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ダンジョンの国の王様  作者: てるいち
国づくり
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時間切れ

 国づくりのために人を雇う必要があり、人を雇う必要があるからお金が必要になり、お金を得る必要があるから税金を納めてもらう必要がある。ということで猿でもわかる税金制度を熟読しているが正直飽きた。施策がまったく浮かび上がらない程度には読んでる書物と現実の環境の違いが酷い。これ役に立つのかな?


「ひとまず展望を考えないと話にならないな」

「ゴールを設定せずに闇雲に突撃してれば崩壊まったなしですね」

「ダンジョンマスターだから普通の人間よりは手札は多いからなんとかなるかもしれんけど」

「ハルト様の頭脳で?」

「所詮平凡高校級ですよ」


 当面の目標は国家といえる状態になることだな。抽象的すぎるが、今は遠すぎて具体例が思い浮かばない。一応2つの街はノースランドの所有ということになってるから正確には国家にはできない。自治区とか大公国と呼ばれるような半独立地域にまで昇華させればいい。それを実行するにはノースランドと取引できる材料を持てればいいということになる。すでに鉄鉱石の依存度はラビリンスアースに依存しているが、それはまったくの決め手にはならない。補充の仕方なんていくらでもあるし最悪は境界の街の復刻も行えばいいわけで、交渉材料には程遠いだろう。今のままでは植民地ルートまっしぐらしな。そいつは御免だ。


「ノースランドの王国兵に依存しない武力を持つことも必要か…」


 なおさらモンスターの出番では?


「うーん…」


 これは秘密裏に戦闘に備えたモンスターの育成を行わないといけないかもしれないな。保険中の保険だし、クレア王女にバレたら最悪なことになるだろうけども。


「やっぱり、ペガサス便だけでいいや」

「考え事を秒で放棄しますね」

「考えるの面倒だし」

「アホですか」

「ははは、褒めるなよ。いてっ」

「阿呆なことをおっしゃらずにさっさと次の現場に向かいますよ」

「現場?」

「国になるのに足りないものが多すぎます」


 ワイズちゃんの案内でラビリンスアースを2時間ほど散歩した。隣町まではダンジョンコアのワープを使えば一瞬であるから片方1時間ずつだ。その際にメモったことを羅列していく。

 まず真っ先に必要な施設が病院だ。今つくっているダンジョンはかなり親切設計にダンジョンの構造を説明し、絶対勝てるモンスターを狩っている状態だ。安全は安全だが、逆を言えばいつまでたっても次のダンジョンへの挑戦が行われない。このまま鉄を生産し続けることになってしまう。

 そして次に欲しいのが学校だ。いつまでも冒険者もどきの職を若い世代に従事させてしまうのは非常にもったいない。今まで普通に手に入っていた給金で生きていくには事足りるかもしれないが、それを永遠に続けるのは苦行でしかない。もしも自分のやりたいことを見つけたものが転職できてもいいし、特に必要なのはペガサス便を操れる人だ。そのノウハウを確立し、後継を育てていかなければならない。運搬はかなり重要だからな。他にも必要な技術というものがあり、それを後世につないでいくには学校、もしくは職業訓練施設みたいなものは必要不可欠になってくる。

 施設以外にも必要なものがある。輸入しているものは食料が中心だが、服が結構足りていない。男女比が男に偏っていてこの世界では女性が多く従事している衣類関係の仕事がラビリンスアースにまったく存在していない。魔物はドロップ品を落とすと遺体は空気中に溶けて消える性質を持つ。その性質を持つものを魔物と呼んでいるが、魔物のドロップ品に皮はない。イノシシの魔物を倒すと落ちるのはイノシシ肉である。皮や骨は一切手に入らないのだ。あとは綿花などを栽培するしかないが、それにも時間がかかってしまう。


「やること多すぎないですか?」

「これでも半分くれいでしょう」

「うせやろ…」

「あとはギルドの建設、役所の建設も必要でしょう。今の場所ではただの家です。人口が増えれば窓口は多くなくてはいけません。そして治安のための軍隊もしくは警察隊が必要になってきますね」

「………あとは任せた」

「ハルト様?さすがに怒りますよ」

「はーい…、俺がやればいいんでしょー」

「頑張ってくださいね」

「これがダンジョンマスターの仕事かよ」

「ハルト様が選んだ道ですよ」


 それを言われると何も言えないでしょうが。




「よっす」

「あれ副隊長さん、お久しぶりです」

「俺はレントで良いって、それに敬語もいらねえぞ」

「いえ、私はまだ若輩者ですよ」

「ま、うん。そだな」


 年齢20くらい離れてるし。


「姫様からの言伝とこっちがどれくらい発展したかのチェックでな。…あれ、怒られるぞ」

「なんとか説得してみせます」

「がんばれー」


 レントさんが指差していたのはペガサスだった。魔物の野生化は絶対にさせないと約束しているからな。野生じゃなければいいのさ。


「姫様からだが、時間が切れたとだけ伝えて欲しいと言われた」


 さらりと真面目モードにならないでいただきたい。あまり重いニュースを受け止める体勢じゃなかったんだよ。


「それだけですか?」

「ああ」

「そう、ですか…」

「ハルトはどうするよ」

「………」

「…俺は一晩泊まってから王都に戻る。集合住宅がスカスカらしいから使わせてもらうぞ」

「どうぞ…」

「上の空かい」


 レントさんは俺に向かって手を軽く上げてそのまま集合住宅の方に向かっていった。


「時間が切れた…か」

「制限時間は勇者の修行期間までだった可能性もありますね。そんなそぶりは一斉見せず、しかも手紙の一通も来ませんでしたね」

「あー、クソ。どうするか…」

「そのどうするとは、どうすることを指しているのでしょうか?」


 どうするって姫様の婚約を破棄するためにどうするかだ。


「クレア王女は確かにこのラビリンスアースの発展には重要なファクターになりえますが、それはノースランドの国王と連絡が取れたことでクレア王女の価値は著しく下がったとは思いませんか?いえ、下がりました。そのことはハルト様も気づいているはずです」


 ………。

 そうだ。ノースランド王国と利害関係を形成してしまえばクレア王女個人との利害関係は俺の立場上では意味がなくなる。本当に必要なのが身の安全とするならば、ノースランドに益をもたらす存在として認知されれば俺の本来の目的は終了しているはずだ。だが、俺はその目的達成をごまかして違うところをゴールにすげ替えた。国をつくるという目標にだ。


「ハルト様はどうしたいのでしょうか?」

「俺はクレアを助けたい」

「なぜ?その必要はありませんよね」

「俺が助けたいから助ける。それだけだ」

「それだけなら私は手を貸しませんよ」


 …怒ってる?ワイズちゃんは一瞬たりとも目を逸らしてはくれない。


「………」

「ハルト様、もし独り善がりの行動で突き進めば死にますよ?そしてハルト様が死ねば私も死にます」

「なら!」

「手は貸しませんよ。そんな理由では」

「…」

「向き合いたくないかもしれません。でもハルト様はもう少し自分の心を考えるべきです」

「心…」

「私はテレパシーで心情が伝わってきてしまうのですよ?ハルト様自身が無視している心も」


 俺は…。

 ………

 ……

 …


「はあ…、私も存外甘いのかもしれませんね。まだ助けたいから助ける。そんな陳腐な理由でも手助けいたしましょう」

「陳腐いうな」

「勇敢と蛮勇は違うのですよ。クソ雑魚ナメクジさん」


 俺にぶっささる一言やめろください。


「でもそのための手段が乏しすぎる。俺たちじゃノースランドウェストランドの間柄の約束ごとに干渉なんてできねえぞ。突撃して攫うとか?」

「攫うのはありですね。ノースランドに迷惑を極力かけずに事を運べるかもしれません。しかし、今闇雲に突撃しても到達するのは結婚式会場で何もできずに参列することになるでしょう。ハルト様の力量と私を入れてもクレアを助けることはできないでしょう」

「ならどうする」

「ハルト様に足りないものが多すぎます。ですのでひとまずは足りないものを揃えましょう。急ピッチで、あと実力も欲しいですね」

「この戦闘力がミリも上がらないクソ雑魚ナメクジ様の何を上げるって?」

「大丈夫です。やりようはあります。この世界のレベルシステムの裏をかいてしまえば良いだけですから」

「そんな裏技みたいな方法があるのかよ?!」

「ええ、そのための宇宙服をMPで購入できるはずですよ。もうレベルは30を越えていますし」


 宇宙服…。おい、それって…


「ひとまず強くなるには最難関ダンジョンと相場は決まっています」

「殺す気か!?」

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