表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンの国の王様  作者: てるいち
国づくり
50/79

迷路を抜けるとそこは…

 俺ロイドは、最近何かと忙しいことが多かった。主に新規交易ルートでの取引が多くなっていたからだ。そしてその商品は単純な鉄鉱石という産物が主なものだったが、最近は加工品もよく交易に出て来るようになっていた。


「武器類はこの辺りだとあまり必要とはしないだろうな」

「あー、そうですか」

「武器が必要になるのはむしろ東部だろう」

「さすがにサウスランド国境に魔物は少ないですか」

「四大国政府機関がある自治区だからな。もとより警備は従前だし、必要なものはどちらかといえば生活用品となってくる」

「生活用品か…」


 ラビリンスアースで取れるのは主に鉄鉱石、最近は魔物の肉も取れるがあれは美味しくないからなかなか売れはしない。まてよ。たしかハルトが酒屋を始めていたな。


「酒の類は需要はあるかい?」

「おお、酒は欲しいものだ。サウスランドは酒を飲まん奴が多いからな。酒の肴になりそうなものは多いが、酒そのものはやはりノースランドが一番美味いだろう。ウェストランドのワインもなかなかだがな。ここらではあまり大きな酒造所がないから売ってくれるならありがたい」

「それなら次に訪れた際にたくさん持って来ますよ」

「そいつは楽しみだ」

「他に必要なものはありますか?」

「あとはそうだな。塩が欲しいな。香辛料はあるにはあるが、岩塩の採掘料が減っていてな」

「了解しました」


 サウスランド側の四大国政府機関自治区に近い村の取引を終えて、今の拠点であるラビリンスアースに向かう。この生活にも慣れてきたものだ。もともと商人ではあったが、やはりダンジョンの住人となっている状態というのは元の商人というものとは少し違うというか。なんらかの違和感がある。ズルをしているような気がしているのだ。だが、商人とはそういうものだ。物資のやり取りと運搬で利益を上げるもの。安く買えるものを大量に買い、できるだけ高く売る。ただし不良在庫を抱えない程度に、今回で言えばラビリンスアース産の武器が不良在庫になってしまった。一度王都に寄って多少安くとも売った方がいいかとも思ったが、王都までの長い距離を考えてラビリンスアースに帰還することにする。また家の倉庫が狭くなるな。失敗はつきものだが、少し挑戦的な交易は控えようか。

 ラビリンスアースに近い砦まで来て、泊まっていたところ、なにやら冒険者と思しき者が多くいる。


「商人さん、武器売っているのか?」

「持っているよ」

「ちょっと見てもいいかい?」

「直接はあまり売らないのだけどね」


 俺は貿易商であり、普通に商品を顧客に売る商人ではない。だから直接の消費者との取引はほとんどすることがないが、冒険者は立派な武器を持っていながら武器を見たいと言ってきた。武器マニアだろうか。


「俺も見ていいか?」

「俺も見てえ」

「なんだなんだ?」


 どうなっている。全員武器は持っているにも関わらず俺の商売品である武器を見たがる。武器は安いものではないから、あまり触らせたくはないのだけど。


「これいくらだ?」

「600」

「うーん、絶妙に手が届きそうな値段だなあ」


 店に卸すなら400だが、直接の消費者相手なら1.5倍で取引するのが俺のルールだ。


「じゃあ、買うか」

「買うのかよ」

「あれ?意外?」

「ああ、買わないと思った。別に安いわけでもないだろう」

「高いわけでもないし」

「まあ、そうなんだが。武器のスペアなんて買う必要あるのか?」

「ああ、一攫千金のための事前準備だ」

「一攫千金?」

「うん?商人って情報に精通していると思っていたがそうでもないのか?」

「冒険者の情報とかは現場の冒険者の方が詳しいだろう。俺は今みたいに当事者の冒険者から情報を直接もらうから2番目くらいに早い」

「確かに、そうだな。冒険者の稼ぎごとを商人が先に知ってたら冒険者ってのはただの木偶の棒でしかないな」


 冒険者の男は懐からお金を取り出し、それを受け取る。ちゃんとあるな。


「それで一攫千金の話を聞かせてくれるかい?」

「ああ、シンプルな話さ。そのうち出回るようになるぞ。賞金首だ」

「賞金首ねえ。…心当たりは1人いるなあ」

「お、知っているのか?」

「俺は今ラビリンスアースに拠点を置いている商人なんだが」

「ああ、なるほどダンジョン街の住人か」

「まあ、そういうことだ」


 ハルトが賞金首になったのだな。まあ、姫様を攫っているから仕方ないが、もしハルトが討伐されでもしたらダンジョンが滅びるからな。そうなると商売なんてできない。普通そんな拠点を失うようなリスクを背負ってまで商売を続ける商人なんてものはいないだろう。普通は。だが、あのラビリンスアースという広大な大地に加え、姫様と懇意な間柄であり、実はノースランド王室ともつながりのあるダンジョンマスター、おそらくは操られたと噂の王子も協力者だったってオチが容易に想像できる。さらにいえばワイズちゃんという謎の超強い美少女の護衛がついている。そんなハルトがそう簡単に討伐されたりしないだろう。勇者が来てもハルトが倒されるビジョンが思いつかない。信憑性の噂では、謎の美少女に勇者の聖剣を素手で止められたという話もあるくらいだ。それが本当だとしたらあいつ自身は大したことなくても周りがとんでもない面子で埋まっていることになる。難攻不落にもほどがあるだろう。最悪ノースランド王妃が出張ってくる可能性までも視野に入れたら、俺が冒険者のままでこの情報をしっているのなら挑むことはない。勝てない勝負はする価値ないしな。


「まあ討伐できなくてもあそこには稼ぎ場所多いからな」

「らしいな。なんでもアイアンスライムの群生とか色々あるらしいし」

「最近帰ってないからどうなっているかわからん」

「お、全部聞いたらつまらないからな。情報はもらえるものはもらうけど、知らないのも面白い、行く楽しみが増えるというものだ」


 冒険者ってのは死なないために情報を集めたりするものだが、目の前の男のように破滅願望とでも言えばいいのか、死と隣り合わせを好むような性格のものも多い。俺もそういう血の気の多い時期はあったなと過去を振り返る。

 他の冒険者たちも目の前の男同様にラビリンスアースのダンジョンマスターであるハルトの討伐が狙いらしい。どうにもウェストランドから多額な報奨金が用意されたとか。目的地が同じなので最後の行路は大所帯で、ラビリンスアースに帰還することになった。




「様変わりしすぎだろ…」


 最後にラビリンスアースを出たのは1ヶ月近く前だ。1週間ほど前にノースランド第一王女のクレア姫が婚姻前に攫われる大事件が勃発した。ハルトは少なくともその準備に追われていたはずだ。だから、街の発展は滞っていると思っていた。


「すげえな、これがラビリンスアースか…」

「すげえな、これが俺の拠点か…」

「…」

「…」

「いや、ロイドさん…。どういうことだよ…」

「俺にどうと聞かれてもな。なんか一月で景色が変わっているからな。意味不明だ」

「えぇ…」


 親しくなった冒険者の男、ライネルはハルト討伐のために来た冒険者の1人である。指名手配確実であるハルトがどこにいるかわからないが、いつかこのダンジョン入り口の街にも顔を出すだろう。そのときに忠告でもしてやろうか。


「お、ロイドさん帰ってきたか。久しぶりだなー」


 本人ーーー!?!?


「どうだった売れ行きのほどは?」

「あ、ああ。全然ダメだったが、一応売れはしたぞ。南の方面は生活用品とか嗜好品を欲しがっていたな」

「だろう?言った通りじゃんか。あっちは戦いなんてほとんどないんだから」


 いやいやいや、あんた今命狙われてるんだけど!?なんで平然と街に顔を出しているんだ!?というか大丈夫なのかよ。人相バレているか知らねえけど


「ロイドさん知り合い?」

「あ、ああ。この街の町長だ」

「若いのにすごいな、俺はライネル。このダンジョンのマスターを討伐しに来た冒険者です」


 思いっきり殺害宣言されとる!?


「これはこれはご丁寧にどうも、ルパンと申します」


 どっから出てきた偽名だ!?


「いやー、結構有名らしいですねここのダンジョンマスターって、よく顔を出しているとか」

「出てきますね。冴えない顔したやつですよ。最近はあまり見ませんけど」


 どの口が言ってんだ。


「冴えない顔したやつなんて結構いますし、探すの大変ですかね」

「頑張ってくださいと言いたいけど、ダンジョンマスター倒されると街がなくなるので困りますね。アハハハ」

「あー、ノースランド王国が今回の討伐依頼に反対なのはここの利用価値とか言っていましたが…、なるほど、案外ノースランドから妨害される可能性もあるのかな」

「たぶんそうなるかと」

「うーん、討伐金は結構美味しいんだけどなあ」


 いやいや、そんなんでこの状況切り抜けられるのかよ。ごく自然に話しているし、ひとまず安心したわ。とにかくハルトにはこれから表舞台にはなるべく出てこないでもらおう。顔を出したらまずい人たちも多いからな。


「ダーリン、こんなところにいたのですね。ドワーフたちが酒を寄越せとうるさすぎるのですけど」


 姫様ーーー!?!?

 あんた攫われた人間でしょうが!?


「ダーリン、だと!?あの若さであんな美人をうらやまけしからん」


 あ、なんか大丈夫そうだわ。むしろなんで大丈夫なんですかね?なんで身バレしていないんですかね?


「ちくしょー、俺は一攫千金目指すぞー、失礼します!」


 超絶美少女を若い町長が嫁にしていると勘違いしたライネルが走ってギルドの方に向かって行った。ギルドも遠くから見て一目瞭然なサイズしているな。ドワーフが移民してきてから建物がどんどんゴツくなってきたな。街が生えてるという表現ができるようだ。


「というわけだハルト。指名手配されているからできれば身を隠していてほしい」

「我が名はルパンだぞ、ロイド氏」

「殴っていい?」

「ふっ、いつまでもクソ雑魚ナメクジではないのだよ?ロイド程度の攻撃など効きはしない」

「ハルトのチャームポイントが消えた!?」

「酷い…」


 口撃は効くんだな。

 というか説明してほしいわ。この街どうなってるんだ。それとあの四角い箱はなんなんだ!?それに天を高く(そび)える謎の塔の説明もな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ