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ダンジョンの国の王様  作者: てるいち
国づくり
54/79

心を折る戦いをしよう

「クソ雑魚ナメクジじゃねえし、もう卒業したし」

「でも平均ではレベル70ほどですからね」

「70あれば十分じゃね?ノースランドは無理でもウェストランドの王国兵くらいは超えてるし」

「そうですが、スキルは何も使えないので」

「スキルってそんなに重要なのか?」

「ええ、スキルひとつで5倍のダメージを与えたりしますから」

「…5倍…まじ?」

「ですのでレベル20のスキルを食らうだけでハルト様は結構ピンチだったりします」

「嘘やろ!?で、でもそれでも平均的には俺の攻撃の方が高いだろう?」

「いえ、防御パッシブスキルなどがありますので攻撃力も減衰します」

「パッシブスキルとかあるのかよ、それって常時発動中のスキルってことだよな?」

「そうですよ。アクティブスキル、パッシブスキル、あとはマイナーなところで限定条件下で発揮されるトリガースキルなんてものもあります」

「なるほど。で、俺のスキルは?」

「パッシブスキルのカタログ購入だけですが?」

「結局クソ雑魚ナメクジじゃねえか!」


 つい手元にあったカタログを床に叩きつけてしまった。


「危険ですけど、レベル30くらいの相手と戦っても負けることはないかと」


 それってエリスが管轄しているちびっこ冒険者レベルやんけ。って危険ですけどって前置きあるんだが?


「こうなったらステータスアップの実でチート級の強さを手にしてやる」

「レベル以上の個数を食べてもステータスに反映されませんよ?」

「…うん?今なんて?」

「ですから今のレベルの200個ほどしか効力はありませんが?集めますか」

「俺、神様嫌い」

「拗ねないでください。神様が決めた決まりごとかもしれませんけど」


 俺という存在は無双とかバトル物には縁がないということか。最後までクソ雑魚ナメクジやん。


「勇者の魔族に対するスキルはトリガースキルなのか?」

「いえ、パッシブスキルに該当します」

「トリガースキルってなんぞや?」

「死にかけたりすると発動したりするものや、特定のアクティブスキルを使ったあとだったり、戦闘時の場所がトリガーになるのもありますね。変わったものなら死んでから発動するのもあります。例えば死んだら自分の持っている最高戦力のアクティブスキルを霊体の状態で発動するとか。死んでるので反動とかある強大な攻撃スキルをぶちかましてくるようなものもいます」


 なにそれ怖い。トリガースキル怖い。


「持っている人は少ないですけどね」


 俺は戦闘とは無縁の存在なのだな。戦いたい意欲は元からなかったけど、戦わなくていいならクソ雑魚ナメクジのままでいいです。


「戦わなくていいって、勇者来てますけど?」


 そういえば、ついに勇者が俺のダンジョンに入ってきた。俺は勇者の索敵能力を警戒して引きこもっている状態だ。昨日は俺が建設したジッタ・タワーもどきのラビリンスアース・タワーに泊まっていたらしい。


「タワーの地下階層の4つ目のダンジョンに潜っていますね」


 21億台ある監視カメラを起動して勇者の行く末を見守る。


「なるほど、これは酷い」

「酷くねえし、アリアさんと同じ程度の索敵能力ならこの仕組みに気づかないだろう」

「確かタワー地下ダンジョンは地下50階層でしたっけ?」

「それもかなりでかいし移動ばかりで退屈するダンジョンだ。出てくる敵もアイアンスライムとかカッパースライムとか生産性のあるモンスターくらいで儲けは安定はするが、勇者レベルのパーティーには物足りなすぎるしな」


 勇者たちはそんな退屈なダンジョンを進んでいる。


「おはよー」

「姫様、顔洗って来てくださいよ」

「はーい」


 クレア王女は朝に弱いなあ。顔を見せたかと思えばパジャマ姿でナイトキャップすら脱いでいなかったし、もう9時も回ろうかというのにな。着替えもせずに顔を洗って歯磨きしながら管制室に入ってくる始末。


「暇ね」

「ですね」

「ハルトはこんな退屈な毎日を送るのですか?」

「しばらくは表に出られませんからね」

「はあ…、仕方ないですね」


 歯磨きするかしゃべるかどっちかにしてください。


「あのダンジョンの下にここがあるのよね」

「そうですよ」

「ふーん、ならいつまで経っても見つからないわね」


 そう。ここはタワー地下に建設したダンジョンのさらに下の階層にある遠く離れた拠点の入り口から延伸してある拠点の一部だ。レベル30から200に急激に上がった際にダンジョン変化が起き、俺の拠点が地層全体に広がるというバカみたいな規模の変化を遂げていた。そんなわけで俺の拠点の位置もタワーの下に持ってきている。つまり勇者の索敵は常に地下を指し続けるようになる。だが、上のダンジョンと俺の拠点は繋がっていない。つまり地下に反応があるのにそこへの道は閉ざされているのだ。


「性格悪いですね」

「酷い言い草、完璧な対処と言ってほしい」

「まあ、相手が相手ですからね。指先ひとつで抹殺されかねない相手ですので卑怯な手も歓迎ですよマスター」


 なんでマスター呼びなんだし。仕方ないだろ、俺はワイズちゃんみたく強くないんだよ。瞬殺されちゃうんだよ。


「ある意味では籠城戦ですね」

「姫様には不都合をかけます」

「私に対して何かいうことありますよね?」


 MPで嗜好品出すから勘弁して。




 2日後、ダンジョンを潜り続けた勇者一行は緊張が解け、次第にストレスが溜まるような状態となっていた。


「お酒飲みたいー」

「少しは包み隠してください。聖女でしょ」

「いいじゃないか別にー、本音を言えない世の中なんてー」


 聖女マリエルと女剣士のリンが軽い言い合いをしている。リンも街中でダンジョンの情報は集めており、その中にゴールデンスライムが出現する話とかをパーティーメンバーに話していた。金の噂に敏感な女剣士も、この新設されたダンジョンらしい馬鹿でかいタワーの地下にあるダンジョンにもゴールデンスライムが出現するかもしれないという期待感を持ってダンジョンに臨んでいた。しかし蓋を開ければアイアンスライムとカッパースライムがたまに出てくるだけでただ広いだけのダンジョンである。危険性も皆無だ。そうなってくるとただただ移動がだるいだけで、俺たちは何のためにダンジョンに潜っているのかわからなくなってきた。


「ハルトの性格上これ以上進んでも何もないだろうなあ」

「だが、索敵は常に下を指している。魔族で引っかかったのは地下深くにある1点の反応だけなんだ」

「ふーん」


 ノースランドの第一王子のカイトは表情にはあまり出さないようにはしているが、訝しそうにこっちを眺めている。


「カ、カイト様!勇者の索敵能力は絶対だと保証します!」

「あ、ああ。疑っているわけじゃないんだ…」


 エリル第二王女がカイトにほの字のおかげでなんかあまりギクシャクしないで済んでいるな。


「だが、カイト殿の言葉も確かかもしれん」

「ヴァイス?」

「このダンジョンの先に本当にダンジョンマスターが身を隠しているか?それに索敵ではかなり距離があるとわかるのだろう?」

「ああ、だが、あと少しだ」

「あと少し?」

「ああ、俺の索敵は範囲が広いものと比較的狭い索敵の2種類が存在する」

「そんなのあったのか?」

「あまり実用的ではないからな。どちらかとえば追尾用の索敵能力なんだが、使う機会もなかったから話にあげることもなかった」

「それで、その索敵はどんな能力なんだ?」

「敵までの最短ルートを割り出すという索敵能力だ」

『!?』


 カイトがびくりと反応する。すまない、俺も1個人にすぎないんだ。必要とあれば善人だろうと斬る意志がある。それにハルトという人物に前科がないとは言い切れないしな。あれだけの規模の攻撃をウェストランドの王都に仕掛けてきたんだ。斬る理由ならたくさんある。カイト、悪く思わないでくれ。


「よし、捉えた!」

「これでようやくダンジョンマスターの元までたどり着けるな」

「…」

「どうした?」

「最短ルートは引き返すみたいだ」

「え?」

「どうやら隠し扉でもあったのか道を逸れているらしい」

「ああ、なるほどな。これだけの一本道のダンジョンはおかしかったわけだ。よし、さっさと見つけて倒しちまおうぜ」




 そして丸一日かけて引き返し、俺たちは地上に戻ってきた。


「おい、勇者ー。どういうことだー」

「最短ルートはあっちだ」


 俺は夕焼けの方向を指差すだけでもう心が折れそうだった。


『………』


 一同誰も口を開くことなくタワーに泊まることになった。




「勇者の索敵能力怖いわ」

「追尾能力の派生でしょう。索敵スキルにあのような最短ルートを割り出すものはなかったはずです」

「まさかアリアさんの索敵スキルを超えているとはな、さすが勇者チートすぎる」

「ところでクレアはまだ帰ってこないのですか?」

「勇者が地上に出たし帰ってこないのはまずいよな」


 噂をすれば影がさす。


「ただいま戻りましたわ」


 ダンジョンコアのワープを使って地上にお出かけしていたクレア王女が帰ってきた。


「勇者たちがダンジョンから出てきたからびっくりしたわ」

「予想より早くダンジョンを戻って行っていたので」

「けどコアちゃんの移動は便利ね」


 コアちゃんって…。どうせダンジョンに勇者が潜っているなら地上に索敵に引っかからないだろうクレア王女を送ることくらいなら問題ないかと考えてコアを預けていた。ちなみにワイズちゃんは万が一のために残ってもらった。その旨を話したらスネに蹴りをいただいた。不公平だというワイズちゃんを宥めるのは大変だった。


「とりあえず第1の関門は突破されてしまいましたが、どうなるでしょうね?」

「第2の関門ってあれだろ。ここにたどり着くという」

「来るんですかね?」

「来ないと思うわ。ゲームならクソゲーだぞ」


 バカみたいに広いマップで大したまったく敵も出現せず歩き続けて敵を見つける。ちなみにノースランドとウェストランドの首都を10往復しても俺のいる場所にはたどり着くことはできない。もっと遠いからな。ガハハ。


「最低ですね」

「褒めるなや」

「殴りますよ」

「なんで!?」


 こちとら命かかっとんねん。というかワイズちゃんも俺が死んだら死んじゃうでしょうに。

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