旅は道連れ世は情け
「やあやあー、また会いましたねー」
回れ右!
「ちょっとー無視しないでくれますー?」
「あたたたた!?肩外れる!握力強すぎぃ!?ゴリラかよ、へぶっ!?」
「乙女に向かってゴリラはないですよねー」
絶対乙女じゃないだろ。顔の紅葉がもう1つ増やされるから口には出さないけどさ。
「なんで聖女様がここにいるんですかね?」
「私ー、勇者パーティーから外されてー」
「でしょうね」
「何かしらー?私のせいとおっしゃるのでー?」
違わないのでは?前回のラビリンスアース攻略作戦の時、酒呑んだくれてただけだしな。魔族に襲われた境界の街に着いたのも結局最後になってるし、そら解雇もされますわ。
「あら、聖女のマリエルではありませんか。私の旦那に何か用ですか?聖女でありながら人の旦那に手を出すビッチがこの世に存在するなんて世も末ですわ」
「囚われの王女様がどうしてダンジョンマスターとご一緒なのでしょうかー?攫った側のダンマスと行動しているのはおかしいですねー、そんな魔族の彼と婚姻するとはスキャンダルですねー、ノースランド王家はおしまいですわー」
「ハルトはノースランドの重要人物、何の問題もないんだよクソババア」
「ウェストランドに送りつけるぞ、飾りだけの小娘」
「は?」
「は?」
バチバチに目の前で喧嘩しないでくださいよ。あとクレア王女は化けの皮が剥がれてるみたいに見えますよ。それとやっぱり聖女って年増なのか。
「それでどうしたんです?わざわざ俺たちを待ち構えていたみたいですが」
「エリスから聞きましてー」
マリエルが聞いた話では、ウェストランド王が再び勇者に掛け合い、魔王討伐の合間を縫ってラビリンスアースの攻略に乗り出すことになった。しかし魔王一派の動きが活発になりつつある昨今、教会の立場としてはさっさと魔王討伐に精を出して欲しいと考えていたが、ウェストランド王が理論的に時間を作れると懇切丁寧に説明したらしい。理が通った説明に勇者も一行も致し方なくダンジョン攻略に乗り出した。しかし、教会はそれには賛同せず、ウェストランドの息がかかった聖女だけをパーティーに据えることにした。
「つまりマリエルは問題行動で外されたわけではないと」
「それが本題ではないのですがー、私の名誉のためにもそう考えていただいて問題ありませんのでー」
絶対名誉とかないだろ。
「なにか?」
語尾伸ばさないと怖いっす。
「…つまり、あなたが私たちについてくるということは、何かまずい問題があるということですね?」
「それはですねー。魔王がハルトくんを認識しましたー」
「っ!?」
え?まじで?
魔王が何で俺を?
「前回の境界の街の襲撃の際にゲートを設置していたのを目撃した魔族が報告したそうですー。まだ確定的ではありませんが、魔王はラビリンスアースに魔族を派遣することも考えているそうですよー」
「よくそんなことわかるな」
「魔族との戦いはもう何千何万という年月の歴史がありますー。非人道的な作戦もあったりしますし、そのおかげで情報を習得することもできますねー」
「…非人道的って、例えば?」
「人を魔族に改造して魔王城に送り込んで間諜にするとかですかねー?」
「真っ黒やん!?教会黒すぎる!」
「半分冗談ですけどー」
「待てや。半分本当じゃねえか、どの部分が半分なんだよ!?」
「ということでしてー、ラビリンスアースで魔族を迎え撃つならいざ知らずー。出歩いているところにハルトくんが襲撃されて倒されてしまうとー。私たちとしても”ラビリンスアースを生み出した”苦労が水の泡になってしまいますー」
ワイズちゃんも言っていたけど、俺の誕生の要因は教会にあるんだな。マリエルもそれを話してくれるものだ。ある程度しか話してはくれないが。
「つまり俺の護衛と?」
「そういうことになりますねー」
ふむ、人間側でてんやわんやしている隙を逃さず攻めてくると、でも攻める先が俺なのかよ。
「護衛なら私で十分ではなくて?」
「ダメですねー、クレア王女も強くはありますが、戦闘経験の少なさが護衛には不向きですー。夜中爆睡してそうですしー」
おお、合ってるぞ。俺より早く寝て、俺より遅く起きるからな。平均で10時間寝てそう。いつもワイズちゃんに叩き起こされてるし。
「私も爆睡型なんですけどー」
「意味ねえじゃん!?」
俺とクレア王女の逃走劇に聖女マリエルが加わり追っ手に魔王一派が加わった。
「ダンジョンマスターがいない?」
「ああ、俺の索敵に一切引っかからない」
「少し前までは居たんだよな?」
「間違いなく反応はあった」
「ボクの索敵にも引っかからないし、どういうことだろう?」
なんだろうこのボクっ娘聖女。呑んだくれ聖女と同様に聖女ってのは変わったタイプの女性が多いのだろうか?ボーイッシュというか髪もベリーショートだし、どう見てもショタ系聖女とかいう混ぜたら危険な属性持ちである。っていうか男じゃないのか?女なのか?
「カイトはわかるか?」
「っ…、魔族を特定する索敵だろう?なら種族を偽っている可能性はあるか?そういうスキルは聞いたことないが」
急に勇者に話を振られてしまって少し戸惑ったが、自分の考えを即座にまとめることができた。考えてたの全部ショタっ子聖女のことなんだけど、なんでみな馴染んでいるんだろうか?ウェストランドから来た4人はまだわかるが、アリアもエリスも普通に接してる。どう考えても疑問が尽きないだろう。
「確かにカイトの説は一理ある」
年下の生意気坊主(聖女)に呼び捨てにされたんだが?
「というと?」
「ここはダンジョンだからボクたちのいた世界とは別世界、異なる法則が働いて未知のスキルが存在してても不思議じゃない。ダンジョンのことは今だにわかっていないことの方がおおいからな」
「だが、単に遠い場所にいる可能性も否めない。このダンジョンは世界といっても過言ではないくらいに広い。とりあえず、以前まで身を隠していた場所に向かってみるぞ」
「了解」
やりとりが完全に同性のそれなんだけど?
勇者の誘導でワープのスキル範囲に入り、ハルトが拠点に据えているだろう場所に飛ぶ。宙を舞うというより、宙に放り出される感覚に陥り、到着する瞬間に緩んでいた体の力を取り戻し、地面にきちんと着地する。
「っと、エリル王女、大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございますっ!」
…。
…エリル王女、ちょっとぽっちゃりしてたな…。
忘れよ。
「うぐっ」
…女の子だったか。
「み、見たな?!」
「何も見ていない、何も聞いていない、そして俺は何も知らない」
「絶対見ただろ!!!」
顔真っ赤にしたショタっ子聖女に絡まれる。いや、クマさんパンツとか知らないです。っていうか嬉しくない。俺はショタ属性を持ち合わせていないんだ。ハルトにでも迫れ。
「明らかに生活感あるな」
「クレア様…」
ショタっ子聖女の頭部を掴んで殴りかかってくるのを止めていると、アリアが悲壮感漂っているような声で姉の名を呼んでいた。だが、それは攫われたからとかではない。アリアは姉さんの希望で攫われていることを知っている。ならなんで悲壮感あふれる声なんだろう?
「あまり綺麗な部屋じゃないな」
「いくら人型とはいえダンジョンマスターなんてそういうものじゃないか?」
「にしても酷いな。これが弟の部屋なら私はブチ切れる自信があるぞ」
勇者とそのパーティーの面々も苦い表情で部屋を見ていた。ああ、なるほど。彼らはハルトの部屋と勘違いしているが、ここが姉さんの部屋か。
アリアの態度も納得だな。
ハルトの性格を考えるとこの惨状は目に入っていないな。あいつなら姉さんの部屋には入らないだろう。姉さんは人目がないとダレる癖がある。王女として育って来たから人目に対しては人一倍注意深く気にする反面、それがなくなると緊張感の開放から一気にダレる。俺もその嫌いがあるが、姉さんほどは酷くはない。
ハルトのカタログ購入はレベルが200を超えてから生活物資に困ることがなくなり、むしろ酒類を購入して販売できるほどに嗜好品とか贅沢品を購入する余裕があった。つまり毎日だらだらと惰眠を貪り贅沢三昧していたわけか。
…なんかムカついてきたぞ?
姉さんは外の態度は本当に淑女そのもので、自分を押し殺してまでウェストランド王と添い遂げる態度を取っていた。本音はもちろん嫌がっていたが、公然の場ではその態度は表情一つ現れることはなかった。
そんな姉さんを尊敬していたなあ…。
「あの小娘、ろくに部屋も片付けられんか」
元教育係のエリスにもバレてるし。
ほのぼのタグの関係上、シリアスにはできないから話の構成が似たような感じになってしまい、新しい展開を考えるのが難しいです。
もともと、この小説はほのぼの系の書き方がわからない作者が「適当に書いてみるか」と始めたもので、中盤からかなり書くのが難しくなってきました。
特にオチは「シリアスになると見せかけて」というのを多用しすぎて同じ展開になりすぎてしまっています。同じような展開を避けるために、もしかしたらこれからシリアスタグを入れるかもしれません。
最後までゆるい展開で頑張りたいとは思っています。
っていうか内政しろよってな。内政パートがほとんど端折られていてどうにかしたい。
ダンジョンの本格的な防衛戦も始まるまでまだかかりそう。勇者をチートキャラにしたいと考えたせいで防衛戦とかなかった。考えた防衛プランすべて勇者に破壊されるので、逃げの一手に落ち着きました。防衛戦しろよってな。




