか?」

「ん?ああ、なんというか無機質っぽい塊だった」

「なんだそれ」

「よくわからん」

「ふーん」

「…なんか企んでるな」

「別にー」

「マリエル様みたいになってるぞ」

「極めて不快である」


 隣のマリエルから裏拳が飛んできた。




 2人を城の医務室に運び、ようやく一息がつける。


「お疲れ様」

「テッドも手伝えよ」

「すまない、やることが多くてな。それで2人の容態は?」

「軽い衰弱くらい。2日も経てば回復するだろう。で、やることってなんだったのさ?」

「僕をコピーしたミラーの情報収集だよ。コピーが解かれたのはわかったけど、その後どうなったかはわからないからね。このまま放置しても気味が悪いだろう?」

「情報は入ったか?」

「そんなすぐに入ってこないよ。情報を集めるように手配していただけだし」


 特殊部隊の本部的なところに報告でも行ったのだろうか?

 ピーピーピーピー。


「魔物探知機?じゃないか、何が反応してるんだい?」

「これかよ」


 懐に入れていたトランシーバーがなっていた。


「もしもし」

『俺だ。シュウヤだ』

「くたばれ」


 なんとなく脳裏を横切った人物からの着信だったので、現状を含めて悪態をついてから切ってやった。

 ピーピーピーピー。


『切ることないだろ』

「誰のせいで遠出してると思ってるんだ?」

『それよりいいのか?トランシーバーの聞こえる範囲にいて』

「怖えよ。…この無線機の届く範囲は1億kmだから」

『そういうことにしておいてやる』


 勇者のお慈悲に感動しました。くたばってください。


「それで何か用か?」

『そっちの魔族の討伐も終わったみたいだしな』

「お前化け物かよ」

『あまり変なこと言うなよ。化け物であることを証明してもいいんだぞ?』

「すんませんでした。話が進みません」

『お前が脱線させているんだろう。…それで、お前はわかっていないと思うが、他の街にも魔族が現れてな』

「他の魔族?ってことはミラー倒したりしたか?」

『ん?ああ、ミラーなら今いる山砦の街で倒したぞ』


 山菜の街?ああ、山砦の街か。確か地図だと王都から4日ほど北に歩いた場所にあるはずだ。絶対トランシーバーで会話できない距離じゃねえか。


「こっちにテッドっていうコピーされた本人がいるんだが」

『ああ、そいつならドッペルゲンガーが化けていたぞ』


 興味深げに耳を近づけていたテッドにジェスチャーでトランシーバーを指差して、コピー問題を解決したことを伝える。


「それでわざわざ無線掛けてきたってことはコピーされたテッドについて掛けてきたってことか」

『全然違うけど?』

「全然違うのかよ」

『わざわざ掛けたのは、山砦の街っていう特に魔族側に問題のない場所をミラーが本格的に見張っていたのが問題でな』

「ふーん」

『お前何もわかってないな』

「うん」

『何がうんだ。説明するが、山砦の街ってのはエルフの森に接している四大国唯一の街なんだ』

「エルフ…」

『ああ、人類側の数を減らそうとするよりも、より魔族にとって危険な存在であるエルフを攻撃しようとしていることがわかった』

「ふーん」

『それで言いたいことはわかるか?』

「え?」

『お前魔王討伐を手伝うって行ったよな?』

「魔王関係なくない!?」

『魔族の動向が魔王の意志だ。つまりエルフたちを助けることも魔王関係といえる』

「こじつけ論やめろし」

『酷いこじつけではないと思うが?』

「俺に頼んでもどうにかなるとは思えないけど?」

『そうでもないさ』

「どういうことだよ?」

『人間の俺たちより、今回の件はエルフたち本人の方が詳しいだろう?それなら俺たちが魔族の侵略を知るより先にエルフたちは動いているわけだ?』

「それで?」

『察しが悪いな』

「失礼だな。こっちは疲れてんだよ。思考が回らないんだよ」

『あっそ』

「軽っ!?」

『まあ、エルフたちは動いたわけだ。助力を求めるためにな。それでエルフたちが助力を求めたのが俺たち人類の四大国ではなかった』

「…そういえば…」

『なんだ見たのか?エルフがお前のダンジョンを訪れたところ』

「ああ、ってことはマジかよ…」

『意外だよな。あのお堅い種族がまさかダンジョンマスターに助力を求めるなんてな。まだ確実にそうと決まったわけではないが、…だからそれを確認するためにもゲートでさっさと帰った方がいいぞ。じゃねえと俺が王都に着いちまう』

「お前どこまで…」

『ゲートのことか?知ってるさ。俺の最大のスポンサーは教会だってことを忘れるなよ』


 形式とはいえウェストランド王に振り回されていたくせに何を言うか。


『明日には王都につくからな。出会ったら覚えてろ』

「悪魔かよ」

『勇者だよ』


 なんか前にもこんなやりとりしたな。

 それにしても面倒なことになった。


「今の会話は本当なのか?」

「ん、ああ。あいつが嘘をつくとは思えないし」

「このことを本部に話してもいいか?」

「微妙だな。エルフは俺に助力を求めたって行ったってことは人類側と何かあるんじゃないか?」

「…確執はあるが、魔王討伐のためにはエルフと手を組むことは必要なんだ」

「だが、エルフたちは俺と言うダンジョンマスターへ助力を頼んだ」

「…報告はさせてくれ」

「…仕方ないか。情報は必要なものだしな」

「ああ、何もできはしないが、無駄骨を働くことになりるのは嫌だし」


 エルフが不穏な動きをして、それを調べたら管理するダンジョンのマスターに助力を求めていただけでした、ついでに部下はそれを知っていました。二度手間だな。


「それにしても便利なものだな。離れてても会話できるなんて」

「やらねえぞ」

「…」

「…」

「僕と君の仲じゃないか!」

「薄々思ってたけど、お前それわざとやってるだろ!?」

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