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ダンジョンにダンマスがいると考えるのは間違いである

 グレーゾーンというのはなにかしらの要因が加われば一気にどちらかにでも偏る曖昧な状態のことを指す。勇者とダンジョンマスターの俺との間には敵でも味方でもあるグレーゾーンの状態であったが、表向きには敵対、実際は休戦状態を保持しようというものである。それはダンジョンマスターの俺がいつでも勇者から逃げ切れるからという、男同士の熱い戦いとかそういうものは宇宙の彼方に置き去りにして現実的に勝てない相手に当たらなければどうということもないを字で行く戦法に近い。合わなければどうということもないという戦法が前提であった。それが崩れてしまったのだ。

 ごちゃごちゃ言ったが端的にいえば、勇者からは逃げられないということである。


『どぅーゆーあんだすたん?』

「ぶっとばすぞ、こら」

『やれるものならどうぞ』

「ちくせう…」

『…それで、どうしようか?』

「原因が言うんじゃねえよ」

『俺ももう”知り合ってしまったからな”、すでに人間ではないとは言え、討伐するのは嫌なものだが、…お前は一応前科がある』

「そーですねー」

『そういうわけで…、まあ…、逃げろよ』

「まじかよ…」

『切るぞ』

「ちょっと待ってくれ、ワープのスキルってどんなのだ?」

『敵に塩を送れと?』

「敵対するの早えよ。もうちょっと悩んでくれし、魔王討伐手伝うから」

『なら仕方ない。生き残ったら手伝えよ』


 殺しに来ようとしておいて、お前どの立場なんだよ。

 あ、勇者か。

 おふざけあそばせやがれ。


『俺のワープのスキルは移動先の空間を指定して移動するものだ。範囲はウェストランドよりは小さいが、お前のいる地下にはすぐに入り込めるくらいだ。このスキルは教会はもちろんウェストランド王にも通達されている』

「なるほどな、問題となってた補足方法が解決したからすぐに討伐するようにおっさん(ウェストランド王)から頼まれたのか」

『そういうことだ。それと前回と違ってメンバーが変わった。ノースランドの聖女が乗り気でなくてなウェストランドの聖女が代わりに加わることになった』

「ふーん」

『じゃあ、そういうことだ頑張れよ』


 通信切れたし。お前は頑張るなよ。


「本格的にもう一つのダンジョンを創り出さなきゃならんかもなあ」

「人間形態を維持できなければ、出会って命乞いしても勇者に軽く討伐されるでしょうね」

「なにそれこわい、あいつの人との付き合い方ってどうなってんだよ」

「さあ?精霊の私に言われましても」


 ワイズちゃんに聞くこと自体というか、勇者を一般の枠組みに入れること自体が間違っているな。あれは良くも悪くも特別性だ。


「ワイズちゃん的にはどうなの?勇者と張り合える?」

「どうでしょう?この間はまだ対精霊用のスキルを習得していませんでしたので、それを用いられると9:1くらいで勇者が勝ちます」

「なにそれこわい」


 成長速度どうなってんだよ。

 怖いわ。

 これがRPGにありがちな勇者というやつか?


「どうしましょうか」

「うーん…、…逃げるか」

「どこにでしょう?」

「外だろうなあ。ここにいたら補足されるし、とりあえず王都にでも向かうか。王様がゲート設置しろってうるさいし」


 手紙がまた何通か来てるしな。


「ダンジョンコアはどうするのでしょうか?」

「それは最奥と見せかけてダンジョン入り口の税関の戸棚の上にでも置いとくさ」

「さすがにそこは一般人が触れる可能性あるので適当に外に置いておきましょう」

「でもワープはどうする?そこら辺の外って」

「それなら私がどこかに運んでおきます。一応移動系のスキルもありますので」

「ワイズちゃんも持っているのかよ」

「勇者ほど優秀なものではありませんよ」

「俺もスキル使って見てえなあ」

「カタログ購入しているでしょうに」


 あれがスキル…。

 なんかよくわからんガラクタが増え続けているだけだぞ。酸素ボンベとか何に使うかわからないものまでいろいろと買ってるし。


「勇者にでもあげましょう」

「ああ、魔王城に潜入してそこらへんの宝箱漁る勇者的な?」

「出てくるのは優秀な装備とかアイテムではありませんが」

「俺なら拾わねえわ」

「ダンジョンコアの補足は行えないみたいなのでこれがある意味では最終手段でしょう。ひとまずラビリンスアースを跡にしますが、いつ頃帰ってくるのでしょうか?」

「あ、そうか。ワイズちゃんはダンジョンから出られないんだったな。そうだな、どれくらいだろうか」


 勇者が魔王討伐の責務を放棄し続けることはできないだろうし、魔族による境界の街の襲撃もあったことから魔王軍と戦っているというイーストランドに向かうはずだ。その道中にあるノースランドの王都の要塞の街にも寄るはずだ。出くわしたくはないからそこの時期を見極める必要があるな。


「1ヶ月以内には帰ってくるとは思うけど、2週間以内は無理かもな」

「了解しました。それまでは変装して鉄道の街に隠れておきます」

「くれぐれも注意してくれよな」

「ハルト様こそ普段通りの緩みきった考えは自重してくださいね」


 酷い言われよう。


「姫様突然のことですみませんが準備はいいですか」

「お風呂持って行けないのかしら」

「無茶言わないでくださいよ」

「私は平気よ。もともとは私のわがままですから、ハルトにはとても迷惑かけてすみません」

「それをいうなら俺のわがままで助け出したんですし、お互い様ですよ」


 偉い立場なのに頭とか下げるんだな。絵に描いたような偉ぶる人に全然出会わないものだ。さてと、俺も準備に取り掛からないとな。唯一のスキルもラビリンスアースにいる時じゃないと使えないから持って行くものは慎重に選ばないとな。それとゲートは流石に荷物としては嵩張るなあ。


「クレア、口がにやけていますよ」

「あら、ダーリンに素敵なことを言われたからですわ」

「はあ…」




 一気にダンジョンの入り口に飛び、ワイズちゃんにダンジョンコアを預けて俺とクレア王女の2人でラビリンスアースを跡にする。


「二人旅は初めてですね」

「そ、そうですね」


 やべえ、2人きりはさすがに想定していなかった。いや、話が出た段階で二人旅になるのは必然だったけども。それを正しく認識していなかった。会話持たねえよ。普段はワイズちゃんを間に入れてたのに。


「まずは終焉の街で換金しましょう」

「ええ、お願いしますね」

「…」

「…」


 たすけてワイズちゃん。

 と、なんだろう?前方からなにやら人影が、しかもフードを目深に被っている。見るからに怪しい宗教団体というか邪神とか崇拝してそうな見た目してる。


「失礼、ここら辺に有名なダンジョンがあると聞いているのだが」

「ラビリンスアースのことですか?」

「そのような名でしたね。近いとは聞いていたのですが、どの辺でしょうか?」

「そこに見えていますよ」

「あっ、あれか…。なんだ近かったな、ありがとう」


 特に何事もなく、ただ道を尋ねられただけに終わった。


「なんだ?」

「エルフですね、珍しい」

「エルフ?」

「フードで耳を隠しているのでしょう。それにエルフは見た目でも目立ちますので」

「へえ」


 ファンタジーの代表的な種族とあっさり出会ってしまったのだが、しかもものすごくタイミングが悪い。ちょうどダンジョンを後にしなけらばならない時に、なんか一期一会を逃した気分だ。色々と話して見たかったな。


「気難しい種族ですから、あまり関わらない方がいいかと」

「そうなんですか?」

「長寿ゆえに他の種族とはなかなか反りが合いませんので」


 定番の打ち解けない系種族なのか。その点ドワーフと人間はめちゃくちゃ仲良いけど。

 俺たちはラビリンスアースに入って行く5人のエルフを見送ってから、自分たちの目的地を目指して歩み始めた。

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