アイテム作成
「また今日もカタログとにらめっこですか」
「空調を魔晶石でコントロールする案がなかなか実現しなくてな」
「ドワーフ達に投げすぎなんですよ」
「いや、原因はわかっているが、それを解決する手段を模索中なんだよ」
魔晶石と呼ばれる一定の魔物がドロップする魔力のエネルギー結晶体がある。それを用いて現代日本の白物家電を再現して外貨を稼いでダンジョン内を豊かにしようと思ったんだが、なかなか実現できそうにない。原因は魔晶石の出力が高すぎることだ。
ズシンと重い地響きが轟いてくる。
「大丈夫なんですかね?」
「それな、気をつけるようには言っているんだけどさ」
また今日も爆発したらしい。その音が離れていても聞こえてくる。危険だから郊外の草原で実験をしているが、出力を調整できずに魔晶石を暴発させている。
「うーん…」
「電気じゃダメなんですか?」
「鉄道の街みたいにか?」
「ええ」
「発電所が少し大きいからな、街の敷地が限られている中で施設を作れるか微妙だし、なにより物理学系の技術系はこっちじゃまったく知られていないからな」
「学問は割と発展はしていますが、魔法系の学問がメインですからね」
「」
「なら電池式でいいじゃないですか、日本のような家電レベルではなくても少し質は落ちても商品として出荷できるでしょうに」
「それやったら俺のMP頼りで、ある意味独占禁止法じゃん」
「なんで変なところで拘りがあるんですか、別に地球の法なんて守らなくていいんですよ」
いや、なんとなく。
「電池をドワーフに作ってもらいましょう。それを参考にすれば魔晶石をうまく使えるかもしれません」
どうだろうか。
1時間後。
さすがチート種族やな。
「プールに使うのは水だと微妙だな、性質に影響が出かねない」
「無晶石を使えばいい」
「それだとサイズが大きくなりすぎる」
「無晶石を細分化してペースト状に仕上げてみるか」
「それなら魔晶石も細分化できないか」
「それは危険すぎる。それと暴発を防ぐ機構作りのためにペーストはさらに大きく作らなくちゃならん。1に対して10くらいは欲しいな」
「10倍だと?採算が取れるのか?」
「取れるさ、それだけ便利な代物よ」
なんかもう製品完成段階っぽい話になっているな。話が早くてついていけねえや。
「電池がヒントになって製品化ができそうですね」
「さっぱりわからんね」
「さすが脳みそ単細胞生物ハルト様ですね」
「なんで脳みそ限定で単細胞生物なん?進化の仕方おかしいでしょ」
ドワーフ達に無晶石という魔晶石を使い切った状態のものをたくさん用意して欲しいと言われた。それをドロップするモンスターはいないということ。カタログを見る。こぶしくらいの大きさで1MPかかるとのこと。
2万注ぎ込んでやったわ。
「埋もれましたよ」
「人命救助から入る異世界生活はっじまるよー」
「現実逃避しないでください」
この後めっちゃ怒られた。
「それで、これが空気調整アイテム、クーラーくんか。誰がネーミングしたんだよ。センスが致命的すぎるから人生やり直せや」
「俺のネーミングセンスを疑っているのか?ロイド表出ろや」
ボコボコにされました。
「とりあえず便利な代物だということはわかった」
「ふご、ふごごごふご」
「ミイラかよ。そんなに全力でやってねえぞ。それでこいつをいくらで売ればいい?」
ワイズちゃんに巻かれた包帯を取り外す。
「1000ゲイン」
「安い」
バッサリと切られる。
「即答かよ、1000ゲインって言ったら賃貸家賃くらいの値段だろうが」
「安いわ、市民にとって生活費以外の浪費といえば娯楽だが、それに興味もない奴は金を貯めることが趣味なっている。ノースランドも毎年娯楽にかかる金額が増え続けている現状だ。特に酒やタバコ、コーヒーといった嗜好品の価格はかなり上がっている。金に余裕のある奴が多いんだ。3倍でも売れるさ」
「維持費がかかるんだよ」
「維持費?」
「ああ、魔晶石を使う」
「魔晶石か…、魔晶石は高えな。一般的な魔晶石の大きさでどれくらい持つんだ?」
「1週間くらい」
「魔晶石1つが100ゲインくらいするからな、ちょっときついか?」
「付けっ放しで1週間だ」
「それでも維持費ってのはかなりかかるな。いくら便利な代物でも維持費っていうのは厄介すぎる」
永遠に続かない物ってのは存在しないが、それでも長持ちしないものに金をかける週間はないのだろうな。となるとある程度抑えめな値段で売ることになるのだろうか。
「魔晶石を50で売るならどうだ?」
「…それは、供給量を増やすのか」
「鉄を取っている連中の一部を魔晶石を取れるダンジョンを用意する」
「なるほどな、ついでに鉄の過剰供給を抑えるためか」
「そういうこと」
「50ゲインで1週間ならある程度裕福な家なら買うだろうさ。とりあえず売り始めないことにはかわらん、ある程度予想はつくが、所詮商人の勘にすぎないしな」
品物の販売ルートに関してはロイドはそのまま頑張ってもらうことにした。首都の要塞の街、おそらくは王室と直接ゲートを繋げるだろうが、外の世界がダンジョンであることを告げるわけにも行かないので、交易商としてロイドには引き続き頑張ってもらおう。それから、店も持ってもらう。
「店舗販売にしようかと思っている」
「そんなアホな、下地もなしにいきなり店を開いても潰れるだけだぞ?」
「大丈夫、そこ自体を子どもの遊び場にでもしてやればいい」
「は?」
「真夏がやってくるんだ。今でも十二分に暑いが、真夏の暑さに空調の効いた店舗を用意してみろ、売れるぜ」
「そういうことか」
「そういうわけで、賃貸料はこっちが受け持つから」
「俺がやる前提で話を進めようとするな」
「ちっ」
「舌打ち?今舌打ちしたよな?」
「ロイドなら数日くらい店長を任せてくれるはずだ。なんたってこのダンジョンの最高の商人だからな」
「口説き方へたくそか。仕方ねえな首都だけならやってもいいぞ」
「ちょロイド」
「もう一発いくか?」
「何も言ってないでヤンス」
ロイド主導で勝手に、空気調整アイテム、エアコンディショナーという名前に変えられた。変わんねえから。ほとんどエアコンだから。それクーラーだから!




